吉野まるごとプロジェクトの会合で、橿原に行った際に、今井町を歩いた。
昔の環濠集落で、江戸時代からの住居が今も並び、重要伝統的建造物群保存地域に指定されている町だ。米や綿などの集積地として、かつて大和の富は今井に集まるとまで言われた。信長に逆らったこともあるが、降伏後も繁栄した。
一応観光地になっているのだが、歩く人は少なく、路地のような細い道に板塀が連なるのは、目に心地よい。格子戸の家も多い。
と、目に留まったのが、丸材の格子だ。通常、格子は製材された角材だろう。しかし、中に直径3~4センチの小丸太をそのまま使っている格子があったのだ。家の前面に丸い格子が連なる。
これは、なかなか風情がある。間伐材とも言えないような、小丸太が活かされた街角の景観が目に入ると不思議な効果をもたらす。ちょっと古びた、庶民的な感覚。
角材の格子が悪いわけではないが、ある種画一性があり、お固い雰囲気のある京都の街角と変わらない。しかし、丸みを帯びた材は、ちょっとした目のアクセントに感じた。
もともと利休の「茶の湯」で生まれた数寄屋づくりは、それまで利用されなかったスギや細い広葉樹材を活かした建築様式である。ありのままの木を使うことを旨とし、樹皮付きの丸材も使われた。節もあれば、曲がったところも活かした。
ところが、時代が進むにつれ、数寄屋づくりといいながら無節、直材を尊び出す。利休の精神とは離れた建築様式となってしまった。
あらためて木材の価値を造り直せないか。山に捨てられている徐伐された細い木や梢近くの細い材を活かせば、新たな景観が作れるのではないか。それもコストをかけた加工はしないで行えたら……。こちらは流通マーケティングの役割だろうか。