天下の奇祭「はだか祭り」、西大寺の会陽見学に行ってきました。
それこそ裸の男たちの祭りです。この男たちが何処からともなく観音院めがけて集結します。それらの裸の男たちは、一組二組と雪だるまのような大きな群れになって、神木を争奪する前兆戦を、町中にくりひろげるのです。それは、何でこの寒空に、と思われるのですが、それこそ寒さなんか吹っ飛べとばかりに、「わっしょいわっしょい」の掛け声と上げながらと、ひたすら駆けり通り過ぎるだけです。そこには何の思惑も無く、人間の存在さえも嘲笑くが如くにただ走るだけの姿があるだけです。
町中を走りぬけた、これらの男たちは、やがて、観音院本堂前へと集結します。そして、よいよ九千人の裸の若者が繰り広げる神木の争奪戦へと、見学者をも含めて、観音院境内全体を興奮の渦の中に巻き込んでしまうのです。たった二本の神木を奪い合う、約三時間の壮大なる絵巻物が町全体にばらまかれるのではないかと思われるように繰り広げられます。
神木が投げられる直前の裸の男たちの覇気です。
観客席から見ている私さえ何かあの裸の群れの中にいるような錯覚を覚えます。10時です。突然に本堂の光が一斉に消ます。そこで何が起きているのか見当すら立ちません。あたりは闇の幻が渦巻く様に、ただ裸の群れからの得体の知れない地獄の底からわき出すかのような、ぼわーとした黒光りのような音だけの世界に変化します。
どのくらいの時間でしょうか、しばらくすると、また、会場に光が入り、男たちの裸が現れ、闇が会陽の幻を飲み込んで、真っ暗な空に高く舞い上がって行ったようでもありました。
飛び込め
人間の貪欲どもよ
何処までも
欲望の真っ赤な炎を燃やして
無限なる暗黒の世界に広がる
2つのちっぽけな穴をめがけて
飛び込め
希望という名の魔物を求めて