たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

差別とは <高校無償化 朝鮮学校・・広島地裁判決「差別に該当せず」>を読んで

2017-07-20 | 差別<人種、障がい、性差、格差など

170720 差別とは <高校無償化 朝鮮学校・・広島地裁判決「差別に該当せず」>を読んで

 

今朝も早暁からなにやら忙しく、読書からはじまって草取り、花に水やり、事務所ではいろいろな事務処理をしつつ、和歌山地裁まで飛んでいき、帰ってくると相談メールがあり対応していると、もう6時半をまわっていました。

 

なんとものんびりとはいえないいなか生活です。むろん都会の弁護士の忙しさは時間に追われ放しではないかと思います。やはりいなかはいいです。和歌山行きは少し車の運転が楽になり、移りゆく山肌を眺める余裕も出てきて、あの斜面はどうやってできたのだろうかとか、稜線が長く伸びる峰にはそれを支えるような尾根があちこちと出っ張っていて、もしかしてこれで釣り合いがとれているのかなと、想像しながら走っています。

 

さて、今日は差別について少し触れたいと思います。朝鮮学校問題はヘイトスピーチでも話題になり、そうでなくても半世紀以上前から問題が続いている中で、私みたいにいままで実際に経験したことがないと、なかかなものを言いづらいテーマです。

 

で、あえて取り上げたのは、<高校無償化朝鮮学校、全面敗訴 広島地裁判決「差別に該当せず」>の記事の中で、弁護団長の足立修一氏がコメントしていたからです。足立氏とは面積はありませんが、ちょうど東日本大震災があったその年、3月初め頃でしたか、三浦半島で環境問題に取り組んでいるある女性から、上関原発建設反対運動がいま危機的状況なので、協力してくれないかという相談がありました。私自身、その時点で20年近く原発問題に関心を持ち各地の原発反対訴訟がうまく行かない状態であることを身にしみていましたのと、その女性の危険性の意識がいまごろ気がついたのかと思うほどの内容でしたので、驚きつつも、当時の裁判実情をこんこんと残念な思いで話したのです。

 

上関原発は日弁連公害環境委員会でも問題として取り上げ調査団を派遣していましたので、私も関心を抱いて、誰も適切な弁護士がいないのなら、協力することを考えようと思ったのです。そのとき調べたら、足立氏が住民側にたっていろいろな抵抗運動、訴訟を展開していたと記憶しています。日弁連では全国各地で原発訴訟を担っている弁護士をそれなりに知っていましたが、足立氏のことは私自身初めて知ったので、地方で活躍している人はちゃんといるんだなと感心したのです。でも、相談された方には、原発大災害(むろんメルトダウンなんてまったく想定していない当時でした)はいくら訴えても裁判所では理解されないので、糠に釘みたいなものといった趣旨で、協力をしつつも、やんわりと裁判闘争のむずかしさを説明したのです。そしたら、直後に福島第一原発事故ですから、これには驚きました。

 

と同時に、なかなか理解されない中、地方のちいさな島を守るため孤軍奮闘に近い戦いをしている足立氏に共感を抱いたのです。

 

で、その足立氏が担当している訴訟は差別禁止・平等原則の憲法違反を田面のです。<朝鮮学校を高校無償化の適用対象外にしたのは憲法違反だなどとして、広島朝鮮初中高級学校(広島市東区)を運営する「広島朝鮮学園」と元生徒ら約110人が対象外適用の取り消しや慰謝料など約6000万円を国に求めた訴訟>

 

問題となったのは、その<対象外とした文部科学相の判断について「裁量の範囲逸脱や乱用が認められる>かどうかです。

 

その経緯は<高校無償化は2010年4月に当時の民主党政権が導入。私立高校などの生徒には学校を通じて就学支援金が支給される。政府は同年11月の北朝鮮の韓国砲撃で、朝鮮学校の支給審査を停止した。さらに12年12月に発足した第2次安倍政権は、拉致問題の進展がないことなどを理由に支給対象外とする方針を発表。文科省は13年2月、支給基準を定めた省令を削除して朝鮮学校を対象外とした。>

 

原告側の言い分は<他の外国人学校は対象となっているとし、「政治的、外交的な理由から差別的に扱われている」と主張。民族教育などを学ぶ権利や教育の機会均等を保障する憲法、国際人権法などに違反すると訴えていた。>

 

結論は裁量逸脱・乱用がないとしたわけですが、その理由として<判決は、北朝鮮や朝鮮総連と朝鮮学校が密接な関係にあり、「不当な支配」を受けて教育基本法に違反する恐れがあるとする国側の主張を認め、「就学支援金が授業料に使われないことが懸念される」と指摘。「審査基準も合理的で、差別には該当しない。適用対象となった他の外国人学校には類似の事情は認められない」とした。>

 

判決が理由としたのは、<北朝鮮や朝鮮総連と朝鮮学校が密接な関係にあり、「不当な支配」を受けて教育基本法に違反する恐れがある><「就学支援金が授業料に使われないことが懸念される」と指摘。「審査基準も合理的で、差別には該当しない。適用対象となった他の外国人学校には類似の事情は認められない」とした。>ということですが、この密接な関係と、「不当な支配」はどのように具体的事実が指摘され立証されたのか、この記事だけではわかりません。

 

それに加えて、判決は<「就学支援金が授業料に使われないことが懸念される」>と指摘していますが、「懸念される」ということは、別に使われることの可能性を立証できたとはいえない表現です。仮に不当な支配を受けていることが立証できたとしても、そのことから当該修学支援金が北朝鮮に送られるなどのその趣旨に反する事態が生じる蓋然性が立証されなければ、それは合理的な差別とは到底いえないと思うのです。

 

いや裁判所は「差別に該当しない」といっているのですから、では差別とは何かが問われるべきでしょう。

 

むしろ<第2次安倍政権は、拉致問題の進展がないことなどを理由に支給対象外とする方針を発表>という政治判断によってゆがめられているおそれを感じます。

 

いまアメリカではトランプ大統領の特定のイスラム圏からの入国禁止令を発効し、制限付きながら最高裁も容認しました。まだ最高裁決定を読んでいませんが、一審、控訴審の違法と判断した仮処分決定こそ、憲法で保障された差別の禁止・平等原則に立脚するものだと思っています。最高裁の人事はアメリカでは政治マターとも言われており、立憲主義を担保する存在になり得ているのか時々疑問を感じます。今回はどうか・・・

 

で、わが国の広島地裁の判決は、対象外としたことを「差別に該当せず」と判示していますが、トランプ大統領の入国禁止令に対する一審・控訴審の判断と比べて、日本国憲法の守り手といえるか疑問を感じます。むろん判決文を読まないで新聞記事の一部のみ読んで、断定的な評価をするのは避けるべきとは思います。

 

しかし、万民にたいする教育の機会均等を保障している憲法の精神・規定に立脚した丁寧な判断がなされたのか気になります。今後も注視していきたいと思います。

 

毎日社説も批判的な立場で言及しています。<社説朝鮮学校の無償化で初判断 制度の理念に反しないか>参考になるかと思います。

 

ちょうど一時間をすぎました。今日はこれでおしまいです。