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ゲームブック・雪の魔女の洞窟・社会思想社

2007-07-15 16:34:06 | ゲームブック

 これは、ファイティングファンタジー第9作目『雪の魔女の洞窟』(Caverns of the Snow Witch)です。著者はI・リビングストンで、彼の作品らしくタイタン世界(中世風の剣と魔法の世界)を舞台とした、オーソドックスなルールのものになっています。この作品の特徴としては、もともと『ウォーロック(WarLock)』誌(社会思想社)に掲載された短編に後半部分を加筆して、出版されたものだということです。そのため前半部分は『雪の魔女』の洞窟に潜入して魔女を倒す戦い、後半部分は魔女にかけられた呪いを解くための旅となっています。

 物語は、氷指山脈の水晶の洞窟の奥に潜む『雪の魔女』が、世界を支配すべくこの世に氷河期をもたらそうと企んでいる。隊商の護衛であった君は、前哨砦を襲った怪物を退治した時に、怪物の手にかかった猟師よりこの事実を告げられる。美しくも邪悪な魔女を倒すために君は洞窟に向かうことになる・・。おなじみの剣と魔法のタイタン世界が舞台とはいっても、雪の山岳地帯が舞台となるため、これまでの作品にはない雰囲気をもっています。登場してくる怪物も、雪狼、マンモス、雪男(yeti)、霜の巨人(Frost Giant)、結晶戦士(Crystal Warrior)、とそれらしいです。この『雪の魔女』は、アンデルセンの童話『雪の女王』(The Snow Queen)から着想を得ていると思いますが、そのためか一面が雪と静寂に覆われた、どこか清潔で、どこかロマンチックな世界観になっています。ちなみに『雪の魔王』で検索すると、マイクロキャビンのAVG『は~りぃふぉっくす・雪の魔王編』が多くヒットします。

 雪の魔女を倒すのがこの冒険の目的ではあるのですが、短編に後半部分を加筆して成立したという経緯を持つため、後半部分は魔女の洞窟を出て魔女にかけられた“死の呪文”を打ち破る展開へと変わります。冒険の途中で魔女の奴隷だった、エルフの(赤速)とドワーフの(スタブ)が仲間になります。このドワーフはストーンブリッジの住人であり、一行がストーンブリッジに到着するとドワーフ達の“伝説的なハンマー”が奪われる事件(運命の森)に遭遇することになります。それ以外にも“迷宮探険競技”の行なわれる『ファング』という街の話が出てきたり(死の罠の地下迷宮)、呪いを解く癒し手は『ニコデマス』という魔法使い(盗賊都市)の呪いを解いたために、自分が疫病に罹ってしまったという設定になっています。そして主人公が最終的に呪いを解く場所は、あの『火吹山』です(火吹き山の魔法使い)。このようにファイティングファンタジーのこれまでの舞台が登場して、それらが一つの世界として結び付けられています。この後に『モンスター事典』、『タイタン』といった、タイタン世界の設定集が発売されていますが、ゲームブックの世界的な好評を受けてゲームブック誌(ウォーロック)が創刊されたこともあり、この辺りからだんだんと一つの物語世界が構築され始めたことがわかります。

 このように書いてくると結構面白そうですが、個人的には印象が薄い作品となっています。確かに遊んだ記憶はあるのですが、前回の『地獄の館』を鮮明に覚えていたのとは対照的に、内容はほどんど残っていませんでした。初期の『火吹き山』、『バルサス』などに感じた衝撃がこの頃になると薄れてきていて、新鮮味を感じなかったのかもしれません。この後、世紀末バイオレンス『フリーウェイの戦士』、日本風の世界が舞台の『サムライの剣』、アメコミヒーロー路線『サイボーグを倒せ』といった多彩な設定の作品が登場してきますので、そちらの方に目がいっていたのかもしれませんね。


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8 コメント

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何年ぶりでしょうか (MOSSAN)
2015-04-03 17:01:04
先日、この“雪の魔女の洞窟”も含めたいくつかのゲームブックを購入しました。
学生の頃に友達から借りてプレイしたことはあるものの、
クリアした覚えがない作品ばかりです。
個人的には、“電脳破壊作戦”が今回の買い物のお気に入りです。
“死神の首飾り”のリプレイが完結したので、次はどの作品にしようか検討中です。
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Unknown (80-cafe)
2015-04-03 23:32:28
記事の方にもコメントを書きましたが、FFシリーズは10作目辺りまでは発行部数が多いため、結構古本屋でも見かけましたが、中後期以降部数自体が減ってしまうため、今では結構なプレミアが付いていますね。

私の個人的なお気に入りは、FFシリーズの中でも後にも先にもない変り種、マッドマックス風の世紀末を描いたフリーウェイの戦士でした。
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イラスト (Unknown)
2017-01-22 16:27:23
イギリス版ウォーロックを見たら、イラストが文庫版とは全然違います。
地獄の館は、おなじなのに。
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Unknown (80-cafe)
2017-01-23 23:38:58
残念ながらイギリス版ウォーロックは見たことがないため、どのようなものだったかわからないですね。Caverns of the Snow Witchで検索してみても、文庫版のイラストばかりのようです。

ウォーロック版に掲載されたミニアドベンチャーに加筆して、ひとつの作品として成立した経緯をもつため、FFシリーズに加えるにあたって、あらためて新規にイラストが起こされたんでしょうね。
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イラストといえば (MOSSAN)
2017-01-26 20:12:11
2005年頃に、ソーサリーやFFシリーズがケータイ用アプリでプレイできました。
有料ですが、ポイントを貯めると好きな作品を無料でダウンロードできました。
運営していたのは、〈ゲームブック ラボR〉という会社でした。
そのアプリ版では、日本で刊行された物とは違うイラストが使われていました。
ほぼ全ての作品の日本語版を、有料ながらケータイでプレイできたのはいい時代でした。
多分、採算が取れないので終了したのでしょうね。
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Unknown (80-cafe)
2017-01-28 00:16:08
これは知りませんでした。携帯用アプリだとサービスが終了してしまうと形として残らないので、パッケージ版があればよかったのに。

ゲームブック ラボRで検索してみると、この間ご紹介いただいたFT書房も関わっていた様子。さらにFT書房には、フーゴハル氏も関わっているみたいですね。ここが、フーゴハル氏の魔城の迷宮をリメイクしてくれないかなあ。出れば買うのだけど。
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実は (MOSSAN)
2017-02-14 22:42:52
私の持っている《雪の魔女の洞窟》は初版第1刷ですが、盛大な翻訳ミスがあります。
ズバリ、287番の文章です。
これは原文からして、明らかに訳者のミスだそうです。
暇な時に確認してみてはいかがでしょうか?
もし違和感の無い文章なら、訂正されているということになります。
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面白い (80-cafe)
2017-02-15 15:15:50
私が持っているのも初版第一刷でした。体力が10かそれ以上なら・・・、10をうわまわれば・・・ということで、どちらも体力が10以上という選択肢しかないことになりますね。なかなかこういうところまでは気付きませんね。
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