杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

佐賀のがばいばあちゃん

2007年11月23日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2006年6月3日公開

島田洋七原作の小説がベストセラーになり映画化もされたのよね。
TV放映を待っていました。時期的に「ALWAYS」の続編公開中とあって、合間のCMはこればっかり。時代は更に遡るけれど、人情健在の郷愁が類似点。

戦後間もない広島。原爆症で父を早くに亡くした明広(鈴木祐真、池田晃信、池田壮麿の三人が演じ分けている)は、居酒屋で働く母(工藤夕貴)に育てられるが、子供の教育に悪いと、佐賀の実家に預けられる。更に貧乏な“ばあちゃん”の家で、最初は泣いてばかりいた明広だが、女手ひとつで7人の子供を育て上げ、貧乏だが、楽しく生きるがばい(すごい)ばあちゃん(吉行和子)のおかげで、逞しい少年へと成長していくのだった。


貧乏であることを悲しんだり卑下したりするのではなく、貧乏という状況をも楽しんでしまう明るさと強さを持ったがばいばあちゃんのお陰で、泣き虫の母ちゃん子だった明広が、徐々に逞しさを持つ少年に変わっていくのが観ていて楽しい。

母を恋しがる明広に「広島へ帰る汽車は冬は休みで来ない」とか「春は汽車の運転手が忙しいから動いてない」と煙に巻いたり、剣道や柔道などお金がかかる運動は「やめときな」と言って、お金のかからない「走ること」を勧めたりするばあちゃんと、それを素直に受け取る明広のやりとりが微笑ましかった。

学校の先生や医者、町の人も、彼らを温かい気持ちでみてくれている。
貧しいお弁当の中身を思い遣って、腹が痛いから梅干しと生姜(だけ)が入った明広の弁当と自らの豪華な弁当と交換してくれという先生たちの好意のエピソードや、マラソン大会に母が来てくれたことを明広と同じ位に喜んで泣いている担任の姿、川に流れてくるお供え物を頂いてしまう場面などはほのぼのとしたユーモアと共に描かれている。

怪我をして受診した際の治療費は要らないといった医者にはだが、治療費を払いに出かけたり、野球部の主将になったお祝いに、2千円台の最高級スパイクを一万円で買おうとしたり、彼女なりの生き方への拘りもみてとれる。

中学を卒業し、母の元に帰っていく日の明広に、素っ気無い態度を取っていたものの、「行くな~明広」と本音を叫ぶばあちゃんの胸中にじんときてしまった。

苛めっ子も、悪意や蔑みも出てこない、人の温かさのつまった作品でした。

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