私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

なゐの日並

2011-06-19 12:19:51 | Weblog

 安政2年10月2日、「夜に入定のかねをききつつ」とありますが、たぶん「いりあいのかね」の時刻ではないかと思います。午後6時か7時頃でしょうか??その時刻に、仙果先生は、2階で、その日の日記をつけていたのです。すると、突然に、
 
 「物の砕けるようなる音のして、ゆさゆさとする。すは例の地震にこそと驚き、両人ひとしくのぼりばしごかをかけおりけるものか。天地も崩るるやうに響き渡り、身も上下にあげおろしせらるるようなり。・・・・・活きたるここちもせず。はしご三四きだは転ぶが如くおりて、其ままにうつぶし臥、上より女もおほひかかる。この時、行燈の火もゆりけたれつらん。露もののあやもわかれず。いよいよつよくふりて立べくもあらず。たてりとてあゆまるべくもあらねば、もし家のくずれ圧死せば、父子ともこよいかぎりの命ならむとおもいなげくに・・・・」
 
 と。その時の本当にわずかな時間、1~2分ぐらいはあたのでしょうか、兎に角、大揺れに揺れて、歩くもままならない状態だったのでしょう。自分がこの地震で体験した事をそのままリアルに書き綴っています。「三四きだ」というのは三四段です、そのはしごをおりても、一体どうなっているのかさっぱり分からず、なお強く揺れるので、立つことも歩く事も出来なく、このままこの世ともとおさらばかという思いがしたというのです。

 此の地震が起きた瞬間の書き振りを、先に挙げた城戸千楯先生は、次のように書いています。

 「・・・・忽ち風荒き舟に乗れるが如く、大に震ひて鳴動おびただしく・・・・」
 
 と、だけしか記してありません。
 これですと、その時の地震の様子を、放送か何かで、実況放送しているような客観的な書き振りになっていて、真に迫るような書き方では、こちらの仙果先生に軍配を上げられるのではないでしょうか。どうでしょう。