たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

価値の源泉は選別 <木材選別、伐採現場で 林業者に技術研修・・>などを読んで

2017-07-06 | 農林業のあり方

170706 価値の源泉は選別 <木材選別、伐採現場で 林業者に技術研修・・>などを読んで

 

西日本、とくに九州北東部は大変な豪雨でした。朝倉町のどこか、だったと思いますが、時間雨量が100mmを大幅に超え、それが何時間も続き、一日雨量が700mmを超えていたといったTVニュースをちらっと見ましたが、こんな雨に遭ったら、どうしようもないですね。

 

異常気象はいつどこで起きるかわかりません。備えあれば憂いなしともいいますが、備えはなにがいいか、考えられるのでしょうかね。地方だから山崩れ、護岸崩れ、洪水で陸の孤島になりやすいかもしれませんが、首都圏ではもっとひどい状態になるでしょう。神田川の氾濫程度で何度も被害が発生していますが、今回の以上降雨量に比べればたいした量ではないのですから、もし首都圏で同じような規模の豪雨があれば、インフラはずたずたでその被害は計り知れないでしょうね。むろん地価貯水池など東京都はこれまでそれなりに備えをしてきたと思いますが、こんかいのような事態にはお手上げになると思います。

 

さて当地は、穏やかな天候で、朝からいつもの作業を繰り返し、日中は相続問題で、明治期に遡って原戸籍を探る作業が続き、かなり疲れてしまいました。当時は、家督相続と言いながら、女性が戸主になったり、養子縁組を結構していますね。なんででしょう。あまり明治時代の家族の実態を注意してきませんでしたが、いちど機会があればみなおしたいと思います。

 

そんなこんなでいつのまにか6時を過ぎ、そして今日の話題を考えていたら7時も過ぎてしまっています。孤島でのバイオ・トイレとか、大型ドローの利用とかを取材したのも面白いと思いつつ、今回は取り上げませんでした。また、<JA全中会長に和歌山・中家氏 政府改革批判票集め>も、前回は<農協を牛耳る守旧派にNOJA全中に改革派会長誕生>とどんでん返しがあったことから、JA各地で揺れ動いている様子を感じるのですが、情報が足りず、これも別の機会にします。

 

ということで、林業を取り上げます。国有林事業の問題は先日取り上げ、中途に終わっているのですが、いま現場が抱えている問題に、和歌山県がどう対応しようとしているのか(農協は和歌山代表が全国代表になりましたね)、簡潔にフォローしておきたいと思います。

 

毎日朝刊和歌山版ですが、<木材選別、伐採現場で 林業者に技術研修、加工場直送でコスト減 21年度までに10人育成 /和歌山>と、和歌山県では、小規模ながら、新たな取り組みを恥じようとしています。

 

<県は、森林で伐採した木材を現場ですぐ等級別に選別できる林業者の育成に乗り出す。木材を市場に運び込まずに現場から加工場に直送できるようにすることで、運搬コストが抑えられ、林業での収入増も見込めるという。>

 

どういうことかといいますと、伐採した木の品質等に応じて当然価値が違い、用途も異なり、最終的な利用も違うわけですね。いわゆる等級です。

 

記事では<木材は曲がり具合や節・傷の有無、色味によって、おおむね4等級に区分される。等級に応じ、高級建築物用の高品質材から、バイオマス発電などに使う燃料チップ用まで、さまざまな用途に分けられる。売価にも大きな差があるが、加工に携わらない林業者にとっては等級の選別が難しく、これまでは選別のために上富田町や田辺市、奈良県などの木材市場に運び込む必要があり、余分な運搬費がかかっていた。>

 

この説明だと、すべて市場で選別されているようにも受け取られかねませんが、実際はバイオマス発電用や、チップ用などは、C級材として、いずれもそれぞれの工場に直行です。そのような選別は別に難しくないのです。むしろA材とかB材の中でさらに選別が必要とされていて、それを伐採側で早い段階で仕分けして、コスト削減につなげる趣旨だと言うのです。

 

それで、<今後は、低品質の木材を中心に市場での選別は控え、ニーズに応じて林業者が伐採現場で即座に選別する仕組みを推進する。市場の役割を主に高級材の取引に絞っていく。>というのですが、現時点でも、低品質の木材については、市場での選別を控える方向にあるように思うのですが、実態は違うのでしょうかね。

 

私が見学した市場はさほど多くないですが、いずれもそれなりの品質です。そういえばウッxド・ジョブの映画で市場での競りを放映していましたが、あれほどの銘木はそれほどないとしても、奈良県の市場ではそれなりに品質を保っているように思えます。むろん市場によって、品質の劣る材をも扱うところがありますが、この記事でいうような低品質のものまで扱っているか、少なくともC材はないと思います。B材として合板工場用か、集成材工場ようかに分けられるような材も扱っている市場はあると思いますが、だいたいがA材をメインにしているのではないでしょうか。

 

といっても問題は、A材を使うだけの用途がどんどん減っているのが現状でしょうね。その意味では、選別も大事ですが、その貴重な価値をより高める、営業力やエンドユーザーに対する市場開拓力が問われるのではないかと思うのです。

 

記事では<ただ、林業者が選別のノウハウを速やかに習得することは難しい部分もあるため、スマートフォン向け専用アプリの開発なども検討している。>これがただ、従来型の品質の選別だけにとどまるのであれば、それも有益ではあるのですが、いま必要とされるのは市場にどう訴え、付加価値をつけるか、あるいはそれを理解してもらうようにするかといった、内向けの選別以上に、外向けの選別が求められているように思うのです。

 

少し古い記事ですが、<KIKORI林業の格好良さ伝えたい 中川町が新ブランド /北海道>のような選別をも視野に入れていないと、自己満足に陥るおそれがあるように思うのです。むろん、自分たちが育てた木だから、この木のつや、枝打ちのよさ、年輪の細やかさなどといった、生産者特有の価値観からの選別も大事でしょうが、それだけでは現代の木材への不人気、価格の下落を止められないように思います。

 

木のよさは、そう棚田で作られたコメとか、有機肥料で作られたコメとか、自然景観や生態系とともに生み出すことが現代的な意味での価値の選別につながるのではないかと思うのです。

 

上記のKIKORIでは<KIKORIブランドは、木材の個性を生かしたデザインが特徴。切り株にロープを通した椅子や、切れ目の入った丸太に火を付けて屋外で使う「きこりのろうそく」などの製品があり、地元の若手林業者が中心になって制作する。>として、<「木を選別する目を持つ林業者を、子どもの憧れの職業にしたい」と語った。>と、夢があっていいですね。

 

県の事業も、選別力というものの意味合いを、少し深みと柔軟さをもって、追求してもらえるといいのですが。とはいえ、その方向性自体は、注視して、期待したい思います。

 

他方で、毎日は悲しい林業の現実も伝えています。<美作東備森林組合役員18人全員が退任 契約書無断作成で引責 /岡山>では、<美作東備森林組合(美作市)が森林所有者に無断で委託契約書を作成していた問題で、組合は27日、通常総代会を開き、理事ら役員18人全員の退任を決めた。また、不正を命じた幹部職員1人が引責辞任し、関係した職員7人が減給1~2カ月(10分の1)の懲戒処分を5月に受けていた>とのこと。

 

これは民主党が始めた林業再生プランの目玉である、集約施業を行うため、一定の広大な規模の林地面積を集約して効率的に搬出間伐を行おうとするもので、小規模林地所有者を集めて森林経営計画を作成し、それにより簡易な作業銅を作り、継続的な搬出間伐を行って、放置されたスギ・ヒノキ林の再生を果たそうというものです。そのプラン自体は西欧流の計画的な伐採事業を多少まねたものですが、意義のあることだと思います。

 

ただ、問題は起こりやすいのも、いまの林地所有者、林業の実態かもしれません。

 

<無断で作成されたのは森林経営計画に関する委託契約書。組合はこれを結ぶことで、林道整備や間伐を一括してできるようになり、国や地方自治体から補助金を受け取ることもできる。組合が2013~15年度に作成した契約書約2700件を県が調べたところ、少なくとも700件が偽造されたことも判明したという。>

 

経営計画を策定するのに、補助金が交付され、計画に基づき作業道を開設して搬出間伐すればそれぞれ補助金が交付されます。その前提が虚偽だとすると、当然、組合員の信頼を裏切ることになりますし、国に対する詐欺的行為ということになりますね。

 

わずか3年間で、契約書が2700件も作ったこと自体、どの程度の規模の森林組合か知りませんが、その大変な事務作業量から考えて、可能な数なのか不思議に思います。そのうち700件が偽造というのですから、開いた口がふさがらないですね。

 

岡山県も、森林組合も、ほんとに襟をたださないと、森友学園や加計学園の疑惑のように、他の都道府県や森林組合の信頼性にも影響するでしょう。

 

これで1時間経ちました。今日はこれで終わりとします。