私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

ここらでちょいと道草をして方丈記を

2011-06-02 20:52:45 | Weblog

 千楯先生からちょいと離れて、ここらで元歴年間にあった」京での地震に付いて鴨長明先生が書いた京の町中の様子に付いて触れてみます。先生曰くです。

 「・・・おびただしく大地震ふる事侍りき。そのさま、よのつねはらず。山はくずれて、河を埋み、海は傾きて、陸地(くがち)をひたせり。土裂けて、水湧き出て、巌割れて、谷にまろび入る。なぎさ漕ぐ船は波にただよひ、道行く馬は足の立ちどをまどわす。都のほとりには、在在所所、堂舎塔廟、一つとして全からず。或はくずれ、或はたふれぬ。塵灰立ち上りて盛りなる煙のごとし。地の動き、家をやぶるる音、雷にことならず、家の内におれば、たちまちにひしげなんとす。走り出づれば、地割れ裂く。羽なければ、空を飛ぶべからず。龍ならばや雲にも乗らん。恐れの中に恐るべかりけるは、ただ、地震なりけりとこそ覚え侍りけしか」

 と。

 流石長明先生です。是を読みますと臨場感が沸き立ちます。地震のすごさが、テレビの前でなくても、その場に、あたかも居合わせているかのような感じがしてくるから不思議です。言葉の持つ魅力でしょうか。
 なお、「たちまちにひしげなんとす」と云う文章が有りますが、この「ひしげる」と云うのは、岡山弁では、「ひしゃげる」といいます。元の姿を留めないぐらい壊れてしまうと云う時に使います。

 「海が傾きて、陸地をひたせり」とありますが、今回の東北地方を襲ッた津波の様子と全く同じです。海が傾くのです。将に、ものすごい迫力で迫りくる山のような海水、あたかも海が傾いて、海にある水総てが押し寄せる様だったと、今回の津波から逃れた人々が語っていた、その通りの光景がこの言葉の中から見えて来ます。長明は、実際には、そんな津波は見てはないと思いますが、人づてに聞いた話から、「海が傾く」と云う言葉を造り出したのでしょうが、その感性の優秀さには驚かされますよね。流石にすごいと思いました。