デフレ脱却へ2%の物価上昇を2年間で実現するため、これまでと違った手段でお札を2倍発行すると日銀政策委員会が満場一致で決めたとたんに円は96円になり株はこの二日間で13000円まで上昇した。黒田新米総裁の見事なマジックで日本中が大騒ぎとなった。
日銀の2倍となる発行通貨は主として銀行を通じて世に出るわけだが、企業が借りて設備投資をしたり、個人が買い物や住宅建設でローンを組むということが起きて初めて物価に影響する。黒田総裁は「2%物価上昇ということが明らかになれば,企業は設備投資をする」と言っているが私にはぴんとこない。よほど輸出が伸び、消費者が財布の紐を緩め、余裕のある高齢者が金でも使わないかぎり設備投資には結びつかない。
企業が銀行から借りないと、余った通貨は銀行が日銀に貯金をすることになり、せっかく世に出した通貨は戻ってしまう。金利は史上最低になったがこれの恩恵はローンを借り換える一部の人で、年金生活者の大部分は貯金の利率が下がり、財布の紐を引き締める。
昨日、今日のマーケットの熱狂も厳しい現実に直面することになり、浮かれた楽観は禁物だ。デフレファイター黒田総裁は歴史に残る闘いに突入した。歴史に残る総裁ではインフレファイターの一万田尚登(いちまだひさと)がいる。彼は日本銀行にはいり,大阪支店長などをへて,昭和21年に第18代総裁になった。以後8年半にわたりインフレ抑制に金融政策を推進し、GHQをバックに「一万田法王」と呼ばれるほど絶大な権威を振るい、川崎製鉄(現JFEスチール)が千葉に製鉄所を建設しようとした際、金融引き締め政策に逆行する巨額投資に憤り、「建設を強行するなら今にペンペン草をはやしてやる」とまで言った。黒田総裁は企業に設備投資を促す役割、歴史の皮肉だが、別のマジックを考えるか?
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