昨日「思い出のマーニー」を観に行ってきたので感想を書いておきます。
とても不思議な作品でした。
メンタルのバランスを失っている女の子が夏休みを利用して、叔母さんの家へ行く。
そこで土地の人々との交流があるものの、なかなかうまくいきません。杏奈は散歩の途中、ふと目にしたお屋敷に懐かしさを感じます。
そして、入り江の向こう、湿地帯の先にある古いお屋敷へ誘われるように向かいます‥。
次々と起こることが現実なのか幻想なのか、はっきりと線引きされていません。
ある時お屋敷を杏奈かのぞき込むと、誰もいない廃屋だったり、ある時は大勢のお金持ち風の人々が集うパーティだったりします。
それら時間の整合性が全くないのですが、そんな事はお構いなしに、見る方はどんどん引き込まれていきます。
特に、マーニーの可愛らしいことといったら!
優しくほほえんで杏奈をのぞき込む仕草、一緒に踊る姿、どれも清純で可愛らしいです。
でも段々歯車が狂っていきます。
サイロのシーンがクライマックスでした。雷がとどろき雨が叩きつける。マーニーは誰か男の人の名を呼び続ける。
このシーンは見事だと思いました。本当にアニメの大御所でなければ描くことが出来ない描写、大迫力でした。
そしてある時、お屋敷は改装工事が進んでいました。
工事のさなかから別の家族が住むようになります。
新しい住人のさやかちゃんは杏奈にとても親切で、机にあった日記から色々過去を解き明かすヒントをくれるのです。
この子の性格が無邪気でのびのびしていて、暗い話に明るさを添えていました。
後半にかけてマーニーが誰なのか、その一生を知る人の話で、杏奈は全てを知ることになります。
謎が解けて理解した観客が「では今までの事は何だったの?」と、頭を整理する前に、映画は終わってしまいました。
北海道の田舎も、夏休みのお祭りも、叔母さん夫婦も、田舎の子供も、みんながどこかで見たことのある風景です。
一つ一つのエピソードがコンパクトにまとまってて、共感を呼び起こします。
描き方が細かくてきれいで、いつのまにかどっぷりと世界に浸ってしまいます。
湿地帯というのは、波が引いたり満ちたりする「現実と過去の境目」なんでしょうね。
原作が英国の児童文学というから、道具立てが文学的です。象徴的に作られているのだと思います。
とにかくグタグタ考えずに、映画の世界に身を任せてみるといいと思います。
これは賛否両論別れる作品でしょうが、私は嫌いではなかったです。
杏奈には感上移入出来なかったけど、マーニーの悲劇には共感しました。
エンドロールが流れてからも、観客が殆ど誰も席を立たなかったんですよね。
暫くぼーっとこの世界に浸っていたいと、皆そう思ってたんでしょうか。