細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

小学校での防災授業

2018-09-20 08:31:47 | 教育のこと

8月下旬からも、
・チェコへ一週間(8/27~9/3、fib phD symposiumのための出張)
・新潟(9/11~13、JR東日本 信濃川発電所、山古志村、大河津分水路、関屋分水路、親松排水機場など)
・鞆の浦(9/14~15、鞆小学校、鞆中学校防災授業、地域活性化のための空き家掃除)
・山口(9/17~19、第12回のコンクリートの品質確保講習会での記念講演(土木学会技術賞受賞)、350委員会)

等の出張が続き、9/22からはベトナムのダナンへ出張します。ベトナムには私の教え子たちが順調に増えてきており、今回もいろんな方々とコミュニケーションができるものと楽しみにしています。

さて、9/14に鞆小学校で2時間ほど防災授業を行ってきました。

今年度は、小学校4年生の総合的な学習の時間が防災に当てられており、担当の山口先生がコーディネートしながら、要所要所で私を活用していただいています。

今回は、「避難」「避難グッズ」というものを少し念頭に置きながら授業をしてほしい、ただし、子どもたちが夏休みの宿題で作った避難バッグについての詳細な議論は来週にしたいので、あまり踏み込み過ぎないようにしてほしい、という依頼でした。依頼はそれだけ。

先生方や子どもたちも、日本の各地で激甚な災害が多発しており、ただごとではないことは気付いています。全くただごとではありません。

私は以下のように授業を進めました。子どもたちとやり取りしながら、です。

防災とは何か?

災害を防ぐこと。では、災害とは何か?

地震や崖崩れなどが起こるだけでは災害とは言わない。それは自然現象。人が誰も住んでいないところでそれらの自然現象が起こっても、災害ではない。

人の命が失われること?人の命だけ?

少しずつ理解が進んできました。「自然のおそろしさから、人の命や財産を守ること」と一応、防災を定義しました。

さて、そのような目的を達成するためにはどうすればよい?

逃げればよい?逃げても、財産は失われるかもしれないよ。財産を持って逃げる?財産の中でも最も大切なもののひとつの家はどうする?

避難や避難グッズを否定は決してしない、それらも大切。でも、一番効果があるのは、「対策」です。地震、台風、土石流、崖くずれなどが起こっても、避難しなくてよいように対策することが、実は防災の本命なのです。

この町にもたくさんの対策がなされているのは知ってる?(鞆小の4年生はそれなりに知っています)

この学校の裏の谷筋にも、砂防堰堤はあります。

砂防堰堤って知ってる?(この後、砂防堰堤についての説明)

神戸の六甲山での話をします。昭和13年(1938)の豪雨では、土石流等により695名の方が無くなりました。これはさすがにまずい、ということで砂防堰堤の工事を一所懸命なされました。昭和42年(1967)に同程度の豪雨があり、98名の方が無くなりました。被害は少し軽くはなりましたが、大変な災害でした。2014年に同程度の豪雨がありましたが、死者はゼロ、でした。これが防災です。

同じ砂防堰堤が、君たちの町も守ってくれているのです。

防潮堤の話もしました。「潮」は高潮から来ています。鞆町の防潮堤はまだ十分ではなく、だからかさ上げや新設の工事が今もなされています。高潮がいかに恐ろしいかは、伊勢湾台風の被害の話をして説明しました。

対策がいかに重要か。

そして、我が国は対策への投資、公共投資をずっと減らし続けている。

だから北海道のブラックアウトが起こったと言っても間違いではない。

子どもたちは真剣に聴いて、たくさん質問してくれました。

山古志村の話もしました。2014年10月23日の新潟県中越地震で全村避難という大変な苦境を経験された山古志村の展示館を訪れました。語り部のおばさんにいろいろと教えていただきました。全村避難、家族の大切な財産をたくさん失った関さんは、その後にたくさん建設された砂防堰堤等のインフラへの感謝の気持ちはたくさんお持ちでしたが、避難生活についてはみなで寄り添った、今やよい思い出であり、避難グッズについての言及など一つもありませんでした。(誤解のないように、避難、避難グッズももちろん重要です。もっと重要なものがある、と言っているだけです。)

この総合的な学習の時間はまだまだ続きます。最終版には授業参観も行うようで、大人にどう考えてもらうか、伝えていくかもすでにこの授業の大きなテーマになっています。


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