陽だまりのねごと

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がんばりません  佐野 洋子

2008-12-05 05:18:25 | 
がんばりません (新潮文庫)
佐野 洋子
新潮社

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これは絵本作家佐野洋子のエッセイ集。
佐野洋子は泣ける絵本↓で有名。
100万回生きたねこ (佐野洋子の絵本 (1))
佐野 洋子
講談社

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この本は昭和60年に本の雑誌に書かれた「佐野洋子の単行本」を改題したもの。
似た題名の本にこれも有名な↓がある。
がんばらない (集英社文庫)
鎌田 實
集英社

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「がんばらない」は人にがんばらないことを奨めているけれど
「がんばりません」は自らがんばれない自分を肯定している。
昭和に書かれた本。もう20年以上になるワケで
「がんばらない」よりはうんと前に書かれている。
しかも昭和13年生まれ。
戦前戦後の日本人のみんなが貧しい時代に培われた物の見方も綴られているがだだ決して古い感じを受けない。

母親に教えられて育ったと言う
「清濁合わせ飲んで嘘も方便」は衝撃的な言葉だった。
生活力がなく子供ばっかり作って
気分次第でちゃぶ台をひっくり返すタイプの当時は普通だったかもしれない
早死にした父の後を引きとっての子育てはこうでなくちゃなりたたなかったろう。
決して詐欺師で生きた人ではなく真面目な小市民の生きる知恵だったのだ。
シベリア抑留で生き残った人は
乏しい食料に見合った適当に手を抜く仕事ぶりが出来た人だという話もあった。
勤勉実直の王道を堂々とぶたれるより小気味いいが
子にそう教訓をたれる母という肝っ玉の座りに驚く。
私がもしそう教えられて育ったらもっと気持ちが楽な人生展開だったかもしれない。

「まめまめしく健気なる人類よ」では直角に物を置かないと気が済まない人や
誰にもありそうな1点几帳面にこだわる部分をこっけ味をもって羅列してある。
それは人に備わった可愛げであり、珍妙なとことであり
まさにがんばりませんでいいんじゃないの?と言う気がしてくる。

読書ではなく読字で教養にも知識にもなっていないと本好きな自分を嗤う。
まるで私そっくりな部分。
読んだ端から忘れ、血沸き肉おどりガガガーっと短期決戦で読める本が好き。
一字一句行間に秘められた意味を探る、高尚なのはそう言えば避けている、
言われて見て納得した文字 活字が好きなんで私のアレは読書ではない。
NHKBSで朝8時から10分の番組で『私の一冊』をやっている。
著名人が自分の愛読書や感銘を受けた本や自分を運命つけた1冊を紹介している。
私だったらどれかな?と思ってなぁ~~んにも浮かばない。
せっせと本めくることに始終して、先を先を追ってしまう傾向がある。
じっくり読み返すは苦手中苦手かもしれない。
捨てられない本は取ってはあるけれどなかなか2度目の手が伸びない。
そっそっかしくつんのめりながら生きてしまう性らしい。

れんげ畑で一緒に居た美女童話作家はレンゲの花束を手にし
自分は食べられるれんげと共に生えていた芹をひっこぬいて手にしていたと
自嘲気味に
食糧難な時代を生きた習い性を嗤っている。
同世代の似た人を知っている。
必ず食べられる野草で立ち止まる。
この人癖が私にもうつったか?ついつい里山で道端で花と共に目を惹く。
本当に飢えた時代がない私にとっては花と同列であるけれど、
彼女の習い性は生きることと直結していたのだ。

正論は恥ずかしい
美女美女で女女して生きようとどうしてもできない作者胸がすく。

この辺りちょっと私より男っぽい我が娘みているようでもある。
読んで妙に清々しく、
カバー裏の「佐野洋子の本」に「ふつうがえらい」を見つけ
待ったなしで車に飛び乗って文庫本が一番多い書店に走った。
そして、たった1冊か輝くそれを見つけたらドキドキして
まようことなく書架からひっつかんでレジに並んだ。