酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

ブッシュは福田を見限った

2008-06-20 21:52:32 | Weblog
 ゴンドリーザ・ライス米国務長官がヘリテージ財団での講演で「北朝鮮が核開発計画の申告を行えば、テロ支援国家指定解除の手続きを進める」と言明した。

 日本政府の「拉致問題での前進がないうちはテロ国家指定を解除すべきではない」という申し入れは無視された格好だ。だが、よくよく考えるとライス発言は、日米が示し合わせて打った芝居の種明かしだ。

 12日まで北京で行われた日朝協議での合意を発表する斎木昭隆外務省アジア太平洋局長の表情がすべてを物語っている。対北強硬派として知られる斎木が、浮かない顔で「拉致問題解決への前進があった」と述べた。内容は何のことはない、北が「拉致は解決済み」と言わなかっただけのことである。これがなぜ前進なのか。

 18日のライス講演には「米国は日朝協議の進展を支援した」との文言が見える。拉致問題を放り投げたままテロ国家指定に踏み切るのは、さすがのアメリカも気が引けたのだろう。北朝鮮に因果を含め、日朝交渉に臨ませたと考えたい。同じことを日本政府にも言っているはずだ。意に副わない発表をしなければならなかったから、斎木は固まってしまったのだ。

 ヒル次官補が日本に飛んできて、斎木らと話し合った。日本政府の公式見解は「米国の姿勢は従来と変わらない」である。福田康夫首相は「米国政府とは緊密に連絡を取り合っている」とも付け加えた。北の核計画申告からアメリカのテロ支援国家指定解除に至る手続きのすべては、日本政府も了解済みと見て間違いない。

 福田は安倍晋三ほど拉致にこだわってはいない。ただ、アメリカのテロ指定解除がこのまますんなりと進み、拉致が取り残されるようなら政権に与える打撃は大きい。福田はそこがよく理解できていないし、アメリカはそれでも構わないと考えているはずだ。つまり、福田政権を支えるより、ブッシュ自身のレジェンド計画が優先だ、と言うことである。

 そもそも、テロ支援国指定などというものはアメリカの国内手続きに過ぎない。指定の根拠もいい加減である。敵対国を攻撃する材料と言ってもいい。こんなものにすがって拉致問題の解決を図ろうなどと考える方が甘ちゃんである。

 今回の流れを整理するとこうなる。
①米国は一日も早く北に核申告をさせ、テロ支援国家指定を解除したかった②それには拉致が引っかかる③日朝協議で拉致での前進が得られた④よってテロ指定解除を進める障害はなくなった-。

 2、3日前、中国の習近平副主席が北朝鮮を訪問して金正日と会談している。6カ国協議が話題に上ったのは当然だろう。米、中、朝で根回しが進んでいる。日本も米国から情報を受けていないわけがない。

 福田はサミット後の遅くない時点で政権を投げ出す可能性がある。言動の端々に投げやりさが目立つからだ。今回のライス発言は、首吊りの脚を引っ張るようなものだ。「フクダサン、シナバモロトモトイウジャナイデスカ」、ブッシュのささやきが聞こえるようだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする