80年代Cafe

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あなたにとって80年代はどんな時代でしたか。

ゲームブック・バルサスの要塞・社会思想社

2007-02-10 22:08:59 | ゲームブック

 ファイティングファンタジー第2段『バルサスの要塞』は、1983年(日本では85年)に発表されたスティーブ・ジャクソンの作品です。前作『火吹き山の魔法使い』の好評を受けるかたちで執筆され、要塞を攻略するキャッスルアドベンチャーと呼ばれる形式のシナリオとなっています。また新要素として魔法の概念が加えられています。

 主人公(読者)は、魔法使いの若き弟子となって、ぎざ岩高地にある塔に住む邪悪な妖術使いバルサス・ダイアの要塞に侵入し、彼を倒す事が目的となります。今作の売りのひとつでもある魔法は、魔法点に応じてあらかじめ何種類かを選んでおくシステムとなっています。攻撃用の魔法の他、千里眼、浮遊、怪力など、どれが冒険に有効で必要なのか悩みつつ、持ってゆく魔法を選択することとなります。感覚としては、魔法のアイテムや御札、スクロールを選んで持ってゆくような感じです。

 舞台は敵の要塞で、主人公の目的は敵に悟られる事なくそこに侵入することですから、嘘をついて門番を上手くかわすなど、なるべく争いを上手に避けて進む必要があります。要塞の中庭を横切って(ここでも敵を欺く必要がある)、今度は要塞の中に入るために衛兵に合言葉を言わなくてはなりません。途中で敵にやられても、必ずそこで終わりというわけでもなく、牢屋に捕まってそこから脱出する展開になったりと、要塞という設定が上手く生かされています。また要塞内の図書館で調べ物をしたり、バルサス夫人の寝室に飛び込んだりと、要塞内での敵の生活を感じさせる描写もなかなか見事です。それ以外にも堀の真ん中においてある宝箱や、生きている干し肉などの罠も印象的で、こういう細かい世界観にこだわる設定というのは、海外作品ならではの部分だったと思います。

 シティアドベンチャーの傑作『盗賊都市』(リビングストン著)や、この『バルサスの要塞』などで得た着想の集大成が、のちに『ソーサリー』として結実しているような感じをうけます。ソーサリー4巻『王たちの冠』は、最終ボスの要塞を攻略する話ですが、その原型をこの『バルサス』に見ることができます。余談なのですが、王達の冠では要塞内に傭兵たちの便所の描写まであって(ご丁寧に汚いイラスト付き)、そこは病気になったり気分が悪くなるトラップになっているのですが、そりゃ傭兵が居ればそういう設備は必ず必要だよな、と妙に納得してしまった覚えがあります。こういう本編とは直接関係のない、細かな描写が作品内世界にリアリティを与え、登場する生物にも実存感を与えたりするのでしょう。

 当時遊ばれた方には、お馴染みのヒドラやガンジーを倒すと、バルサス・ダイアとの対決となります。当時遊ばれた方のほとんどが、同じことを感じたと思うのですが、実はバルサス・ダイアは怪物ではありません。若々しく輝く、鍛え抜かれた肉体をもったモヒカンの妖術師なのです。表紙に大きく登場している彼は、実はバルサスではありません。雑魚敵としても登場せず、彼が一体何者なのかは作品中でも語られないまま終わってしまいます。このあたりの不思議な感覚も、海外作品独特のような気がします。


 現在遊ぶ場合には、扶桑社より復刻版が発売されています。またFF初期作品で、かなり売れたためかブックオフなどでも入手しやすいと思います。日暮れとともに要塞に侵入して、夜明けとともにバルサスを倒す展開で、実はたった一晩の冒険の話です。そのため非常にコンパクトに纏まっていて、FFシリーズの中でも良く出来た作品の1つだと思います。

愛と青春の旅立ち・トップガン・(1982・86/米)

2007-02-04 20:05:21 | 映画・DVD・CD

 『愛と青春の旅立ち』(82)は、リチャード・ギア主演のアメリカの青春映画です。(原題はAn Officer and A Gentleman) リチャード・ギアの出世作であり、代表作であるといえると思います。この邦題は日本でのヒットに大きく寄与していると思うのですが、この映画にはすこし甘すぎのイメージももたらしているような気がします。


 『トップガン』(86)は、トム・クルーズ主演の青春映画です。これもトム・クルーズの出世作であり、また代表作でもあると思います。(原題もTop Gun) 監督は、リドリー・スコットの弟、トニー・スコット。この2つを並べて紹介するのは、個人的な思い出があるからなのですが、実はトップガンは愛と青春~をリメイクした作品なのだそうです。共通項としては、軍隊とエリート、挫折、友達の不幸、恋愛・・・などなど。また、主演俳優の魅力が、映画成功の大きな部分を占めていることも共通項と言えるでしょうか。

 『愛と青春の旅立ち』は、さえない生活を送っている青年が、そこから脱け出すために海軍士官養成学校にはいり、鬼軍曹に鍛えられて成長を遂げてゆくという物語です。日本では、(そのタイトルからか)女性に受けがいい映画の代表格ともいえるようです。またあのファミコンウォーズのCMの元ネタでもあります。昔見たときには、あまりにも物語が上手くいきすぎて、出来すぎだという感想を持ったのですが、今の視点で見ると少し感想も変ってきます。
ヒロインはたいした産業もない田舎町で、今の現状から抜けだす術を持っていません。士官候補生を捕まえる事だけが、現状を大きく変える力を持っているわけです。ラスト主人公がエリート仕官候補生となって颯爽と旅立つのですが、ヒロインも同じく旅立つんですね。(今までの毎日ではないところへ) 甘い現代のおとぎ話のようなストーリの底には、現実の厳しい日常が横たわっていて結構リアリティ溢れる話なんですね。(女性に受けがいいというのも、そこからきてるのかもしれません)


 『トップガン』の場合は、主人公は怖い物無しの若きパイロットで、お相手もエリート教官になっています。主人公の無謀さのため、友を失い挫折を経験する事となります。その挫折を乗り越えて一人前のトップパイロットとなってゆく話です。トムクルーズの若さと、爆走するカワサキ忍者(オートバイ)が、最新鋭の戦闘機とも重なって映画にかなりの躍動感、スピード感をもたらしています。とにかく映像の全てが新鮮で躍動感に満ちています。アメリカ空軍全面協力の元に作られ、当時は空軍のPR映画などとも言われましたが、主演のトム君の魅力も全開で、彼のプロモーション映画のような感じもしますね。また愛と青春~の舞台となった街が殺風景な感じがするのに対して、こちらの舞台となった街は生活感のまるでないリゾート地のような雰囲気を漂わせています。舞台となった場所が違い、テーマも異なるからでしょうが、82年と86年という時代の変化も背景にあるかもしれません。こちらは、セガの体感ゲーム『アフターバーナー』の元ネタでもあります。




 個人的な思い出としては、80年代の終わり頃、これらの映画を2本立てのオールナイトで見た記憶があります。あれこれあって落ち込んでいたか、なんだか元気が無かった時で、とにかく戦闘機の爆音と激しい音楽に意味もなく元気付けられたような思い出があります。また学生の頃にはバイクでよく遊んでいたのですが、カワサキ忍者を所有する友達が、なんどもトム君の疾走シーンを繰り返して見ていた事を覚えています。戦争を賛美する映画だという言われかたも当時はよくされていましたが、個人的には疾走するエネルギーと躍動感が、これらの映画を名作に昇華させているような気もします。これらは(ある意味、80年代らしい)、80年代を代表する青春映画、恋愛映画のひとつであるといえると思います。