細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

真の当事者意識

2016-12-14 07:33:59 | 教育のこと

「土木史と技術者倫理」の講義も10回目が昨日終わりました。

講義の序盤で意識の切り替わった人は、様々なことやヒントをこの講義から吸収してくれており、レポートにその様子が色濃くうかがえます。

一方で、いまだに意識の切り替わらない方々も少なくありません。「楽単」で群がってきた連中や、意識の高い人を「意識高い系」などと呼んで仲間内で足の引っ張り合いをする連中、そして、自分がなぜ大学で学んでいるのかも分からない方々です。

この講義は15回あることがミソでして、一気に全員の意識を変えることは至難の業ですが、毎回のレポートを採点して返し、学生の意見も集約して次回講義の冒頭に紹介し、突き放したり、ときには寄り添ったり、と様々な手法も使いつつ、雰囲気を醸成していきます。

前回、9回目のレポートの全体的なクオリティがあまり高くなかった(もちろん極めて高い質のレポートも少なくはない)ので、正直にその旨を伝えました。

そして、大学という環境に入学後がっかりした人が大半であり、私の講義もきっかけとなって意識を切り替えようと決意したけど周囲の目が気になる学生が少なくない状況を踏まえ、10回目の冒頭に以下のような話をしました。

内田樹先生の「下流志向」という本を読んでみるとよい。なぜ勉強しない若者が多いのか。「効率的」「合理的」というような価値観を社会が重要視しすぎると、 どのような事態に陥るか。

もっとも効率的に、自分の価値を相対的に高める方法は、努力せず、頑張ろうとする人の足を引っ張ることである。仲間内で真面目な話、志高い話をしようとすると、すぐに話の腰を折り、どうでもいい無駄話で塗り替える。

君たち若者がそのような足の引っ張り合いをするような現状は、君たちだけのせいでは決してない。そのような社会にしてしまった大人の責任だと私は思う。かわいそうだけど、君たちは「犠牲者」だと思っている。

そんなくだらない仲間内の中ではその論理でも成り立つのかもしれないけれど、突き抜ける人たちなどこの世にいくらでもいる。そういう人に対すると、ひとたまりもない。勝てるわけがない。そういう突き抜けた人たちは、極めて高い志で、時間も惜しんで努力し、社会に貢献しようとしている。

もういいかげん、そのようなくだらない考え方をやめなさい。

今日の講義「物資輸送のための水運開発 -港と運河-」 で動画も見せるが、その主人公はパナマ運河の建設工事で大活躍した、青山士(あきら)である。以前の講義で大河津分水で登場した宮本武之輔の上司であった人物であり、青山の師匠は、皆さんも勉強した廣井先生である。

青山は「非大衆中の非大衆」と言ってよい。今日は、青山先生に喝を入れてもらうつもりで、活物同期しなさい。

その他にも、村上春樹の本質の紹介も、司馬遼太郎や吉川英治の世界に入っていくための方法等も説明しましたが、第10回目のレポートを昨夜ぱらぱらと見ましたが、さすがに意識の切り替わった人が少なくないようでした。

この講義は教養科目なので、様々な学部、学科の学生が受講していますが、必修科目として受講している土木の2年生のレポートの質が極めて低い。この学年は、もちろん頑張っている人もいますが、土木工学教室の中でも問題になっています。レポートの質が低いことを、昨日の講義でも伝えました。君たちのレポートの質が低くてどうする。なぜ、土木にさらさら興味も無かった他学部や他学科の学生たちに負けるんだ。頑張れ。

奮闘を期待します。 


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