思いつくままに書いています

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今頃になって「星逢一夜」&「ラ・エスメラルダ」の感想ですが‥

2015年08月17日 | 宝塚
雪組公演『星逢一夜』・『La Esmeralda』を観てきました。
といってもとっくの昔、7月23日の観劇なので、遅すぎ。(殴)
少し弁解させてもらうと、その週に身内の不幸があり、相前後して別のところからある原稿の依頼が入って、つい後回しになっていました。(^^;

とはいえ、この公演は期待の新人脚本家・上田久美子さんの大劇場初作品ということで、チケットをゲットした段階から期待値が上がりまくっていました。何せあの佳作「翼ある人々」の後ですからね。期待せずにはいられません。
ということで、渋滞の中を大劇場に向かいました。「王家‥」からそれほど期間があいていないのに、大劇場は結構久しぶり感が強かったです。

客席の入りはほぼ満席で、車いす用補助席も満席でした。

で、突然ですが、感想となります。(笑) 
でもこれが、絶賛モードとは程遠いかな~りなネガティブ感想だったりするので、今なお観劇後の心地良い余韻に浸られている方や、これから観劇を予定されている方は絶対スルーが吉です。
いつものとおり敬称略です。

(プログラム表紙です 今回は時間がなく、画像はすべてプログラムから部分スキャンしたものだけです)


結論的にはかなりガッカリでした。(^^;
ヨメさんと幕間で「今にどんでん返しがあるかと思いながら見ていたけど、なかったねぇ」と残念な感想を共有。(笑)
「翼ある人々」のときはチケットさえあればもう一度観たいと思いましたが、今回はリピートはないです。

でもはじめのうちは、いい感じで話が進んで、展開が楽しみでした。
どこか藤沢修平の作品を思わせるテイストも感じられて、とくに子ども時代の演出がよくできていて、さすがは上田久美子と感心しながら観始めました。

余談ですが、宝塚の強みは子役が自然なことですね。このあたりはオール女性劇団の特色が発揮できていると思います。もし普通の劇団で、男優がそのままの配役で子どもを演じたら、それはそれで話題にはなるかもしれませんが。(笑)

咲妃みゆはもちろんですが、早霧せいなも望海風斗も子ども姿が違和感まったくなし。子供時代の場面で脚本家らしくて笑ったのが、隣村の子どもとけんかして紀之介が負けるところ。ブラームスが酒場でボコボコにされるのを思い出しました。このあたり、いつも今に相手をやっつけるだろうと期待して常に裏切られています。

でも、今回の最大のガッカリは、主人公の生き方や考えにまったく共感できなかったことです。
私はてっきり、子供時代の天文学への興味から、やがて科学全般に探求心が広がり、その知識を実生活の多方面に適用して、窮迫した農民の生活を大きく改善するとか、破たんした藩の財政を立て直すとかという劇的な展開になるのではと期待しながら見ていました。ヨメさんもまったく同じだったとのこと。
ところがあろうことか、吉宗に気に入られて異例の大抜擢で要職に就いた晴興は、そのまま一直線に圧政を推し進める辣腕の老中となって、最後は源太まで殺してしまう! これにはさすがに大ガッカリ。
さらにいくらフィクションとはいえ、老中と百姓が一騎打ちとかちょっとついていけないシチュエーションがあったり。それと、源太も百姓、泉も百姓の娘なのに、次男でやがて隠居の身となるとはいえ藩主の息子が、子供時代の偶然の邂逅はともかく、その後まで三角関係を継続するわけないだろうとか、いろいろ考えてしまいました。
このあたり、似たような話で、宝塚バージョン「若き日の唄は忘れじ」も大好評だった藤沢修平の「蝉しぐれ」とは大違いな設定の無理を感じました。

でも、そんな感想を持ったのは私たちぐらいで、舞台が終わりに近づくにつれ、客席ではあちこちでハンカチで眼をぬぐう女性客の姿が。まあ今回は全体のトーンがそういう泣かせる雰囲気によく作りこまれていて、私もついその術中にはまりそうになったり。(^^;
ただ、私たちのような辛口感想を持ったのは少数派なようで、市中の評判は上々とのことです。

という全体の印象はこれくらいにして、配役ごとに感想です。

まず、天野晴興(紀之介)役の早霧せいな。少年時代の紀之介ですが、はじめは別の配役かと思ったら本人でびっくり。喧嘩が弱くて星ばかり見ている少年が、やがて吉宗の強力なバックアップで老中にまで上りつめ、それにつれて立ち居振る舞いも洗練されていく姿をうまく演じていました。しかし、本来民百姓の味方で、彼らに寄り添っていたはずなのに、いつから過酷な重税を課すまでに変わってしまったのか、その内心の変化がよくわかりませんね。
ただこれは脚本・演出の話です。
早霧せいなはひたすら内心を押し殺してその務めを果たす姿をよく演じていましたが、私たちはいつ晴興が本心を表して、善政を敷くようになるのだろうかと儚い期待を抱きながら観続けていました。(まだ言うか)


次は相手役の咲妃みゆ。童顔で少女役はうってつけですが、妻となり母となった姿もその年月がよくわかる安定した演技でした。うまく老けていました。最初のころに紀之介が、泉の父を獄門にかけた藩主の息子と知って激しく反発するところもリアルでよかったです。

今回の芝居で一番自然に感情移入できる役だったのが(笑)、源太望海風斗。でも優しく思いやりのある源太が、藩の圧政に耐えられず、ついに父と同じように義民として立ち上がり、最後は晴興の刀によって倒されるというのはあんまりな話です。ただ望海風斗にとったら、客席の同情を一身に集める儲け役でしたね。舞台では芝居もショーも存在感大で、彼女の移籍で雪組もさらに厚みが出ました。

あとは、将軍吉宗役の英真なおきが出色の出来でした。最近見た彼女の役では一番の当たり役といえ、「第二章」の軽妙な役からは想像もできない貫禄十分の吉宗でした。演技のダイナミックレンジが広いです。
紀之介の養育係・鈴虫香稜しずるや、村の百姓の子供たちのちょび康役の彩風咲奈、幕府天文方筆頭の猪飼秋定役の彩凪翔がいい仕事していました。
そして晴興と結婚することになる吉宗の姪・貴姫役の大湖せしるは言うまでもないインパクトのある存在でしたが、晴興との感情のやり取りがほとんどなくて、ちょっともったいなかったですね。

ということで、みんな頑張って演じていましたが、やっぱり残念感のほうが強い感想になってしまいました。

そしてショーですが、これはもう始めから終わりまで全編お祭り騒ぎで、観ていて疲れました。
年のせいか(笑)、こういう一本調子の騒がしいショーはついていけないです。やはりしっとりとしたダンスの場面とか、聞かせる歌の場面などメリハリのきいた変化のあるショーのほうがしっくりきます。

ショーの最後では、今回の作品で退団する透水さらさがデュエットダンスからパレードのエトワールまで出番をもらっていました。結構勝手に応援していた歌姫・透水さらさの退団は残念ですが、今後の活躍に期待しましょう。

というわけで、私の独断と偏見に満ちた感想は終わりです。でもまだ上田久美子さんには期待していますので、次作を楽しみにして待つことにします。

ここまでご覧いただいたみなさん、本当にありがとうございました。m(__)m

さて次は兵庫芸文センターで観てきた「トロイラスとクレシダ」の感想です。アップ頑張ります。(笑)


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4 コメント

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はじめまして (まりっぺまりりん)
2015-08-17 21:26:52
はじめまして、まりっぺまりりんと申します。

私、宝塚ファンでございまして、以前から楽しく記事を拝読しております。
毎回、(殴)のくだりで、大笑いしたり頷いたり。

雪組公演、気になりつつも今回もパスしてしまいましたので、感想を楽しみにしておりました。

感想の部分は今からアップされるのでしょうか。
心待ちにしております。

暑い日が続きますがご自愛下さいませ。
返信する
ありがとうございます (spada250)
2015-08-17 23:49:29
>まりっぺまりりんさん、初めまして。
コメントありがとうございます。

>感想の部分は今からアップされるのでしょうか。
いえ、感想はこれで終わりです。^^; 短くてどうもすみません。今回は観終えてどうにも後味が悪くて、筆が進みませんでした。

で、もう気分を月末の『ガイズ&ドールズ』に切り替えています。(殴)
またよろしければご覧いただければ幸いです。

返信する
初めまして (東雲)
2015-08-24 22:38:17
初めまして。
私も、星逢を観たのですが、周囲のすすり泣きの方々と同調出来ず、醒めて観てしまいました。
が、そう言った感想が全く見当たらず、自分の感性を疑っておりました。汗
観ながら、「その名前の藩は確か、違う場所に存在していたはず」だとか、「吉宗公の名前をワザワザ出すのは何故?」だとか「天地明察かなにかその辺りとの既視感はなんだ?」と、妙に冷静になってしまい、あまり入り込めませんでした…。

宝塚観劇歴が浅いので、もしかしたら宝塚ストーリーでは、そういう所はスルーすべきなのか?と悩みつつ、ラストを迎えていました。
望海さんは美味しい感じでしたね!
二番手とはいえ、この人がトップなのでは??と、思ってしまうほどの雰囲気と出番の多さでした!
モヤモヤしたりもしつつ、また足を運んでしまうのが、宝塚の面白い所ですね。
私もガイズも観賞予定なので、楽しんできます!
返信する
ありがとうございます (spada250)
2015-08-25 00:10:23
東雲さん、初めまして。
コメントありがとうございます。
>もしかしたら宝塚ストーリーでは、そういう所はスルーすべきなのか?
いえ、そうは思いませんね。私はどんな演劇でも、取り上げている題材を通して脚本家が人間をどう描こうとしているのか、何が言いたいのかがまず気になります。そこでリアリティが感じられなかったり共感できないと、もう醒めてしまいます。これは宝塚以外の演劇でも同じです。
ただ、宝塚は贔屓の引き倒しの感想もアリだと思うので(笑)、最近は他の人の感想は見なくなりました。(笑)

でも今回同感なコメントを頂けてうれしかったです。励みになります。
遅い感想ですが、これからもよろしくお願いします。
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