東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

荷風生家跡~断腸亭跡~偏奇館跡(4)

2012年01月12日 | 坂道

前回の断腸亭跡(永井荷風旧居跡)から六本木一丁目の偏奇館跡に向かうが、ここから先は、これまで巡った坂をつなぎあわせると、簡単にコースができた。しかし、真っ先に浮かんだ坂を結んだだけで、地図を見ると、当然のことながら他のコースもたくさんある。ここまでのコースも他にもあるので、全体としてもかなりの数のコースが考えられる。ただ、できるだけ裏道や好ましい小坂を通ろうとすると絞られてくる。

尾張屋板江戸切絵図(千駄ヶ谷鮫ヶ橋四谷絵図) 安養寺坂上手前 安養寺坂上側 安養寺坂下 前回の永井荷風旧居跡の説明板の前から東へ向かう。歩道をそのまま進んで、青峰観音のところまで行ってから引き返し、右折し、安養寺坂に向かう。二枚目の写真は、その坂上手前で撮ったもので、左側が住吉町14番地である。ちょっと歩くと、坂上となって中程度の勾配で下っている。三枚目の写真のように、坂上側に標柱が立っており、その先で、左側に緩やかに曲がっている。安養寺は、この坂の右側(南)にあるが、この坂から直接アクセスできない。

一枚目は尾張屋板江戸切絵図(千駄ヶ谷鮫ヶ橋四谷絵図 元治元年(1864))の部分図であるが、安養寺が左端にあり、その左わきの道がこの坂と思われ、むかしはこの坂とつながっていた。

坂下の左右の通りは、あけぼのばし通り商店街で人の往来が多い。ここまで休憩なしで昼食もまだであったので、中華料理店に入って昼食休憩にした。

出発の礫川公園からこの安養寺坂下まで、携帯による歩行距離は8.3kmで、要した時間は1時間46分である。

念仏坂下 念仏坂上 念仏坂上を右折した道 合羽坂上 昼食後、商店街を南に歩き、すぐの一本目を左折すると、一枚目の写真のように念仏坂の坂下である。かなり急な階段坂で、途中、左にちょっと曲がっているので、坂下から坂上が見えない。二枚目の写真のように踊場の端に石標が建っていて、ねんぶつ坂と刻まれている。もう一つ建っているが、こちらは古く前面の文字が消えているようだ。

坂上を左折すると、さきほどの女子医大通りの月桂寺前に出る道である。右折し、三枚目の写真のようにまっすぐな道を東へ向かう。その先が合羽坂上である。

尾張屋板には、安養寺の上(東)に市谷谷町があり、そこに短い道が見え、東へ続く道につながっているが、その短い道が念仏坂で、東へ合羽坂へと至る道がこの道と思われる。 やがて外苑東通りの広い通りに出るが、ここを横断して合羽坂上から撮ったのが四枚目の写真である。

合羽坂下 合羽坂下 津の守坂下 津の守坂上 合羽坂を下り、坂下から撮ったのが一枚目の写真である。二枚目は坂下の埋め込みで、ここに石でできた河童の頭が埋め込まれているが、合羽坂には河童由来説があるから、不思議ではない。

坂下で靖国通りを横断し、ガソリンスタンドのところを右折し、南へ向かうと、三枚目の写真のように津の守坂の坂下である。四枚目は坂上から撮った。

ところで、永井荷風の日記「断腸亭日乗」大正六年(1917)10月24日に次の記述がある。

「十月廿四日。両三日腹具合大に好し。午後家を出で紀の国坂を下り豊川稲荷に賽す。」

当時、荷風はまだ余丁町に住んでいて(以前の記事参照)、この日、腹具合も好かったからか、余丁町の自宅から赤坂の豊川稲荷まで歩いて行ったようであるが、その道順が気になるところである。安養寺坂を下ったことは確実と思われるが、その先は不明である。今回の念仏坂→合羽坂→津の守坂もありえるが、暗闇坂(尾張屋板にも見える)またはその東の新坂を上り、現在の新宿通りに出た可能性が高いような気がする。

円通寺坂上 円通寺坂下 東福院坂下 東福院坂下 津の守坂上を直進したところの交差点で新宿通りを横断すると、一枚目の写真のように、円通寺坂の坂上である。坂上側がちょっと急で、ほぼまっすぐに下っている。二枚目の写真は坂下の標柱のところから撮ったものである。この通りは坂下の先で左に大きくカーブし、次に右に大きくカーブし下り坂になっているが、尾張屋板を見ると、円通寺前の道は右折する道のみで、現在の道筋はない。明治地図(明治四十年)もそうであるから、比較的最近にできたものである。このため、上記の荷風が通った道ではないと思われる。

上記の道を下り、ちょっと歩き、左折すると、東福院坂(天王坂)の坂下である。三枚目の写真のようにかなりの勾配でまっすぐに上っている。尾張屋板には、東福院の前の道に坂マーク(多数本の横棒)があり、この坂と思われる。四枚目の写真は坂上からであるが、坂下を直進すると須賀神社の石段の下に至る。
(続く)

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「嘉永・慶応 江戸切絵図(尾張屋清七板)」(人文社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図集 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
「古地図・現代図で歩く明治大正東京散歩」(人文社)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする