杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男

2020年12月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2018年11月30日公開 アメリカ 104分 G

1843年、ロンドン。かつてはヒット作を連発していたチャールズ・ディケンズ(ダン・スティーブンス)も今やすっかり落ち目となり、経済的にも苦境に陥っていた。次回作での起死回生を目論むディケンズは、アイルランド人のメイド、タラ( アンナ・マーフィ)が子どもたちに語って聞かせるクリスマスの物語をヒントに新作の構想を練り始める。そして偶然出会った老人の“くだらん”という言葉にインスピレーションを得て、偏屈でケチな老実業家のスクルージ(クリストファー・プラマー)を主人公にクリスマスをテーマにした小説を書き始める。物語が進むにつれて、ディケンズは現実と幻想の境目がわからなくなり、小説の世界に入り込んでいき、スクルージと3人の幽霊との不思議な出会いを経て、心の奥にしまっていた子供の頃の記憶や実父(ジョナサン・プライス)との確執など、ディケンズ自身の問題と対峙していく。

 

イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの小説「クリスマス・キャロル」の誕生秘話を描いたファンタジードラマです。

小説は子供の頃に読んでいましたが、ディケンズが31歳の時に発表された作品だったのですね 映画の中の彼がけっこう若かったのにちょっと驚いたのですが、納得です。 

映画に登場する生い立ちはほぼ事実のようで、これにもびっくり 奥さんとの不仲もそうですが、映画では夫婦で歩み寄った感じになっていました。

チャールズの両親は金銭感覚に乏しかったようで、彼が12歳の時に借金の不払いで債務者監獄に送られるのですが、何故か彼だけ靴墨工場へ働きに出されるんですね。(母や他の兄弟たちは一緒に監獄で生活していたらしい)仕事もきつく、虐められたことがトラウマとなって彼を苦しめていました。原因を作った父を恨んでもいたのね 

彼はスクルージを強欲で冷血な人物として描きたかったのですが、一方で、彼にも温かみのある人間らしさをどこかで求めていたように見えました。映画ではスクルージとチャールズはコインの裏表のような関係として描かれています。物語が進むにつれ、彼は現実と小説世界の境界線が薄れていきます。完成させるためには自らの心の奥底を見つめる必要があり、それは痛みを伴うことだったのです。

かつて働かされた靴墨工場の廃屋に佇み、自らの過去と対峙し、それを克服した時、チャールズもまたスクルージのように周囲への思いやりを取り戻します。彼にとってこの小説は、ある種人生の分岐点だったのかもしれません。


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