杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ジュディ 虹の彼方に

2020年09月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2020年3月6日公開 イギリス 118分

1968年。かつてミュージカル映画の大スターとしてハリウッドに君臨したジュディ(レニー・ゼルウィガー)は、度重なる遅刻や無断欠勤によって映画出演のオファーが途絶え、巡業ショーで生計を立てる日々を送っていた。住む家もなく借金も膨らむばかりの彼女は、幼い娘や息子との幸せな生活のため、起死回生をかけてロンドン公演へと旅立つ。(映画.comより)

 

「オズの魔法使」で知られるミュージカル女優ジュディ・ガーランドが、47歳で急逝する半年前の1968年冬に行ったロンドン公演の日々を描いた伝記ドラマです。ジュディを演じたレニー・ゼルウィガーが、第92回アカデミー賞、ゴールデングローブ賞など数多くの映画賞で主演女優賞を受賞しています。

映画『オズの魔法使い』でドロシーを演じたということは知っていましたが、幼い頃から食べたいものも我慢させられスレンダーな体型を維持し、眠らず働けるよう薬漬けにされていたなど、映画会社や母親から様々なハラスメントを受け続けていたことを、この作品で初めて知りました。 今なら児童虐待で間違いなく訴えられますね~~ ドロシー役で脚光を浴びてハリウッドのスターダムへと駆け上がった彼女ですが、次第に薬物依存や神経症に苦しめられるようになり、仕事にも影響が出ます。数度の結婚も彼女にとっての安らぎとはならなかったようです。

度重なる遅刻や無断欠勤で映画出演のオファーも途絶え、幼い娘や息子を連れての巡業ショーで生計を立てるも、ホテルの宿泊費も満足に払えず追い出されるほどの苦境に陥ったジュディは、やむなく別れた夫のシド(ルーファス・シーウェル)に子供たちを預けて、今なお人気が健在な英国・ロンドンでクラブに出演することにします。子供たちを深く愛していた彼女にとって、遠いロンドンに単身出かけるのは身を切られる辛さがありましたが、それも子供と暮らすための経済的条件をクリアするためだったのです。

初日、プレッシャーから「歌えない」と逃げ出そうとするジュディでしたが、いざ舞台に立つと圧巻のパフォーマンスで観客を魅了します。レネーは厳しいレッスンを受けて全曲自ら歌っているのだとか。レネーだとわかって観ても「え?本当にレネーなの??」と思ってしまうほど役そのものになりきってしまうから凄い!!

ショーは大評判となり、ミッキー(フィン・ウィットロック)という新しい恋人もできて、明るい未来が待っているかに見えましたが、離れている間に子供たちの気持ちは離れていき、舞台での失態がもとで、ミッキーとも破局を迎えてしまいます。ちょっとした言葉の掛け違いやすれ違いがどんどん望まぬ方向に彼女を追い詰めていきます。

ロンドンのファンのゲイ・カップルとの交流のエピソードが良い感じで挿入されていたり、最初は反発もあった世話係のロザリン・ワイルダー(ジェシー・バックリー)やバンマスと一種の友情のようなものが生まれたりと、感情的で我儘にも見えるジュディの別の一面もしっかり描かれていました。

結局、興行主のバーナード(マイケル・ガンボン)からも匙を投げられ、クビになってしまうのですが、最後に歌った「オーバー・ザ・レインボー」の途中で歌えなくなってしまったジュディを助けるかのように、ゲイ・カップルが立ち上がって続きを歌い始めるの。彼女に懐疑的で冷ややかな視線を向けていた人たちも一緒に歌い始めます。この瞬間、ジュディは自分と観客との間に生まれる「愛」を信じることができたのですね。そして、観客の方も彼女の類まれな才能をその目で耳で実感することになったのでした。 この公演の半年後、ジュディは薬の過剰摂取で亡くなるのですが、この夜だけは、確かに未来を信じていたのだと思いました。

 

 

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