２０２０年１月２４日公開 スペイン・ベルギー・フランス・イギリス・ポルトガル合作 １３３分 Ｇ
仕事への情熱を失っていた若手CM監督のトビー（アダム・ドライバー）はスペインの田舎での撮影中、謎めいた男からDVDを渡される。それはトビーが10年前の学生時代に監督し、賞にも輝いた「ドン・キホーテを殺した男」だった。映画の舞台となった村が近くにあることを知ったトビーは、現地を訪れるが、ドン・キホーテを演じた靴職人の老人ハビエル（ジョナサン・プライス）が自分を本物の騎士だと信じ込むなど、村の人々はトビーの映画のせいですっかり変わり果てていた。トビーをドン・キホーテの忠実な従者サンチョだと思い込んだハビエルは、トビーを無理やり連れ出し、冒険の旅へ出るが……。（映画.comより）
テリー・ギリアムが映画化を試みるも、何度も製作中止の憂き目に遭い頓挫してきた企画が、構想30年を経てやっと完成。ジョニー・デップ主演、ヴァネッサ・パラディ、ジャン・ロシュフォール共演の『ロスト・イン・ラ・マンチャ』では、超大作が数々のアクシデントに見舞われて頓挫する様が描かれましたが、ジョニーファンとしては、本編も彼が演じて欲しかった・・・とはいえ、もう２０年も前だし、私生活でトラブルが続いているから無理だったんだろうな～～
撮影に行き詰まりを感じていたトビーは、ボス（ステラン・スカルスガルド）主催の夕食会でジプシーからドン・キホーテを題材とした自分の卒業制作映画を売りつけられます。その夜ボスの妻ジャッキ（オルガ・キュリレンコ）の部屋でこの映画を観ていたら、出張の筈のボスが急に戻ってきて部屋を逃げ出すの。
ボス不在中にその妻とアバンチュールっていかにも業界的？
翌朝、この映画の舞台が近くの村だったことを思いだして訪ねてみると、ハビエルは自分がドン・キホーテだと思い込み続けていることや、ヒロイン役のアンジェリカ（ジョアナ・リベイロ）が役者を夢見て村を出て行ったことを知らされ驚きます。村はずれで監禁されていたハビエルを訪ねたトビーは、彼をサンチョ・パンサだと信じるハビエルともみ合いになり、その騒動の最中に失火が起きて撮影現場へ逃げ帰ります。そこへ事情聴取にやってきた警官に、前夜のジャッキの部屋での一幕ででっちあげられた泥棒として逮捕されていたジプシーと共に連行されるのですが、
そこへ愛馬ロシナンテに跨ったドン・キホーテ＝ハビエルが登場、そのドタバタで警官の一人が誤射で死亡して警察の追跡を恐れたトビーはドン・キホーテと旅することになるという
あの有名な一幕、風車に挑むドン・キホーテのエピソードもばっちり入ってました怪我を負ったドンを担ぎ込んだのがムスリムの村だったことから、イスラム過激派のテロリストの巣窟と思い込んだトビーが見たのが、宗教裁判を連想した異教徒取り締まりの夢というのもぶっ飛んでます。翌朝、不法移民取り締まりに現れた警官を見て、彼らは村を離れ次の旅に。その途中でスペインの金貨を見つけたトビーはそれを隠そうとして転落し、アンジェリカと再会するのですが、彼女はウォッカ王ミシュキン（ロシア人の設定）の情婦となっていました。ハビエルを連れ戻そうと村人が旅芸人を装って待ち伏せしている場面があったり、ミシュキンの城で演じられた劇など、現実と空想の境のない奇想天外なストーリーが展開していきます。
アンジェリカを救おうとしたトビーですが、くだんのジプシーやジャッキが邪魔をします。ジャッキと揉み合っているのを目撃したドンが仲裁に入ろうとして誤って転落したところで、観ている側も現実に引き戻されるんですね。死に際、ドンは自らのサーベルをトビーに託します。後に、この瞬間、ドンの魂がトビーに引き継がれたことがわかるのです。ハビエルの亡骸を故郷の村へ葬るために旅を始めたトビーとアンジェリカですが、途中、トビーが風車を巨人と思い込んで戦いを始めるの 彼が新たなドン・キホーテになったと悟ったアンジェリカは、彼女自らサンチョになると決めて旅を続けるのでした。
いやいや、現実としてはありえない、でも因果応報というか、まさに「ドン・キホーテ」の呪いというか・・・一筋縄では解釈できない不思議な物語になっていました。
空想の「ドン・キホーテ」の世界は、いかにもギリアム監督らしいカラフルで奇抜で独創的な空間でした
