たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

所有者不明の背景 <「縮小社会」を生きる=増田寛也>を読みながら

2017-07-30 | 不動産と所有権 土地利用 建築

170730 所有者不明の背景 <「縮小社会」を生きる=増田寛也>を読みながら

 

深夜、突然の轟音で飛び起きました。窓は開けっ放しなので(いなかのよさ?)、この豪雨が家の中に入れば水浸しとまでは行かなくても大変です。眠気も吹っ飛び家中の窓を閉めて回りました。時計を見ると午前1時すぎ。これはすごい豪雨なので、NHKを見て警報を見ても何もない。当地の予報は曇りマークで降雨量ゼロ。ゴロゴロ鳴り響く雷の警報もなし。これぞ局地的突発性雷雨でしょうか。一時間くらいは大量の雨だったと思うのです。時間雨量でどのくらいか今度調べてみようかと思います。

 

それでもかなりの量の雨は10分間も継続してない印象で、少し休んでは繰り返す漢字でしょうか。そのあたりも観測所のデータを見ればわかります。ただ、最寄りの観測所といっても隣のかつらぎ町と、河内長野市なので、こういった局地的降雨はなかなか実態を反映するとはいえないように思うのです。

 

そんな思いを抱きつつ眠ってしまうと、今日の目覚めは7時少し前となりました。空は快晴を期待できそうで、猛暑を予感させるのに十分です。花植をしたのですが、どうやら降雨は風がほとんどなかったせいか、垂直方向に落ちていて、今朝植えようとした場所はあまり湿っていないのです。土も腐葉土などをいれているのですが、元の分譲当時の盛り土のためなかなか土壌生態系が育つ状況にならず、花の方もすぐ枯れてしまいます。かわいそうと思いつつ、生きやすい環境になんどかしようと努力している最中です。

 

さて、深夜ばたついたせいか、今日は一日からだが重く、本日の話題もなかなか思い浮かびませんでした。結局、これまでも何度か取り上げた見出しの増田氏が指摘する問題の一部について少しだけ法制度的な視点でアプローチしてみようかと思い、この記事<時代の風「縮小社会」を生きる=増田寛也・元総務相>を選びました。

 

増田氏は「縮小社会」という造語でしょうか、これをキャッチフレーズにして<「縮小社会」と表現すればよいのだろうか。これから経験する人口の急減は日本の歴史上初めてのことといってよい。どんな社会問題が生ずるのか、影響はどこまで拡大するか、想像するのも難しい。>と述べて、その問題のいくつかをここで言及しています。

 

私はその一つ、「所有者不明の土地問題」を取り上げたいと思います。増田氏はこの問題の切り口として登記を俎上にのせています。<土地神話の崩壊と人口減少で地価が下落し、管理が重荷になって、不動産の登記をしない相続人が多い。>

 

問題の土地面積についても、<筆者が座長を務める「所有者不明土地問題研究会」での調査が進み、その面積が全国では九州を上回る約410万ヘクタールに達することが判明した。>この調査方法や算定方法が妥当かは一応横に置いても、相当な面積の土地があるということは想像できます。

 

この解決策の一つとして、増田氏は<既存の所有者不明の土地について、所有者探索の円滑化策や公共的な利活用策を実現するとともに、これ以上増加しないよう、登記の義務化を実現したい。>と述べています。

 

もう一つ増田氏は根本的な対策として<わが国独特の「強い土地所有権」を見直す必要もあるのではないか。所有者の責務を明確化したり、放棄された土地や寄付された土地の受け皿を整備したりするなど、民法(物権法)の所有権概念の抜本的な検討が不可欠だと思う。>と指摘されていますが、具体的な処方箋については言及されていません。

 

実はこの問題は久しく議論されてきていますし、一部は最近の森林法や農地法の改正で、実際に制度化されています。宅地分野では空き家対策法が一つの例でしょうか。

 

ここでは森林法と農地法の改正の内容と、その運用実態について、少し取り上げたいと思います。登記義務化という点は、婉曲的な相続届け制度ができましたが、これさえさほど大きな効果が上がっていないようにも思えますので、相続についてはより実効的な登記代行措置といった制度を検討する時期に来ているのではないかと愚考しています。この3点についてそのアウトラインを書いてみようかと思います。

 

所有者不明の土地の中で、森林地と農地はその比率が高いのではないかと思います。前者は林野庁が、後者は農水省が、それぞれ長年にわたり取り組んできましたが、最近の法改正を紹介したいと思います。

 

まず森林法は平成234月改正で、<森林の土地の所有者届出制度>を設け、新たに土地所有者になった場合、その日から90日以内に管轄市町村長に届出を義務づけました。個人、法人を問わず、売買や相続等により森林の土地を新たに取得した方は、面積に関わらず届出をしなければなりません。

 

残念ながら、この届け出制の実施状況は林野庁の情報からは入手できませんでした。法制度の運用実績については農水省は割合丁寧に報告している(たまたまウェブ情報が手に入りやすいだけかも?)と思います。

 

この改正の大きな柱の一つは、「森林・林業再生プラン」の実効性を確保するために、制度化した3つがありますが、所有者不明問題と関係するのは<所有者が不明の場合を含む適正な森林施業の確保>です。

 

これによると

<① 路網等の設置のために必要な他人の土地について、土地所有者等が不明の場合でも使用権の設定を可能にするため、意見聴取の機会を設ける旨を公示すること等により、手続を進められるよう措置する。

森林所有者が、早急に間伐が必要な森林(要間伐森林)の間伐を行わない場合に、所有者が不明であっても、行政の裁定により施業代行者が間伐を行うことができるようにするなど制度を拡充する。>

 

ということで、路網等の設置のために必要な土地を対象に、使用権の設定を可能にする、公示等の措置を設けています。もう一つは要間伐森林で間伐が行われていない土地を対象に(いまば農地の遊休農地に類似するものですね)、行政の裁定による施業代行者の間伐を認める制度です。

 

これは画期的な制度ともいえます。しかし、これらの運用実績を公表しているのかわかりませんが、いまのところウェブ情報では見当たりません。私自身、林業事業にかかわってきましたが、この事業の実施を寡聞にして知りません。

 

路網整備は森林・林業再生の骨格とも言うべき事業ですが、その事業実施の壁となっている一つが所有者不明の土地があることは容易に理解されると思います。それが一定の手続きで使用権設定が可能となると、まさに増田氏が指摘する所有権制限の実効的措置の一つとなりえるのですが、どうもこの制度が活用されているようには思えないのです。

 

この使用権の設定は、知事が行うことになっていますが(森林法第50条第2項)、それ以上に詳細な内容は省令で定めているようです。知事が担い手ということは、大規模な路網整備を前提にしているのでしょうか、林道整備自体が環境保全の見地から容易でない状況ですので、どの程度活用できるのか疑問です。

 

もう一つの要間伐森林ですね。これはその対象を絞り込むというか、認定することが簡単ではないと思うのです。遊休農地や耕作放棄地はかなり具体的な要件を設けて対象を明確化できるようにして、担当する農業委員が判断できるように相当程度はわかりやすいと思います。しかし、この要間伐森林というと、日本の大規模造林政策で植林され間伐されないで、すでに樹齢50年を超える針葉樹がどのくらいあるか、統計数値があると思いますが、膨大です。他方で継続的な間伐が行われているのはさほど多くないのです。すると、どのような基準で「要間伐森林」とするかによっては、ほとんどの森林が当てはまるかもしれません。

 

私はこの要間伐森林の定義規定というか、その要件を定めた指針的なものなりを見たことがないので、なんともいえませんが、基準設定はある種線引きですので机上ではできるでしょうが、基準があっても現場で運用するのは大変なことだと想像できます。

 

それよりなにより、この行政主体は市町村長ですが(森林法第10条の102項)、全国各地の自治体で、この林業業務を主体的に取り組めている割合はどのくらいあるのでしょうか。そのような状況で、仕組みは、市町村長が当該森林と認めて通知し、所有者不明の場合知事が裁定するのですが、第一段階の市町村長の認定自体が容易でないと思います。新たに実効的な組織を設置しないと絵に描いた餅なるおそれが高いと思うのです。

 

もう一つ、昨年改正された<森林法等の一部を改正する法律案(概要)>では、共有林について、<共有林の立木の所有者の一部が所在不明であっても伐採・造林ができるよう、所在不明者の持分の移転等を行う裁定制度を設ける。>となっています。

 

これは要間伐林という対象の限定はないのですが、共有林を対象にして立木所有者の一部が所在不明の場合他の共有者が伐採・造林しようと思っていてもできない不便さを補うものです。

 

とはいえ、これも行政の裁定制度を使うのですが、まず市町村長が共有者の一部が不確知であることを公告することになっていますし、その上で知事に裁定申請する建て付けになっていますが、これを担うだけのスタッフがいるか心配です。それと平成23年改正法の制度運用がどのような結果となっているのか、十分な検証を踏まえたものなのか懸念されます。

 

次に農地法の対応ですが、農水省の<遊休農地の解消について>で解説されています。農地法も平成の大改革という制度改革をしたものの、あまり大きな実績をあげれていないように思います。

 

それで今回は平成25年改正ですが、

まず、<平成25年の農地法改正により、耕作放棄地対策が強化されました。>として、

 

<【対策強化のポイント】

•既に耕作放棄地となっている農地のほか、耕作していた所有者の死亡等により、耕作放棄地となるおそれのある農地(耕作放棄地予備軍)も対策の対象となりました。

•農業委員会は、所有者に対し、農地中間管理機構に貸す意思があるかどうかを確認することから始めることとする等、手続の大幅な改善・簡素化により、耕作放棄地状態の発生防止と速やかな解消を図ります。

•農地の相続人の所在がわからないこと等により、所有者不明となっている耕作放棄地については、公示を行い、都道府県知事の裁定により、農地中間管理機構が借り受けることができることとなりました。>

 

最後の所有者不明の対応がほぼ森林と同様の取り扱いでしょうか。ただ、農地については、農業委員会委員が最近は積極的な働きかけを農地所有者に行っている実情が見られるように思いますので、森林ほど放置されたままではないように思えます。

 

農水省は、運用実績を報告しているので、ある程度その実態が浮かび上がりますが、問題の所有者不明への対応についてはわずかに2つの事例が挙げられていて、その大変さが窺えます。ほかにもあるのかもしれませんが、この事例を見る限り、容易に裁定が行われるとは思えません。

 

上記の事例1では静岡県東伊豆の農地が対象となっていますが、1889㎡です。これを大きいとみるか、ですが、1反にも満たない土地ですので、それでも大変な作業量・時間を要していることが窺えるのです。所有者は70年前に死亡し、関係者も全員死亡して、隣接農家への病害虫や鳥獣被害など悪影響も大きかったことがこの手続きに至ったことが推測できます。第2の事例5反未満ですが、耕作条件がよいというのが、利用権設定までうまく進んだのではないかと思われます。

 

この制度自体は、けっして悪いものではないと思いますが、現在の所有者不明の土地問題を解決する抜本的な策とはなりえないように思うのです。

 

最後に、登記問題について、私なりの大ざっぱな意見を述べますと、要は地籍調査と同様にというと語弊がありますが、相続については、登記代行制度を設けることを検討する必要があるという考えです。その場合所有者不明を前提に、一定期間内に相続登記が行われていない場合、登記を管轄する法務省と戸籍を管轄する総務省などの連携で、新たに設置する登記代行システムで、一定の資格ある者が戸籍・除籍等の徴収管理を行い、登記申請を行い、これらデータ資料は一元管理を行うといった大ざっぱな流れです。その費用は、一応は税金で賄うとして、一定以上費用がかかる場合で、土地に資産価値があるときは換価処分して換価金で費用に充当するといったことです。

 

ま、思いつきですので、所有権と登記および戸籍に関わる重大な問題ですので、多くの人が関心を持ち議論して、さらなる検討を期待する次第です。

 

さて今日は1時間半が過ぎています。この辺で終わりとします。

付記 所有者不明の背景を書くつもりが、制度説明をしているうちに、失念しました。これはまたの機会に