陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

オバマ大統領が米国金融界へ挑戦状を突きつける

2010-01-26 01:00:06 | 財政・経済問題
 米国の大手金融機関は、バーナンキFRB議長によるゼロ金利策+「ドルばら撒き作戦」を利用して、昨年春からヘッジファンド投資と資源投資を再開、その結果半年後には、リーマン・ショックによって失った体力をかなり回復した。

 米国民は、小ブッシュ前政権から続いている大手金融機関への「てこ入れ」(=税金救済)が株価を押し上げ、金価格を上昇させ、原油価格を2倍にしたことを知っている。だが、失業率は10%と高止まり、その改善にさっぱり金融支援が反映もしないし、工業生産に基づく実体経済が低調であると肌で感じている。

 「オバマ大統領は、巨大金融機関援助と自由放任継続で、<経済カタストロフィー>の再現に手を貸すのか」と言う批判が出ても不思議ではない状況だ。

 オバマ大統領は、金融機関の健全化を歓迎したが、金融機関経営者が高額報酬を得たり民間への融資(個人と企業)が不足していることに不快感を示して来た。実際、昨年末には銀行経営者グループに繰り返し警告を行ったし、今月14日には、大手金融機関約50社へ「金融危機責任税」を課税する案を発表した。

 就任後1年を迎えて、オバマ大統領の支持率は下がり続けている。最近は、マサチューセッツ州の上院議員補選で共和党に敗北し、上院の安定多数を民主党は失った。こうしたこともあって、先週末オバマ大統領は更に金融業界への締め付けを具体化することに踏み切った。

 ブルームバーグによると

米大統領:銀行の規模を制限、自己勘定取引の運営禁止訴え (Update3)

1月21日(ブルームバーグ):オバマ米大統領は金融機関のリスクテークを抑制し、金融危機の再来を防ぐため、機関の規模およびトレーディング活動に制限を設けることを呼びかけた。銀行救済に対する有権者の怒りがこの背景にある。

 議会で検討中の金融規制改革に加えられるこの提案は、特に銀行に対して、自社の利益を追求する自己勘定トレーディングの運営、およびヘッジファンドやプライベートエクイティ(PE、未公開株)投資会社の経営や投資を禁止するもの。さらに金融機関の成長と統合を制限するため、市場シェア10%を上限とする預金規制の対象に預金に基づかない資金調達を加えることを提案した。

 オバマ大統領は経済回復諮問会議議長を務めるポール・ボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長との会談後、ホワイトハウスで会見し、「金融システムは1年前と比べるとかなり強固になったとは言え、金融機関はまだ破綻の危機に追い込まれた時と同じ規制の下で事業を進めている」と発言。「米国民が大き過ぎてつぶせない銀行の人質に取られるようなことは二度とあってはならない」と訴えた。

 D・A・ダビッドソンの主任市場ストラテジスト、フレデリック・ディクソン氏はゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースといった大手銀行のトレーディングに影響を及ぼすだろうと語る。金融機関の行う自己勘定トレーディングでは利益はすべて自社のもうけとなり、顧客には配分されない。

SIFMA

 米ウォール街で最大のロビー団体である米証券業金融市場協会(SIFMA)のティム・ライアン最高経営責任者(CEO)は、オバマ大統領の提案は銀行の「成長と活動を抑え込む恣意的な制限だ」と批判した。

 同提案は今後、米議会での承認を問うことになるが、大統領はこうした反論を予想し、「反対を唱えるのであれば、それと闘う準備はできている」と述べた。

 同大統領は、「金融システムをより安定させるため、機能を強化し流動性基準を引き上げたい」と語った。さらに、「銀行が納税者によるセーフティネットで恩恵を受けながら、それに背を向け安価な資金を自分たちのもうけに利用するは適切な行動ではない」と批判した。

ゴールドマンの反応

 ゴールドマンのデービッド・ビニアー最高財務責任者(CFO)は報道関係者との電話会議で、提案は「非現実的」だと述べた。

 ワシントンの金融サービスコンサルティング会社、プロモントリー・ファイナンシャル・グループのマネジングディレクター、デービッド・ネーソン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、自己勘定トレーディングとPEへの投資活動を引き離すのは「非常に困難な作業だろう」と述べ、「言うは易し行うは難しだ。この提案が実現するかどうかを見極める上で、今はまだ、野球で言えば3回だ。9回裏を終えて実際にどうなるか見極めるのはまだまだ先だ」と述べた。

更新日時: 2010/01/22 05:58 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aBGkE9L_ybYQ


 この発表後、ダウ平均は2日間続落し、1万ドルに近づいた。日経平均もその影響を受けている。バーナンキFRB議長の再任に疑問が出ている昨今、米国金融界の動きがどうなるのか気懸かりである。

 また、ガイトナー財務長官は、オバマ大統領の方針を完全に納得していないようだ。
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