テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

山頂へ、一歩、一歩。

2014-10-23 21:48:07 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス! 
 おにがァ、わらッちゃうゥのはァ、なァにッ?」
「がるる!ぐるるがるるる!」(←訳:虎です!それは来年の話!)

 こんにちは、ネーさです。
 鬼に大笑いされていもいいわ!
 先日、ツール・ド・フランス2015のコースプレゼンテーションが開催されました。
 第102回大会となる来年のツールは、
 オランダのユトレヒトが出発地!
 山岳ステージの難度は今年以上!
 今からもうハラハラ&わくわく♪しながら、
 さあ、本日の読書タイムを、どうぞ~!

  



              ―― 八月の六日間 ――



 著者は北村薫さん、2014年5月に発行されました。
 今年度の読書界で大いに話題を読んでいる“山登り小説”ですね。

「だんがいィぜっぺきィ?」
「ぐるるがる?」(←訳:未踏の高峰?)

 いえ、ヒマラヤとかアイガーの北壁が出てくるわけじゃないんですよ。

 主人公の『わたし』さんは、
 東京の出版社に務めている女性編集者さん。

 出版社のお仕事は頭脳労働ですから、
 足腰に自信がある、ってことはなく、
 学生時代も運動部所属ではなかった『わたし』ですが。

 或るきっかけで、山登りに染まってしまいました。

 いまも、ほら、新宿発・信州方面へ向かう特急列車の座席で
 明日の計画を練っているところです。

「しんしゅうゥ?」
「がるるるる!」(←訳:アルプスだ!)

 目指すは、山好きの憧れ――
 槍ヶ岳。

 大きなザックには、最小限の着替え、雨具や帽子、日用品が
 ぎゅうぎゅうに詰まっています。
 ここぞ!という時のための、お菓子もね。

「はらがァ、へッてはァ~」
「ぐるがるる!」(←訳:山は登れぬ!)

 『わたし』は単独行で険しい稜線を辿ります。

 ひとりで、山を登る。
 
 時折り、一人であることにメゲそうになりながら。
 逆に、一人であることに、ホッともしながら。
 山道で偶然に出会った人々と
 短く、心のこもった言葉を交わしながら。

「これがァ、とざんッ、なのでスかァ~」
「がるるる~!」(←訳:旅だねえ~!)

 収録されているのは短編5作品分の、
 『わたし』の登山記録。

 長めに仕事のお休みが取れた9月、2月、10月、5月、
 そして8月の、山登りの記録――いえ、
 内省の記憶、というべきでしょうか。

 傍らに、親しく語り合う人のいない、
 単独での山登りは、
 自問自答と追想の時間です。

 道は、これでよかったのか。
 荷物は、足りているか、足りなかったか。
 多過ぎたか、少なかったか。
 ペースは早過ぎないか。
 いまにも滑落するんじゃなかろうか。
 山小屋に、無事、到着できるのか……。

「ふあんのォ、れんぞくゥ!」
「ぐる!」(←訳:怖い!)

 不安の中に、しかし、確かに美があり、喜びもある。
 苦しみがあればこそ、達成感もある。

 うつくしく、平明、明快、
 読む者を惹きつける文章は、
 著者・北村さんの真骨頂!ですが、
 爽やかなのどごしには、
 複雑な味わいが隠れています。

 直木賞ではなく、芥川賞。

 つまり、エンタメよりも純文学系。
 ひたすら深く深く、こころを掘り下げてゆく、いえ、
 こころの高みへと登ってゆく小説作品です。

「いッぽいッぽォ、うえにィ!」
「がるるるるる、ぐる!」(←訳:遠回りしても、登る!)

 ミステリではないけれど、
 北村さんのミステリが好きな活字マニアさんには、
 必ずや好もしく思える一冊ですよ。
 2014年度のベストBOOKに推したい快作、
 読み逃さないでくださいね~♪
 



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