細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

ブルネル

2012-09-17 05:31:58 | 教育のこと

2012年9月16日。今回のイギリス滞在の実質的な最終日。私は,4年生の山崎さんの発案の,ロイヤル・アルバート橋を見に行く旅に出かけました。ロンドンから,片道約4時間の長旅です。今回の見学会の主役である,I.K.ブルネルが設計して架設も指導した鉄道橋梁です。ラグビーボールのような形をしたアーチを使った非常に面白い橋梁です。

予定の列車が運休していたため,1時間出発が遅れて10時前にパディントン駅を列車が出発。3時間半ほど電車に乗っていたので,クリフトン橋の橋脚の近くの土産物屋で買った,I.K.ブルネルの小さい本を読みました。もちろん英語の本ですが,非常に良くできた本で,ブルネルの生涯と,代表的なプロジェクト,それにまつわる話がとても興味深くまとめられており,勉強になりました。

クリフトン橋の設計,施工に関してもとても多くの事情が絡まっており,トマス・テルフォードも大きく関わっています。残念ながら,クリフトン橋の施工の途中で資金難になり,橋の材料の鋼材もすべて債権者に売り払われ,橋脚も解体するという話まで出ましたが,ブルネルが逝去します。英国土木学会は,ブルネルの記念のための橋梁にすべく,ロンドンのテムズ川にかかっていたブルネル設計の歩道橋が撤去されるという幸運を活かし,その鋼材をクリフトン橋に用います。ブルネルが23歳のときに設計した橋梁が,自身の死後に,皆の思いが結実して,ブルネルの記念橋として竣工したのがクリフトン橋です。

今日の旅に使っている,Great Western Railwayは,パディントンから西部に広がる鉄道網ですが,これもブルネルが主導したプロジェクトです。その鉄道を使って,ブルネルの傑作の一つである,ロイヤル・アルバート橋に向かうことに感動を覚えました。

ロイヤル・アルバート橋は素晴らしかったです。何と,2年かかる補修工事の真っ最中で,補修の足場が橋梁にかかっていましたが,部分的に補修が終わった箇所と,これから補修をされる劣化した部分を見ることができて,土木技術者としてはとても興味深い状況でした。

隣に架かっている吊橋であるTamar Bridgeを渡りながら,ロイヤル・アルバート橋を堪能しました。Tamar Bridgeも,補強のためか,斜張橋のようなケーブルが2本据え付けられており,長く橋梁を使いこなしていく生の状況を学生たちと一緒に見ることができました。

一つの橋梁を見に行く旅ですが,その道中でもブルネルを通した英国土木の発展の歴史を学ぶことができ,その見識を持って橋梁,および鉄道を感慨深く味わうことができ,大人の旅となりました。

ロンドンへ3時間半かけて帰りますが,ここからは心身の調子を整え,帰国後からしっかりと仕事をできるようにしたいと思います。1週間の見学会でしたが,学生たちとともに,私も多くを感じ,多くを学びました。1ヶ月くらいの留学に相当すると思えるくらい,濃厚な時間でした。こういう仕事をさせていただいて,幸せに思います。


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