宮崎市内に木の花ドームという木造ドームがある。
なんでも木花という地名があり、木造だから付いた名前らしい。
すべて宮崎県産材を使っているという。
青島観光に行く途中に見えて、木造ドームだと聞いて、寄ってみた。
しかし驚いたのは、近づけば近づくほど、コンクリートのドームがクローズアップされたことである。外回りは、完全に鉄筋コンクリートの打ちっぱなし。それも偉容を誇るがごとく、壁面がコンクリート。ドームの膜面も、鉄骨が見える。
中に入って、ようやくドームの骨組みが大規模集成材であることがわかるのだが、それも継ぎ手に巨大な鉄骨がむき出し。指摘されなければ木造だと気づかないほどだ。
どうして木を隠した木造ドームなんだ? ドーム前には説明版があったが、そんなもの、通常の人は読まないだろう。
もしかしたら、木造だと知られると、利用者が危険を感じて嫌がるとか。
大規模集成材に金を使いすぎて、内装外装に金を掛けられなかったとか。
私は、ドームを木造にする価値はあまりないと思う。機能性なら、鉄筋コンクリートで十分。ただ木造であることに価値がある。アピールの点だ。
それなのに、木造であることが目立たないなんて。
中は野球場になっていて(でも、広さや高さから公式試合は無理そう)、人工芝も敷いてある。しかし人ッ気はゼロだった。
公共施設に木を使って良さを知ってもらう目的が、逆に欠点を見せてはだめですね。
補助金を使って、りっぱすぎる木造校舎を造っても、他の所でマネができなければ意味がない。
広く木材の利用が波及しなければ、補助金は単にばらまきでしかなく行政の役割は何もありません。
いかに国内の木材が利用されるようになるか、その仕組み作りこそが行政の役割なのです。
EU諸国、アメリカ、カナダなどの木材戦略にはとうてい立ち向かうことはできません。
時々、奇をてらった木造建築がありますね。斬新なデザインというか、建築家が弄んだというか(^^;)。
それらは木造でもこんなことができる、というアピールにはなるんですが、一般的に真似できず、普及しにくいのでは木材需要そのものに貢献しませんね。
誰でも使える木材の製品とか、現在普及している金属やプラスチックの部材にすぐ取って代われる木質素材の部材を作らないと。
これからはアピールよりも量です。
藤原敬氏の論文で3つの日本の木造ドームの論文がありました.出雲、大館、宮崎のドームを比べています.出雲は、アメリカから、大館は秋田の杉を名古屋まで運んで加工し建設されたもので宮崎のドームは地元の杉を地元で加工し建設したものです.ウッドマイレージが年代ごとに印すのにひとつの流れがこの3つのドームで理解できるそうです.
ドーム自体の評価ではありませんが、時代が技術や考え方と共にダイナミックに変化しているのでしょう.
宮崎の杉材は、バームクーヘン(これこれから使わせていただきます)のようで比重がとても軽いのです.このような性質の杉材で100m以上のスパンを飛ばす技術は、今までありませんでした.付け加えると大手ゼネコンではなく地元の建設会社でできる技術の開発もこのドームで行われています.
あと木材に塗装がしていなかったと思いますが、屋内の材に塗装は不要だという見解で無塗装だそうです.これでウン億円浮いたそうです.
ウッドマイルズによる3つのドームの評価については、藤原さんに任せるとして、木の花ドーム建設の意義をもっとアピールしないといけませんね。さもないと、せっかく作ったのにみんなに伝わらない。
ただ大規模集成材を使うためには、大規模集成できる工場が地元にないといけない。熊本の小国ドームのように無垢材を立体上に組んで使う工法だと、地元業者でも可能かしらん。