杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

2024年01月29日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2023年7月7日公開 ウクライナ=ポーランド 122分 G

1939年1月、ポーランドのスタニスワヴフ(現ウクライナ、イヴァーノ=フランキーウシク)にあるユダヤ人が住む母屋に店子としてウクライナ人とポーランド人の家族が引越ししてくる。ウクライナ人の娘ヤロスラワは音楽家の両親の影響を受け歌が得意で、特にウクライナの民謡「シェドリック」=「キャロル・オブ・ザ・ベル」は、歌うと幸せが訪れると信じ、大事な場面でその歌を披露する。第2次大戦開戦後、ソ連による侵攻、ナチス・ドイツによる侵攻、再度ソ連によって占領される。ポーランド人とユダヤ人の両親は迫害によって離され娘たちが残される。ユダヤ人の娘ディナ、ポーランド人の娘テレサの3人の娘たちをウクライナ人の母であり歌の先生でもあるソフィアが必至に守り通して生きていく。
 戦況は悪化し、子どもたちを連行しようとソ連軍が家探しを始めるが、ソフィアが機転を利かせて最悪の事態は免れる。ナチスによる粛清によってウクライナ人の父の手に及び処刑されてしまう。残されたソフィアは、ウクライナ人である自分の娘、ポーランド人の娘、ユダヤ人の娘に加えて「この子には罪はない」と言ってドイツ人の息子を匿うことになるのだった…。(公式HPより)



ウクライナ民謡をもとに生まれたクリスマスソング「キャロル・オブ・ザ・ベル」をモチーフに、ウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の3家族が戦火に翻弄されながらも子どもたちを守り抜こうとする姿を描いた戦争ドラマ。
監督は、ウクライナ出身のオレシア・モルグレッツ=イサイェンコ。(映画.comより)
映画自体は2022年2月24日以前に撮られているので、今回の戦争に対する政治的プロパガンダっではないようですが、作品中のソ連兵の無慈悲で残虐な描写はつい現実に重ねてしまいそうです。😱 

1939年。ユダヤ人一家が暮らすアパートにウクライナ人とポーランド人の家族が引っ越してくるところから物語が始まります。
ウクライナ人のソフィアは歌の先生、夫のミハイロは演奏家で、娘のヤロスラワも歌が得意で皆が幸せになる歌”キャロル・オブ・ザ・ベル"が得意です。彼女の透き通るような歌声は本当に素晴らしかった✨
初めはぎくしゃくしていた3家族も、ヤロスラワの歌がきっかけで次第に打ち解けていきます。

戦争が勃発し、ソ連軍が侵攻してきたある日、ソ連兵によりポーランド人のワンダが連行されます。(軍人の夫は既に・・・と推察されます。)たまたまソフィアの家で眠っていた娘のテレサは、ソフィアが自分の娘だと嘘をついて守られます。ワンダが隠したテレサの出生証明書を見つけ、以後は自分の姪と偽ることになるの。

1941年。ナチスが台頭してくるとユダヤ人一家は出頭を命じられます。
ミハイロから「出頭したユダヤ人のバンドマンは帰ってきていない」と聞かされた夫婦は、娘のディナとタリヤを預けて夫婦で出頭し帰ってきませんでした。

ドイツ兵がやってくると、ユダヤ人のディナとタリヤは部屋に据えられた時計の裏の棚に隠れて息を潜めます。ミハイロは棚を取り除いて空間を広げてやります。
ソフィアは4人の子供たちに家の外に出ることを禁じますが、幼いタリヤが「外で遊びたい」と部屋を出てしまいます。タリヤを探しに出たヤロスラワ がドイツ兵に見つかって部屋に入って来られる場面では、ドアの影で息を潜めるディナに心臓バクバクです。無事に切り抜けたものの、タリヤがネズミに噛まれ、その傷がもとで亡くなってしまいます。夜間外出禁止令の出ている中、医者の家の扉を叩いて往診を求めるミハイロでしたが、すげなく追い返され、帰った時にはタリヤは・・・彼がレジスタンスに身を投じたのはこの頃からだったのかな?

アパートにはドイツ人の夫婦が越してきます。ドイツ人一家に『キャロル・オブ・ザ・ベル』を歌って「殺さないで」と頼むヤロスラワ。いや~それはダメだろ!と冷や冷やしましたが、ウクライナ語を解しなかったため事なきを得ます。
ドイツ人から貰ったお菓子を投げ捨てきつく叱るソフィアでしたが、子供たちはそのお菓子を拾って食べちゃうの。甘いお菓子なんて久しぶりだろうし何と言っても子どもだものね~。ヤロスラワの歌の上手さに感心したドイツ人の妻は息子のハインリヒの歌の練習をソフィアに頼みます。ドイツ人なんて大嫌いだけど背に腹は代えられないので引き受けるものの夫に愚痴るソフィア😁 

ある日、記念日を祝うため久しぶりに劇場に出かけたソフィアとミハイロでしたが、突然ドイツ兵が現れて女性は外に出るように言われ、男性は皆連行されます。翌朝、ミハイロは政治犯として処刑(射殺)されてしまいます。

処刑を目撃したソフィアは家に戻ると服を脱ぎ、子供たちのも脱がせて洗濯をします。何かしていないとどうにかなってしまいそうなソフィアの悲しさ・憤りが伝わってくるようでした。娘たちの存在が彼女の唯一の慰めになります。

再びソ連が侵攻してきて、ドイツは撤退します。
ドイツ人一家も逃げるようにアパートを立ち去るのですが、ボロボロになったハインリヒがソフィアの家のドアを叩きます。おそらく彼の両親は殺されてしまったのだと察したソフィアは彼も引き取ることにするのです。反対するディナに「子供に罪はない」と諭すソフィア。

町はまたまたソ連の支配下に置かれ、ソフィアは政治犯の妻として連行され子供たちは施設に入れられることになります。この時、逃げようとしたハインリヒは射殺されてしまうの。ソフィア自身も政治犯と決めつけられてシベリアに送られそこで亡くなったように描かれていました。

冒頭とこの場面の少し前に数十年後のNYが登場し、大人になったディナとテレサらしき女性が出て来るので娘たちは無事なんだなと安堵させられましたが、あれ?ヤロスラワは?

ソ連の施設に送られた3人でしたが、ヤロスラワは『キャロル・オブ・ザ・ベル』を歌ったことで別の施設に送られてしまいます。ディナとテレサは自由を与えられ(追放ともいう)ますが、それを伝える施設長?の無慈悲な酷薄さがたまらなく醜悪です。

ポーランド人のテレサは有名な歌手になっているようです。空港でディナと会い、2人でヤロスラワを待ち3人が再会して抱き合い、そこに子供時代の3人の姿がオーバーラップします。やっと彼女たちの中で戦争が終わったのだと感じられるラストでした。
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