月の晩にひらく「アンデルの手帖」

writer みつながかずみ が綴る、今日をもう一度愉しむショートショート!「きょうという奇蹟で一年はできている」

ソーシャルディスタンスがもたらすもの

2020-05-07 01:01:00 | コロナ禍日記 2020

 

4月13日(月)晴


 6時半に起きる。朝食には、篠山のマグナムコーヒーと、宝塚の高級食パン。表面だけカリッと焼いてエシレバターの上に栃の木のはちみつ(ハチだけの仕事、抗生物質不使用。オーガニック)をぬると、とてもおいしい。デザートは甘夏。





 3月中旬から、テレワーク中のパパさんとともに仕事をしているのだけれど。文章というのは、ある程度、孤独でないと書けないものだと知る。

 25畳のリビングに隣接した和室が「仕事部屋」という構造も問題だが、ここが南東向きで2方向から光がとれるのだ。ほかの2室では、山がみえない。木々がしなっている姿、すずめが米をついばむ姿もみえない。ベランダの菜種は、黄色い花が開花した。こうした自然と隣接するのが、ここ、

 リビングと仕事部屋が襖1枚のパーテーションでは、どうしたってテレビの音や電話の声だって生々しく聞こえてくるというわけなのです。

 ついに朝3時おきか!   

 毎晩、全力で寝ることを心がける、おかしなサイクルに。。。


 午後3時の憂鬱なとき。ひと月のうち5日くらいしか業務のないNが一人っきりの東京暮らしが退屈で「実家にかえっていい?」とメール。東京勤務で、海外や国内にも毎月、渡航歴のあるNの帰省に対して、「おお、たのしみ!」とは手放しで、喜べない自分が悲しい。

 実家の母(88歳)に相談するも

「お願いだから、ママのところには帰ってやらないでほしいの。あなた一人くらいなら、おばあちゃんが養ってあげられるから」

 そういって、N宛に食料品を宅配で送って、ジャガイモの下に福澤諭吉がしのばせてあったらしい。すまない母よ。

 

 コロナウイルスがもたらす恐怖は、これまでの常識、良識を歪めてしまう。自らの身を守ることが、多くの人を助けることになる、それ以上でも以下でもないのだ。

 本来、人間というのは「移動することに幸福をみいだす生き物である」。

国と国、人と人、を遠ざけねばならない。生活の上でのsocial distancing=ソーシャルディスタンス。その代償は、心を浸食し、自由を奪うものだ。

 リモート飲み会、テレワーク。Zoom! それはすばらしいアイデアとは思うけれど。5Gのもたらす時代の序奏だと考えれば、巨大化していくIT社会にも、ちょっとした恐怖を覚えるのは、あまりに悲観的すぎるのだろうか。

 今晩のごはんは、すずきのフライ、ほうれん草と空心菜のソティー、トマト冷製サラダ、淡路産のもずく、じゃがいもとわかめのみそ汁(スパークリングワインロゼ、相方はレモン酎ハイ)で。