
『Wizardry シナリオ4 The Return of Werdna』(ワードナの逆襲)は、シリーズ屈指の異色シナリオとして1987年に発表されました。これはプレイヤーが、1作目の宿敵であったワードナに扮してモンスターを召還し、冒険者に立ち向かう逆転のシナリオになっていました。シナリオは、「ソフトーク」誌の編集者ロー・アダムス氏(Roe.R.Adams III)の手によるもので、ヒントなしには解けない高難易度を誇るものになっていました。オリジナル版にはヒントが封入され、正しいエンディングには連絡先(電話番号)が表示されるなど、上級者をターゲットにしたものでした。そのあまりの高難易度のためか、日本ではPC版(88)と、PCE版(94)以外には、99年の『ニューエイジオブリルガミン』まで家庭用には移植されませんでした。

物語は、トレボーの元よりアミュレットを奪ったワードナは、その想像を絶する力に魅入られアミュレットの研究を行っていた。ある時書斎にエルフの忍者“ホークウィンド”率いるパーティが乱入、ワードナを倒しアミュレットを奪い返してしまう。しかし魔術を極めたワードナの肉体は、どのような手段を用いても破壊することがかなわず、そのため迷宮深くに安置されることとなった・・というもので、ゲームはワードナが深い眠りから目覚めたところより始まります。これ以外に、このシナリオではそれまで特に細かな設定がされてなかった“トレボー”“ワードナ”“アミュレット”の関係に、詳細な設定がつけられています。

ワードナがアミュレットを奪い、(翌日)トレボーがその奪還を命じる→(5年後)ホークウインドがワードナを倒す→(数年後)シナリオ2→(30余年後)シナリオ3→(その数年後)シナリオ5→(アミュレット奪還より99年以内)シナリオ4となっていて、実はこれが(結果的に)リルガミンの章の最終章のような意味合いもあったりもします。また、これまでのシナリオ1~3に登場したモンスターが召還できるのに加えて、お馴染みのボルタック商店や、冒険者の宿、トレーニンググラウンドなどにも立ち寄ることもできますので、(ある意味)裏側から見たウイーザドリィともいえると思います。写真右は、『ニューエイジオブリルガミン・ガイドブック』ローカス

ゲーム本編の方は、オックおばさんの聖なる手榴弾(モンティパイソン)、脱獄カード(モノポリー)、聖なるトレボーのケツ、禿のカツラ、モルドールチャージ(他人のクレジットカード・指輪物語/マニュアルイラストのパロディ)など、日本人には分かりにくいネタやパロディが満載となっており、ユダヤの神秘思想カバラ(セフィロトの樹)の知識などもゲームを解くのに必要になっていました。それ以外にもOXYGEN MASK(酸素マスク)、VOID TRANSDUCER(虚無変換器)、地下7階にそびえたつ神殿にはボルタックの広告を掲げた飛行船がとんでいたりと、SFやファンタジーがごちゃまぜの世界観になっています。

おそらくほとんどの方が、99年に発売された『ニューエイジオブリルガミン』(ローカス)で体験されたことと思いますが、詳細な解説・解析もされた攻略本もある今と異なり、当時雑誌の記事や断片的な情報だけで、これを解くことはかなり困難だっただろうと思います。このゲーム、魔法陣に入るとレベルが上がるシステムになっていて、実は経験値を稼ぐ必要がありません。謎がわかっていれば、意外と簡単に解けてしまう(謎解きメインの)アドベンチャーゲーム的な要素が強いです。『ニューエイジ』版では、2回目、3回目と終了回数が増えるたびに召還できるモンスターが増えていき、しまいにはコッズアイテム(シナリオ2)、エル・ケルブス(シナリオ3)、ララ・ムームー、ゲートキーパー、ソーン(シナリオ5)なども呼べるようになっていました。

写真は、当時ものの攻略本『地上への道』(1989年/アスキー)

こちらは、小説版『ワードナの逆襲』(JICC出版局)
個人的な思い出としては、ウィズ4は当時PC誌などで話題となっていましたが、結局(PCE版を除いて)コンシューマーに移植されませんでしたので、遊んだことはありませんでした。攻略本『地上への道』(アスキー)は非常によい本なのですが、世界観を崩さないためなのか非常に文学的に書かれており(例えばアイテム入手方法を、所有者と交渉することなどと書かれている)、どういうゲームなのか、ずっと謎のままでした。『ニューエイジ』版で遊んで、やっと長年の疑問が解消されたといった感じでした。当時PC版はやはり高嶺の花でしたので、同じような経験をされたかたも多いのではないかと思います。この作品は、シリーズの歴史からすると外伝的な扱いですが、ウィズ世界をより楽しむためには重要な作品だと思います。

参考:Wiki ウィザードリィの項、ウィザードリィコレクション(書籍版)/ローカス、地上への道/アスキー
30分と経たないうちにあきらめましたね(笑)
今更ですが、絶対にクリアさせる気無いゲームでしょ?
残念なのは、PS版(クラシック)もオリジナルに忠実な移植ではないことですね。
幻のエネミーであるスペイン教団に出遭ってみたかったなぁ…
この作品のシステムで、新たにWIZ新作が出れば嬉しいのですが…
AppleII、および国産PC版にはヒントを記した封筒なども入っていたようですが、1~3をやり込んだエキスパート用のシナリオという位置づけでしたからね。特に日本人では、ノーヒントでクリアできた人はいなかっただろうと思います。山下章氏はどうだったのだろう。
新作は、難しいでしょうねえ。