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marianela nunez, giselle(20年おめでとうとともに)








どこから始めよう...

ロイヤルバレエ「ジゼル」、マリアネラ・ヌネツ(Marianela Nunez)のジゼル、ヴァディム・モンタギロフ(Vadim Montagirov)のアルベリヒト。

この公演を見た後の自分は以前の自分とは完全に変化した! くらい、全体的にも最高のプロダクションだった。


マリアネラは技術的に完璧でありながら、音楽性も、役柄の理解も、表現力も文句なしに随一のダンサーである。
清らかさや素朴さ、高貴さや優雅さ、弱さと強さ、生と死、愛と憎しみ...などを複合して天衣無縫に表現...などと書く言葉のなんと虚しいことよ!

純朴な村娘ジゼルが恋に落ちて踊るダンスのなんと優雅で、しかもお姫様風ではなく、農村の娘であることが忘れられていないすばらしさ。

いつも驚かされるが、ひとつひとつの動作や表情がものすごく丁寧で、同時に流れるようで、光のようだった。重層的で奥行きと幅があり、しかもそれらすべてが瞬間ごとにまとまっている。天才。

マリアネラ・ヌネツが複合していることのひとつの重要なファクターがあると思う。前にも彼女のために制作された「カルメン」の時にも書いたことがある。
ステレオタイプであることは断っておくが、マリアネラには素晴らしきラテン的「おかん」「聖母」なところがあると思う。裏切ったアルベリヒトの前に現れて慈悲深く微笑み、彼を救う姿にそれが現れていた。空気のようでありながらとても強く、アルベリヒトのことを「最低の男」と評する人たちをさえ「あなたの気持ちわかる」と納得させるジゼルそのものだった。


モンタギロフも前回は病気で代役(ボネッリ)が立ったが、昨夜のアルベリヒトは完璧も完璧、完璧...としか言いようがない。娘用語を借用するとInsainly good(ヤバい)。

一幕の難しいパ・ド・シスも素晴らしい仕上がり。ヤスミン・ナガディ(Yasmine Naghadi)が最高。
アルベリヒトの婚約者バティルドのオリヴィア・カウリー(Olivia Cowley)も役柄の理解がすばらしかったと思う。


......


ところでマリアネラ・ヌネツは15歳の時にロイヤルバレエに入って以来、今年で20年。
昨夜は彼女の今シーズン「ジゼル」最終回で、舞台上でお祝いがとり行われた。

ヒロインに捧げられる花束の数がこんなに大量なのは未だかつて見たことがなく、アンフィシアターから生花が舞い続け、ロイヤルバレエの要人が舞台上に集まり、ダイレクターとアルゼンチン大使がスピーチをし、ご家族もアルゼンチンから鑑賞に来られていたらしい...というのでもしかしたら退団? と一瞬錯乱させられてしまったほど。

世界からの祝福!

彼女がバレエ・ファンにだけでなく、団員から慕われている(冷静に考えたら団員を率いていく能力が欠けていては現代のプリンシパルなぞ務まらないだろう)様子を察することができ、大変幸せな気持ちになった。

もう一回時間を戻して見たいくらい。

この興奮と感動を誰かと分かち合いたいと思っていたら、帰り際のオペラハウス内で友人に合った。彼女が来ることは知っていたが、ご同伴の方によっては声をかけるのは遠慮した方がと思っていたのだった。

芸術はすばらしい。世界もすばらしい。



(写真はROHから)
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