環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

日高義樹のワシントン・リポート2010-02-14: 次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力? 

2010-02-17 18:37:46 | 原発/エネルギー/資源
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 今日は、去る2月14日(日)に偶然目にしたテレビ東京の「日高義樹のワシントン・リポート 」(16:00~17:15)の概要をお知らせしましょう。テーマは「次世代エネルギーの主役は太陽? 原子力?」。バンクーバー五輪の熱戦を見ようとチャンネルを選択していましたら偶然、この番組に出会いました。チャンネルをテレビ東京(12チャンネル)に合わせたのが16:10ぐらいでしたので、リポートの導入部分がどのようなものだったかは不明です。番組終了後、ネット検索しましたら、この番組の概要が次のように書かれていました。

番組概要

 原油の値段が上がりつづけ、1バレル200ドルを超すという予測まで現れるなかで、世界的に原子力発電所の建設ラッシュが始まろうとしている。地球温暖化の原因になる物質を放出せずに大容量の電気を得ようとすれば、いまや原子力しかないという考え方が強くなり、急進的な環境保護勢力のグリーンピースまでが賛成に回っている。いっぽうアメリカのオバマ政権は、長期的なエネルギー源として太陽熱発電を、全力をあげて推進している。将来のエネルギーについて世界の指導的な国々がどう考えているか伝える。
 
 このリポートは5部構成で、各部の冒頭に、それぞれのテーマに関する最新の映像が数分映し出され、その後にインタビューがあり、最後はインタビューのまとめで締めくくられています。スウェーデン、ドイツ、米国の3カ国が登場します。


第1部 スウェーデンが地下岩盤に核廃棄物貯蔵所(約7分) 



1時間ほどかけて、発電所をみて回りましたが、地震がまったくないと言っていいスウェーデンで、地震に対する備えをしていることに気がつきました。この部分が建物の割れ目になっています。地震で建物が大きく揺れても、それぞれの部分が別に動いて崩壊することがないように作られています。(この部分は日高さんの語り)


(フォーシュマルク原発3号機の建屋内の1時間の視察を終えた後、建屋の屋上で)

 2009年6月4日、スウェーデン政府はこのバルト海に面した森林地帯に核廃棄物の貯蔵施設を建設することを正式に認可しました。このあたり、地下1kmのところにある幅が3km、長さ8km、高さが10kmの大きな岩盤をくり抜いて、廃棄物の貯蔵施設にするのが最も良いと判断されたからです。工事は2012年から始まり、2020年に完成する予定です。(この部分は日高さんの語り)

フォーシュマルク発電所のアンダース・マークグレン広報部長。

日高:なぜこの場所が選ばれたのですか?
マークグレン:岩盤が最適だからです。ほとんどヒビがない。水も含まれていない。核廃棄物を貯蔵する場所として最適なのです。

日高:調査に25年かけたと聞いています・・・
マークグレン:25年以上前に調査を始め、スウェーデン中を探して8カ所を選び、さらに2カ所に絞りました。ここフォーシュマルクとオスカーシャムです。その後、約10年調査を重ね、去年の6月ここフォーシュマルクに決まりました。岩盤が最も優れているからです。

日高:何年ぐらいここを使うのですか?
マークグレン:将来ずっと・・・核廃棄物は長期間危険です。10万年は貯蔵しておかねばなりせん。

日高:周辺住民から反対がありましたか?
マークグレン:ほとんどありませんでした。地域の住民にたずねましたが、80%以上が「岩盤が安全なら問題はない、建設しなさい」と答えました。

日高:反対のデモなどはなかった?
マークグレン:ありません。原子炉を建設した時にはありましたが・・・そのときにもこう言いました。「どうか何でも聞いて下さい。よく見て下さい。説明します。何を恐れているのか聞かせて下さい、説明します」と・・・

(建屋内に戻って、使用済み核燃料棒を納める銅製キャニスターを前にして)



マークグレン:これの重さは25トン・・・
日高:廃棄物が全てここに入る・・・?

マークグレン:そうです。重さが25トンあります。
日高:全体で25トン?
マークグレン核廃棄物を入れて・・・
日高:12ありますね・・・、核廃棄物が12個・・・

マークグレン:まとめて入れます。長さは4メートル・・・
日高:4メートル?



マークグレン:お見せしましょう。使用済み燃料が入っています.4メートルあります。パイプが見えますね・・・?
日高:核燃料・・・?

マークグレン:高放射性の使用済み燃料です。長期間、放射性を持つ廃棄物です。



ここまででインタビューは終わりです。インタビューのまとめはありません。


第2部 アメリカは太陽発電(約13分)

米太陽発電協議会会長 ジュリア・ハム会長

インタビューをまとめてみます。
●太陽エネルギー産業は大企業を巻き込んで急速に拡大している。
●太陽エネルギーからつくる電気の貯蔵技術の開発が望まれている。
●太陽エネルギー電気は2015年には1キロワット6~8セントになるだろう。


第3部 ドイツ人はいまだに核嫌い(約11分)

EU委員長エネルギー政策顧問 クロディア・ケムフェルト

インタビューをまとめてみます。
●ドイツの人々はチェルノブイリなどで起きた原子力発電所の事故を怖がっている。
●ドイツの人々は何にでも反対するという習慣がついてしまっている。
●ドイツの人は核を怖がって感情的になり過ぎている。


第4部 原子力発電政策がないアメリカ(約11分)

米21世紀エネルギー委員会委員長 カレン・ハバート

インタビューをまとめてみます。
●オバマ大統領は原子力エネルギー開発に冷淡で研究費用などを減らしている。
●オバマ政権の原子力エネルギー施策は明確でない。
●オバマ政権の支持勢力であるグリーンピースも原子力発電に賛成している。


第5部 原油高をもたらすオバマ・エネルギー政策(約13分)

米21世紀エネルギー委員会委員長 カレン・ハバート

インタビューをまとめてみます。
●オバマ大統領は石油や天然ガスの開発に熱心でない。
●石油企業に新たに800億ドルの税金をかけたのは間違っている。
●オバマ大統領は他のエネルギー源の開発を犠牲にして再生可能エネルギーの開発に力を入れている。
●経済を回復させるにはエネルギーを安くしなければならない。

 以下は、このリポート全体のまとめの部分です。日高さんの発言を忠実に再現しました。日高さんは、次のように、このリポートを締めくくっています。
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 経済を拡大し、そして世の中を活性化するために、歴史的に見ても、あるいは、また、どこの指導者にとっても大切なことは、安いエネルギーを大量に供給することであります。この点で言いますと、アメリカのオバマ大統領はその政策に失敗しました。

 登場と共に、太陽エネルギーを提唱いたしましたオバマ大統領は画期的、そして野心的なエネルギー政策を打ち出したとして世界中から歓迎されました。しかしながら、1年たった今、太陽エネルギーの開発には予想以上に長い時間がかかる、そして、一方では石油企業との関係が芳しくないうえに、原子力発電政策についてもはっきりした態度を明らかにしておりません。

 こういったオバマ大統領のやり方は、かつてのカーター政権の石油危機の時代と同じであります。当時アメリカは石油が不足し、経済が混乱し、政治が大きく揺れました。オバマ大統領はエネルギー政策に失敗した結果、これから当分アメリカの景気も、そして政治も、私は回復が難しいだろうと思います。

 残念ながら、この経済すべてをアメリカに頼ってきた日本としては抜本的な政策の変更、世界のどこを相手にするか、どういうエネルギー政策をとるのか、新しいやり方を考えなくてはならなくなっていると思います。
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関連記事
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日高さんのこのリポートは5部構成ですが、このリポートの第1部になぜスウェーデンが登場するのか、そして、第1部で取り上げたスウェーデンの「着実な高レベル廃棄物(使用済み核燃料)処分計画」が第2部以下とどうつながっているのかよく分かりませんでした
 
 スウェーデンは、日本と違って、「使用済み核燃料の再処理」を行わず、「直接処分」の方式を選択していますので、原発からの核廃棄物処分施設としては低・中レベル廃棄物の最終処分場(SFR)、高レベル廃棄物の中間貯蔵所(CLAB)および高レベル廃棄物の最終処分場(SFL)の3つの施設が必要となります。SFRは1988年に完成、CLABは1985年に完成、あとは、SFLを2020年頃をメドに完成させる計画となっていました。
 
 日高さんがリポートしたのは、スウェーデンの核廃棄物の処分施設のうち、最後に残っていたSFL(高レベル廃棄物処分場)の建設を当初の計画通りのスケジュールで着実に進めているという話です。SFLが完成すれば、原子炉から取り出されて数十年間CLABに貯蔵されていた高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料)は順次SFLに移されます。

 マークグレンさんと日高さんの会話が何となくしっくりいかないのは、マークグレンさんが最初から「Spent Fuel(使用済み核燃料)」といっているのに、この言葉を聞いた日高さんが、銅製のキャニスターに入れるべき 「高レベル廃棄物」 の形状(使用済み核燃料集合体)を正確にイメージできていなかったからだと思います。

 私の環境論では、現在は「20世紀の経済規模の拡大」から「21世紀の経済規模の適正化」への転換時期ですので、このリポートの締めくくりに示された日高さんの判断基準 「経済を拡大し、そして世の中を活性化するために、歴史的に見ても、あるいは、また、どこの指導者にとっても大切なことは、安いエネルギーを大量に供給することであります。この点で言いますと、「アメリカのオバマ大統領はその政策に失敗しました」 は、20世紀の発想の域から一歩も抜け出ていないと考えざるを得ません。