陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

<田母神論文>で思うこと

2008-11-08 02:00:39 | 国防関連
 田母神俊雄空将(60)が、大東亜戦争に関連する論文を発表、その内容は現政権の方針に反すると判断され、航空自衛隊幕僚長の職を解任された。論文投稿に際し、様々な規則違反があったようだが、「現職自衛官は政治に関わらず」の基本ルールを逸脱していたのではないか。

 私も、<田母神論文>(A4判で9頁)を読んだ。部分的に違和感があるけれども、あちらこちらで言われている歴史的見直し内容を総合したもので、論文の大筋は首肯出来る。これに項目を付けて、読みやすい形に整え、引用文献を付ければ、なお良かった。あれこれ批判する前に、まずは原論文を読むことをお勧めする。

日本は侵略国家であったのか
田母神俊雄(防衛省航空幕僚長 空将)
http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf

 産経新聞は、この論文を次のように要約している。

空幕長論文要旨「わが国が侵略国家だったというのは正にぬれぎぬだ」
2008.10.31 22:44

 空幕長の論文の要旨は以下の通り。

 一、わが国は戦前中国大陸や朝鮮半島を侵略したといわれるが、実は日本軍のこれらの国に対する駐留も、条約に基づいたものだ。日本は19世紀の後半以降、朝鮮半島や中国大陸に軍を進めたが、相手国の了承を得ないで一方的に軍を進めたことはない。

 一、わが国は中国で和平を追求したが、その都度、蒋介石に裏切られた。蒋介石はコミンテルンに動かされていた。わが国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者だ。

 一、1928年の張作霖列車爆破事件も少なくとも日本軍がやったとは断定できなくなった。(文献によれば)コミンテルンの仕業という説が強まっている。

 一、満州帝国の人口は成立当初からなぜ爆発的に増えたのか。それは満州が豊かで治安が良かったからだ。侵略といわれるような行為が行われるところに人が集まるわけはない。

 一、日本が中国大陸などに侵略したため、日米戦争に突入し敗戦を迎えたといわれるが、これも今では日本を戦争に引きずり込むために、米国によって慎重に仕掛けられたわなであったことが判明している。米国もコミンテルンに動かされていた。ヴェノナファイルという米国の公式文書がある。

 一、東京裁判は戦争の責任をすべて日本に押し付けようとしたものだ。そのマインドコントロールはなおも日本人を惑わせている。

 一、自衛隊は領域警備もできない。集団的自衛権も行使できない。武器使用の制約が多い。このマインドコントロールから解放されない限り、わが国は自らの力で守る体制がいつになっても完成しない。

 一、日本軍の軍紀が厳正だったことは多くの外国人の証言にもある。わが国が侵略国家だったというのは正にぬれぎぬだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081031/plc0810312246013-n1.htm

 それで、この論文は麻生政権が踏襲している「村山談話」に抵触し、反政権的な言動と首相から判断された。その「村山談話」の部分は、

(前略)
 わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

 敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。[太字:茶路主]
(後略)

 と述べられている。すなわち、対支作戦は侵略戦争であったとの捉え方で、それを踏襲した麻生政権も同じ認識である。麻生首相は、陸・海・空自衛隊の最高指揮官であるから、田母神前空幕長は最高司令官に反旗を翻した事になる。

 <東京裁判>の結果を受け入れたとの具体的説明が麻生政権からは無いけれども、日本国憲法+日米安保体制の下では<東京裁判>判決に対し現職自衛官が批判をするのは国際問題を招く。

 シビリアン・コントロールを運営の前提とする現在の自衛隊は、首相と防衛相の指揮に従わねばならない。個人的には、どのような考えを持っても許されるとしても、国家運営組織における指揮・命令系統の維持は絶対であって、個人的意見は排除される。それ故、現体制下では田母神空将の更迭は止むを得ない。

 だが、私は「村山談話」を唯々諾々と踏襲する現政権にクレームを付けたい。何故、社民党の委員長であった人物が談話として自虐的に述べた事を、その後の自民党政権が安易に受け入れるのかと言うことだ。小泉、安部、福田と続く政権は全て「村山談話」を安易に踏襲している。多くの国民は、不思議に思っているであろう。

 <田母神論文>のような形で、自民党代議士がまとまった意見を披露し、それを基礎として「村山談話」を撤回すれば良いと考えるのだが、シナ・中共との利権やしがらみがあってそれは不可能なのか。

 戦争を行っていたのは事実だから、日支事変中は部分的に残虐な行動があったと思われる。だが、<南京事件>で言われる軍組織としての市民虐殺を私は信じない。それはシナ人特有の捏造である。一方、シナ側は「通州事件」に見られるように非軍属の日本人と朝鮮人を残酷な形で殺戮しているが、それに対する謝罪は今も無視されている。

 歴史の解釈は多様であるし、科学現象を説明するような普遍性は得難い。それ故、政治は歴史的解釈に関与してはならぬ。「村山談話」や「河野談話」はその例であって、これらを撤回し、我が国の祖先が国家を守ろうとした姿勢を尊重すべきと考える。
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