何日か経ちますが他に書くものが見当たらないので感想を書いてみます。
最終回にしてはぎっしりと中身の詰まった終わり方でした。が、一言で言うと、どうしても気持ち悪さが拭えません。
明智が解き放してあげたマリアは今まで押し殺していたものが放たれ、それまでの自分から自由になり、こともあろうに殺人鬼として生まれ変わりました。
そしてカルトの主催者のようになって世の中に不満を持つ人を操って殺人集団を作り上げます。
りんご、れいぞう子、シェフはそのメンバーで上手く連携し人を殺人に誘導します。
今回はマリアファミリーは大臣や総理を招いた和菓子の選定会でトリカブトの毒を入れた和菓子を作り会場に潜入します。
どの和菓子に毒を入れたか、明智は推理します。
緑色の梅の菓子かと思いきや、桔梗のピンク色のお菓子でした。外務大臣はそれを食べて亡くなります。
マリアたちは、無差別殺人を狙ったテロリスト集団になってしまいました。
しかしそんな中でもマリアは明智が食べないようにと、明智の家紋である桔梗の菓子に毒を入れたのでした。
そんなこんなで、明智はいちごと共に最後の晩餐席に招かれます。
殺されると分かってるのにどうして逃げないのか?大人しく席に着いている二人の心理が分かりません。
明智の本心はマリアが好きなのか、それともいちごなのか?
いちごは晩餐に出された煮込み肉を前に文句を言い出します。
シェフのくせに毒入りではないとか言うなんて情けない、食べ物で人の気持ちを明るくするのがシェフの仕事ではないのかと叫びます。
そんないちごにマリアはトリカブトの毒を入れた注射を打ちます。いちごは気を失い、明智は泣き叫びます。
自分にとって支えだったいちごを心の底から惜しんで悲しみます。
しかしそこからがマリアの独壇場です。「見なさい!これが絶望よ!」と人の絶望を喜ぶのです。
明智と自分は絶望によって結ばれるのだと。自分が一番キライなのは「希望」だと言い張ります。
明智は「パンドラの箱を開けて色んなものが解放された。でも箱の中にたった一つ残されたものがある。それは希望だ」
と言うと、マリアは愕然とします。
テロリストを放ってはおけません。警視庁が家を包囲しています。
やがて警部が出て来てアジテーションし、マリアは一気に刃物を持って襲いかかります。他の警察官は何をしているのやら。
しかし、あの新米刑事がマリアの足を撃ちます。(ここで初めてこの人の存在意義が)
そしてマリアが更に刃物で襲おうとした時に、新米刑事が拳銃を撃ち、マリアの前に飛び出して銃弾を受けたのがシェフでした。
シェフは「デザートがまだある。苺のムース」とふらつきながら歩いて行き倒れます。
とか何とかしているうちに、マリアは断崖絶壁に佇んでいます。そこへ向かったのは明智。
マリアは言います。
「前回ここから飛び降りた時に死んでもかまわないと思った。でも神様が助けてくれた」
「もう一度神様が奇跡を起こしてくれたら、私を愛してくれる?」と囁きます。
警察が駆けつけた時に残っていたのは崖の上の明智一人でした。
マリアは自分から身を投げたのか?それとも明智が突き落としたのか?
それは誰にも分かりません。
警部は「自ら飛び降りたことにして上げよう」的な事を言います。
いちごは「明智さんがマリアを突き落とした」と呟きます。
明智はおそらくこんな風になったマリアへの責任を自分で取ったのでしょう。
(突き落としたのだろうと)
最後のシーン。
明智はいちごに「探偵はもう辞める」と宣言します。
それはマリアのような人間を自分で作ってしまったことのけじめでしょう。
その後の話として、海の中に沈んで行ったマリアの夢、いちごが通行人をマリアに見間違えるトラウマ、
マリアの影響を受け継いでしまったココの不気味な活動などが紹介され、最後まで目を惹きつけられました。
緻密に組み立てられた耽美的な物語でした。
が、私が受け付けなかったのは、「自分が解放されたのを人のせいにし、その人と絶望を共有して破滅の世界へ向かう」
とか「他人を殺人に誘導する、それを見て喜ぶ快楽殺人」
といった不健康で悪趣味なものが主題だったからでしょうか。
そういうのを楽しめればいいんですけれどね…私は幼いのかもしれません。
全般に役者さんが熱演していました。
風花さんの元気良さ、武田さんの撃たれてから死ぬまでの演技や小池さんのミステリアスさは素晴らしかったです。
まぁしかし女流作家というものは想像の上を行くものを書くんですね。驚きました。