月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

若松英輔さん「声の贈り物」に耳を澄ます

2020-07-15 23:55:00 | コロナ禍日記 2020
 
 


 

 あの時、あの時間。 5月24日(日曜日)

 

 朝9時に起きる。シャワーをあびて、体を目覚めさせ、白湯をのみながら本を読む。気持ちいい午前中。レースのカーテン越しに風がはいってきて、ベランダのハーブやオリーブ、バラなどを、ちろちろ揺らしている。自然は休んでいない。人がわからない小さな風でも気付けばそれは揺れているのだ。

 朝食には、ミルクティーを選び、アメリカンチェリー、イカリブランドのフィナンシェを。眠くてなにもする気になれなかったが本を読むと、頭がすっきりとしてきた。

 

 10時。Nが起き出してきて、中学時代の友人たちと「おいでよ、どうぶつの森」で通信をしている。みるように即され、一生懸命にみていた。「みんなの島を訪問するの。今みたいに暇じゃなきゃあ、できないけれど自分の価値観が出ていておもしろいよ」という。確かに、のめり込むほど創造の島である。

 

 パパさんにも朝食を用意した。

 ヴィラの周辺の木々を風が揺らし、夏の海岸で波の音をきいている心地になる。すずめに連れられて、尻尾だけ藍色の鳥がベランダへ飛んできてうれしそうに話をしていた。

 

 午後。買い出しに出かけるために車にのりこむが、慣れない後部座席でふりまわされたせいか、気分が悪くなり、まるまっていた。本当は篠山まで行く予定が、近くのイカリスーパーだけで買い物して、電気屋さんや、ホームセンターまでもつき合わずに、私だけ家におくりとどけられることになる。

 

 帰宅後。ホッと群から脱出した気持ち。ベッドに横になりながら、若松英輔さんの「声の贈り物」というネットラジオを聞く。

「うまくかけない、と悩むことはあまり意味がないんですね。登山をするため、山へのぼろうとして麓にいる。ただそれだけのことです。すでにうまくなるための過程、気にすることはありません」

「書くこと。読むことは呼吸のようなものですね。ぜひ詩を書いてください。そうすると深く、詩を読めるようになります。大事なのは、うまく書こうなどと思わないことです。うまく書こうとすれば、あなたの尊敬する、好きな詩人の真似をし、似たものを書くことにつながる場合が多い。人の真似をして書いても、こりゃ書かないほうがマシ。意味がないわけです。あなたしか書けないものを、あなたが書くから意味があるんです」

 

 心に深く入りこむ、若松さんの叙情的な話し方。気分がマシになってきた。

 

 7時。Nとパパさんが帰宅。

 


 

 先日。篠山で買ってきた実山椒の佃煮をつくろうとして、水に放ち、手できれいに洗って5分だけゆでた、独特の山々しい匂い。つーんと鼻にくるクサッとした辛さ。一口かじってみたら、うわっ舌にじーん。生きたパンチのある辛さだ。2時間アクだし。それからNとパパさんにひとつひとつ実山椒の実を枝からはずして、ざるに入れてもらった。プチプチ、指先のところで摘む。寝る前、冷蔵庫、冷凍庫用にわけて、入れよう。

 

晩ご飯はしようが焼き、サラダ、小松菜とあげのたいたん、生春巻き、お味噌汁。グラスビールも。

 

 夜。9時。三日月が私たちのほうをみている。湿った風をうけて、なわとびをし、ボール投げをした、Nとわたしで。

 これから初夏、夏へと近づくにつれ、夜風がだんだん気持ちよくなるのだ。 

11時半に就寝。

 



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