杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

そして、バトンは渡された

2022年04月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年10月29日公開 137分 G

血の繋がらない親に育てられ、4回も苗字が変わった森宮優子(永野芽郁)は、わけあって料理上手な義理の父親、森宮さん(田中圭)と2人暮らし。今は卒業式に向けピアノを猛特訓中。将来のこと、恋のこと、友達のこと、うまくいかないことばかり…。
一方、梨花(石原さとみ)は、何度も夫を替えながら自由奔放に生きている魔性の女。泣き虫な娘のみぃたん(稲垣来泉)に目いっぱい愛情を注いで暮らしているようだったが、ある日突然、愛娘を残して姿を消してしまった。
そして、優子の元に届いた一通の手紙をきっかけに、まったく別々の物語が引き寄せられるように交差していく。「優子ちゃん、実はさ…。」森宮さんもまた優子に隠していた秘密があった。父が隠していたことは? 梨花はなぜ消えたのか? 親たちがついた〈命をかけた嘘〉〈知ってはいけない秘密〉とは一体何なのか。
2つの家族がつながり、やがて紐解かれる《命をかけた嘘と秘密》。物語がクライマックスを迎え、タイトルの本当の意味を知ったとき、極上の驚きと最大の感動がとめどなく押し寄せる─。(公式HPより)

 

第16回本屋大賞受賞の瀬尾まいこの同名小説の映画化です。監督は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の前田哲。

予約していた原作本の方が数日早く手元に届いたので、どちらを先にしようか迷ったけれど、映画を先にしました。

みぃたんと梨花、優子と森宮さん。前半、別々に進んでいく二つの物語は、やがて一つに合わさります。これがまず最初のサプライズ。

梨花という女性は自分の欲求に忠実といえば聞こえが良いけれど、次々相手を変える魔性の女として描かれます。最初の夫の水戸さん(大森南朋)が勝手に会社を辞めて自分の夢を叶えるためにブラジル行きを決めたことで結婚生活は破綻しますが、その際血の繋がらない娘であるみぃたんを引き取るんですね。本当に自分勝手な人なら、さっさと身軽に飛び出していきそうだけどという疑問が浮かびます。その前に、三高を目指していた彼女が平凡な男性(しかも子連れ)を伴侶に選んだのも不思議でしたが。 

みぃたんと2人の暮らしは経済的に豊かとはいえませんが、本当の母娘のように仲睦まじく楽し気です。お父さんに手紙を書いても返事がないこともあり、みぃたんはママが一番の存在です。でもみぃたんが「ピアノを習いたい」と言ったことで、梨花はお金持ちの泉が原さん(市村正親)と二度目の結婚をします。この時点では娘の願いを叶えるためなのか、自分が楽をしたいためなのか半信半疑で見ていました。ところが、裕福な環境に飽き足らず、彼女は再びみぃたんを連れて出て行き、今度は高校の同級生だった森宮さんと三度目の結婚をするのです。式場で初めてみぃたんを紹介するシーンで二つの物語が重なる仕掛けです。みぃたんとはみぃみぃと泣き虫だった彼女の愛称で、本名は優子なんですね

高校生になった優子は、何故か森宮さんと2人暮らし。梨花は彼女を置いて家を出て行っているようです。何だか托卵しているようで梨花の印象最悪! 義父とはいえ、森宮さんはとても素晴らしい娘思いの父親で、優子も森宮さんを慕っています。どこか本心を隠して常に笑顔でいる彼女は学校ではちょっと浮いていましたが、卒業イベントの合唱コンクールの伴奏者に選ばれたことがきっかけで、ピアノの上手な早瀬くん(岡田健史)を意識するようになったり、友人ができたりします。 卒業の日、伴奏をする優子とそれを見守る森宮さんの間に流れる親子の愛情がしみじみと伝わってきました。

やがて、大人になった優子は早瀬くんとの結婚を認めてもらおうとしますが、彼がピアノの道を捨て料理人になろうとしていると知った森宮さんに反対されます。もちろん息子をピアニストにしたい彼の母親(戸田菜穂)も大反対。親の目線でみれば、母の強制から逃れたいだけに見えてしまう早瀬くんは何だか頼りないのよね

泉が原さんには祝福してもらえましたが、そんな時、梨花から手紙と優子の実父・水戸さんが娘に送った手紙の束が送られてきます。森宮さんに相談して水戸さんに会いに行った優子は、水戸さんにも梨花から優子が書いた手紙の束が届けられていたことを知ります。梨花はみぃたんを取られたくない一心で父娘の手紙を隠していたのです。子供の頃なら許せなかった梨花の行為ですが、彼女の深い愛情を身をもって知る優子は今こそ梨花に会いたいと願います。しかし彼女に告げられたのは・・・

梨花が何故優子を置いて家を出たのか。何故彼女は優子のことをそれほどまでに深く愛していたのか。それが明かされるクライマックスで、梨花のイメージが反転します。彼女が本当に求めていたのは、自ら得られなかった命の存在と、そのためなら自らを犠牲にすることを厭わない強い思いだったという・・。

梨花の夫になった三人の男性それぞれもとても「出来た」人たちばかりで、ちょっと嘘くさいなという気もしますが、だからこそ優子はたっぷりの愛情に包まれて育ったわけですね

早瀬くんがピアノで身を立てる決意をして、皆に祝福されて結婚式を迎えます。森宮さんは早瀬くんに優子という幸せの「バトン」を渡すのでした。

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