杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

幸せへのまわり道

2021年03月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年8月28日公開 アメリカ 109分 G

ロイド・ヴォ―ゲル(マシュー・リス)は、雑誌記者として華々しいキャリアを積んできた。今は愛する妻と生まれたばかりの子どもと暮らしている。ある日、ロイドは姉の結婚式に招待され、式場で絶縁していた父・ジェリー(クリス・クーパー)と再会を果たす。ロイドは、家庭を顧みず自分たち姉弟を捨てた父を許せずにいた。些細なことがきっかけで手を上げてしまうなど、心の内にわだかまりを抱えていた。それから数日後、ロイドは編集部の依頼で、子ども向け番組の司会者として人気者だったフレッド・ロジャース(トム・ハンクス)に関する記事を書くため、彼の仕事場を訪ねる。フレッドは、ひと目見ただけなのに、ロイドが抱えている家族の問題や心の葛藤を感じとる。一方、ロイドもフレッドの不思議な人柄に惹かれていく。やがて2人は、取材の名目を越えて、公私共に交流を深めていくのだった……。(公式HPより)

 

フレッド・ロジャースはテレビ番組の司会者で、生きる上で必要な道徳を伝える内容とフレッド自身のソフトな口調や優しい人柄で、国民的番組として人気を博した子ども向け番組「Mister Rogers' Neighborhood」(1968年から2001年にわたって放送)が有名らしい。(もちろん見たことないですが

映画の原作となったのは、雑誌『エスクァイア』に掲載された記事「Can You Say...Hero?」で、寄稿した雑誌記者・ロイド・ヴォーゲルと大物司会者フレッドの“数奇な友情”が描かれています。

ロイドは、家庭を顧みずに自分たち母子を捨てた父に対して憎悪の感情を持ち、許せずに生きてきました。その矛先は彼の書く記事にも現れていて、仕事に対する高い評価の影で人情が薄い、冷たいという印象を持たれているようです。そんなロイドが、子供向け番組の人気司会者の取材を押し付けられます。心がささくれ立っている人間にとって、日だまりのような優しさを体現しているかのようなフレッドは苦手なタイプでしょう。渋々フレッドと対面したロイドに、フレッドは自分のことではなくロイド自身について色々質問します。戸惑いながらも不思議に気持ちが和んでいくロイド。やがて2人は公私にわたって交流を深めるようになりますが・・・。

自分勝手に生きてきた父親が突然和解を求めて接近してきたのは、自分の死が近いことを本能的に察したのか、それとも年老いて性格が丸くなったせいか・・どちらにしても突然の父の変化を素直に受け入れることができず意固地になるロイドの気持ちは何となくわかるような 妻が父や彼の現在のパートナーをすぐに受け入れるのもロイドには理解できないのね。妻の側に立ってみれば、孫を通じて父子の関係を修復して欲しい気持ちがあったのかもと思いますが。 その父親が倒れたことで、ロイドは母親の亡くなった時の状況を思い出し、死に対する恐怖と共に一層父への怒りを募らせます。その姿はまるで小さな子供が自分の欲しいものが与えられずに癇癪を起しているかのようにも見えました。

そんなロイドにフレッドは持ち前の温和な態度で接し、彼の心が求めているものに彼自身が気付くよう誘います。フレッドの物事をポジティブに捉えようとする姿勢が、徐々にロイドの頑なな心をほぐしていく様が丁寧に描かれます。

ではフレッドは、完璧な善人なのか?彼も人の子ですから負の感情も当然あるはずです。ラストシーンで、番組収録が終わったスタジオの中でピアノを楽し気に弾くフレッドの姿が映し出されますが、次の瞬間低音部の鍵盤を叩きつけるように弾くんですね。このわずかなシーンでフレッドのストレスが見事に表現されていました。こういう役を演じさせたらトム・ハンクスの右に出るものはいないかもね~~

正直、自分がロイドだったら、フレッドを受け入れただろうかとも思ってしまいました。裏返せば自分が歪んでいる、天邪鬼とも言えますが

心を解き放って素直な気持ちで観れば、きっと得るものは大きいのかも 

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