575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

ペコロスの母に会いに行く   麗

2014年04月03日 | Weblog
先日、575の句友のすみさんがとてもいいマンガを貸してくれました。

「ペコロスの母に会いに行く」というマンガです。62才の漫画家、岡野雄一さんが、認知症になってしまった89才のお母さんとの日常を描いたマンガです。
表紙の絵は車いすに乗った年老いたかわいいおかあさんと、そのおかあさんに優しくはげ頭を撫でられている作者の岡野さんが描かれています。

「ペコロス」って皆さんご存じでしょうか?ペコロスとはシチューなどに入っている直径3センチくらいの小さなタマネギのことです。

作者の岡野さんの頭がはげているのでご自分のことをペコロスと呼んでいるのです。
そのペコロスさんが、今は認知症になってしまって介護施設に入っているお母さんに会いにいくという生活を、笑いあるほんわかしたタッチでマンガにしています。

お母さんにすこしずつ認知症の症状がではじめ、次第にいろんなことを忘れていくお母さんの日常を書きとどめたくてマンガにしたそうです。

長崎で暮らしていたおかあさんの若い日の思い出や苦労、認知症になって過去と現在が交錯している様子を息子さんならではの愛情あふれる表現で描いています。
親子のやりとりが長崎の言葉なので、とてもあたたかく飾らない人柄がでていて笑える場面もいっぱいありますが
私はこのマンガを一気に読んで泣きました。

認知症なのでベッドのシーツを幼い頃の息子たちのやぶれた袖と思ってつくろいもののしぐさをするシーン。

認知症が進んで13年前にお父さんがなくなったことも、すっかり忘れてしまっているお母さん。生前はアルコール依存症でさんざん苦労をかけられたはずのお父さんが今、おかあさんのベッドサイドに会いにきていると言いはるのです。
私たちには見えなくてもおかあさんには本当に見えているのかも知れません。

戦争中、長崎に原爆が落ちて、お母さんは赤ちゃんをおぶった背中で亡くしています。その亡くなった赤ちゃんはペコロスさんのお姉さんなんですね。
そして今、お母さんはその赤ちゃんをおんぶしてあやしています。
認知症になって初めて神様がおかあさんのもとに赤ちゃんを返してくれたのかもしれません。このようにお母さんはある意味、時間も空間もこえた異次元に時々迷い込むのです。

「年をとっていろんなことを忘れることは悪いことばかりではない」とペコロスさんはお母さんを見てそんな風に感じています。親の老いという避けられない問題を真正面からみつめて、でも深刻にしないで、笑いをおりまぜる、だけどやはりどこか切ないお話ばかりです。

お母さんの日常をマンガにして切り取っていって自費出版したこの本が、長崎でブレイクし、今、介護に携わっている全国の多くの方々の共感をよんでいます。
今、介護で大変な方には、ちょっと一休みの時間に読んでいただきたいです。こんなことあるあると思うシーンがいっぱいでてきますし
岡野さんが描くかわいらしいおかあさんの姿に癒され励まされると思います。

岡野雄一作「ペコロスの母に会いにいく」。去年映画化もされました。すみさん、素敵な本をご紹介下さりありがとうございました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする