杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

片見里なまぐさグッジョブ

2024年01月26日 | 
小野寺史宜(著) 幻冬舎(発行)

俺は、なまぐさといえども、坊主だ。殺生なしで、仕返ししてやる! 「あの男」のせいで自殺してしまったかつてのマドンナのために、へなちょこ男子が立ち上がる!

地方の中途半端な規模の街・片見里。ここで200年の歴史を刻む善徳寺の住職・徳弥・29歳。父の急逝で若くして、急遽、住職となってしまった、合コン好きの「なまぐさ」坊主だ。彼の元を、小学6年生のとき一瞬だけクラスメイトだった、フリーターの一時が東京から訪ねてきた。善徳寺に預けっぱなしの父の遺骨を引き取るためだ。無理矢理クラス会に出席させられた一時は、かつての「マドンナ」美和の自殺を知る。どうやらその原因は、元ガキ大将、今や県会議員に立候補しようとしている丈章のひどい「謀略」にあるようだ。徳弥と一時は、美人で優しかった美和のために、「仕返し」を企てる。「俺は坊主だ、殺生はしない。でもあいつを痛い目に遭わせてやる」熱くてやんちゃな徳弥は、クールな草食男子一時、美和の妹・多美と策略を練るのだが、どうやら敵は一枚上手で……!? 心優しき人たちの、爽快でちょっと泣ける「仕返し物語」。(作品紹介より)


「片見里荒川コネクション」で知って早速読んでみました。
徳弥と一時の友情の始まりが描かれています。

谷田一時は、小さい頃に父を亡くしてから、母に連れられて各地を転々とし、小学校で5回、中学で3回の転校を経験しています。男性遍歴を繰り返す母と音信不通の現在ですが、その母と小学校卒業前の4ヶ月だけ滞在した片見里の寺に預けたままの父親の遺骨を引き取りに17年ぶりに片見里を訪れますが、人生に絶望している彼は、遺骨をどこか林の中に埋めて自分も消えようと考えていたようです。

ところがそんな一時を、寺の現住職となっていた当時の同級生・村岡徳弥が歓待して中学の同窓会に誘います。一時は中学の時はもう転居していますが、小さな町故中学も小学校からのメンバーだからと無理矢理引っ張り出したの。😁 
そこで、一時が元同級生の堀川丈章と彼の腰ぎんちゃくの後藤の不審な会話を耳にしたことで、彼らの復讐作戦が始まるのです。

小学校のクラスで人気のあった倉内美和は、一時が盗難事件の犯人と疑われた際に、きっぱりと「あなたは犯人ではない」と彼に言ってくれた唯一の子でした。優しかった彼女が3年前に自殺したと知った一時は、堀川らの「結果オーライの手ちがい・写真・保険・脅しの材料」という会話が彼女の死に関係していると気付きます。

この堀川という男がまた実にサイテーな人間なのね。😡 市会議員選挙に出馬を目論んでいる彼は、自分の益にならない人間はバッサリ切り捨てる利己的な奴です。美和と交際しながら二股も平気で、美和の父親がリストラされた途端彼女を捨てた上に、妊娠した彼女が産むつもりだと知ると、別れさせ屋を雇った事実を彼女に突きつけ、さらに卑劣な手段で入手した画像で脅して自殺に追い込んでいたのです。

一時が徳弥に話したことで、美和の妹の多美も加わり、まずは事実かどうかの確認をすることになります。美和の友人だった乙恵や、堀川の同僚だった関根敏代の協力を得て、堀川の悪行が明らかになると、どうやって復讐するか頭を悩ませることに。
何しろ直接手を下したわけではないし、そもそも殺人が復讐の目的でもない。
彼らの考えたリベンジ作戦は生ぬるいとも思えますが、プライドの高い堀川にとっては致命的な屈辱であり脅しにもなりうるのだから、結果上々というわけですね。

小学校時代の一時の「棒高跳び」の逸話は「片見里荒川コネクション」にも引き継がれていましたね😁 今作ではそれが堀川家を脱する際に使われ、さらに堀川に気付かれる結果にもなっていました。まさに犯罪スレスレ・・いや、犯罪だし😅 

消防士の哲蔵さんと関根敏代が「その筋」の若頭とお嬢を演じて後藤の口を黙らせるエピソードが愉快で、小学校での盗難事件の犯人が明かされるおまけもありました。ここでも堀川の卑劣な人間性が明かされます😠 

基本的に徳弥の大らかな性格が強調され、コミカルに進んでいくので楽しく読めます。後に結婚する彼と多美のなれそめにもなっていました。
徳弥は一時の音信不通の母親の居所を探して彼に教えさり気なく肩を押します。なまぐさ合コン坊主であっても友情に篤い男です。
一時が自分の道を見つけるきっかけにもなっているようです。😀 
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 劇場版 ソードアート・オン... | トップ | 丘の上の本屋さん »
最新の画像もっと見る

」カテゴリの最新記事