575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

ポケモンに引寄せられる夏の虫  郁子

2016年08月31日 | Weblog
麗子さんもポケモンで一句。

ピカチュウにおびき寄せられ夏の虫

いずれもポケモンを追いかける人間を夏の虫、
と捉えている点で一致しています。

先日、名城公園を散歩しようと駐車スペースを・・・
なかなか見つからない。やっと一か所を確保。
ジョギングコースを歩きはじめたら、何時もより人が多い。
それもスマホを手にした若者、親子など。
みなポケモンを探しているようです。

「ポケモンは、あなたの住む世界のあらゆる場所で、
目にすることができます。
ポケモンを見つけたら、
モンスターボールを投げて捕まえよう!」

ポケモンPRのキャッチ・フレーズです。
ゲームに夢中で、家のなかに閉じこもった子どもたち。
外に出て遊んでほしいという思いから開発されたとか。
大人まで夏の虫になって外で遊んでいるようです。

              

今日で8月も終わります。夏休みもおしまい。
宿題が山と残ってるという悪夢。見なくなって久しいです。
北海道では洪水の被害が・・・心よりお見舞い申し上げます。

                   遅足




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雲つかみ風をいなしてあめんぼう   晴代

2016年08月30日 | Weblog
水の上を自由自在に行き来するあめんぼう。
まるで水面に映った雲をつかんでいるようです。
急に吹く強い風もかるくいなしています。
「雲」「風」「あめ(雨)」が詠みこまれています。

写生をベースに、しかも写生を越えた面白い句です。
作者のあこがれの生きかたでしょうか。

  行く雲のひとひらに乗り水馬  深沢暁子

          

名古屋は太陽が顔をだしてきました。
台風10号が予想より東へ進路をかえたようです。
今年の台風は、なぜか、北を目指す癖があります。
例年なら北海道は観光客であふれているでしょうに。
台風の進路にあたる皆さんは十分に用心して下さい。

                 遅足

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夏蝶や樋口一葉若死す   佐保子

2016年08月29日 | Weblog
夏蝶といえばアゲハチョウを思い浮かべます。
最近では黒くて大きなナガサキアゲハも飛んでいます。
春の蝶よりも大きいものが多い、生命力に溢れ、
力強いイメージがあります。

そんな夏蝶に、明治の作家・樋口一葉の姿を重ねた句です。
最初、読んだときは、?という感じでしたが、
句会でのみなさんの意見を聞いて、
取り合わせの良さが分かってきました。

一葉は僅か24歳で亡くなってしまいます。
「たけくらべ」「十三夜」などの作品が残されました。
天がもう少し寿命を授けたら・・・と思わずにはいられません。

                  遅足


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問われたる琉球処分蝉時雨   能登

2016年08月28日 | Weblog
今の沖縄県は、江戸時代までは琉球王国でした。
明治政府は琉球王国を滅ぼし、日本国家に組み込みました。
これを琉球処分と呼んでいます。
平成の今、100年以上前のことが問われている、と句は訴えています。

明治政府は、清国との冊封関係・通交を絶ち、明治の年号使用、
国王らに上京することなどを迫りました。
しかし、琉球は従わず、武力を背景に処分を決めたのです。

安倍政権は、基地問題で沖縄県民の声を聞こうとしません。
そして威圧的態度で臨んでいます。
これが、琉球処分と同じであるという批判を招いているのです。

初句の「問われたる」で、問われているのは本土の私たちです。
蝉たちも大きな声で問うているようです。

            

「創」という雑誌を読んでいたら、こんな話が載っていました。
東京へ転勤となった琉球新報の記者。さっそく住まいを探しました。
ところが不動産屋さんから、こんなことを言われたそうです。
「家主さんが琉球新報には部屋を貸したくない」と言っていると。
信じがたいことですが・・・
「沖縄の新聞はつぶせ」という声がある昨今、恐い話です。

                        遅足
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目覚むれば網戸を叩く夏の虫   立雄

2016年08月27日 | Weblog
夜中に物音で目が覚めました。網戸を叩く音がします。
深夜の訪問者はダレでしょうか?
黄金虫?蝉?あるいは・・・

結宇さんも夏の虫を詠んでいます。

  夏虫かしばらく後のかゆみあり

こちらは昼間でしょうか。二の腕にかゆみが・・・
見ると、小さいですが、赤く腫れています。
さっき草むしりをした時に刺されたのでしょうか。
一体、なんの虫だったのか?
ちょっと気になりますが、大したことはなさそう。
塗り薬でもぬっておきましょう。

いずれも虫の種類を特定できないケースを上手に捉えて句に。
こういう作り方もあるのですね。

                 遅足


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日系一世と戦争~取材こぼれ話~   竹中敬一

2016年08月26日 | Weblog
32年前、テレビ番組の取材でアメリカのシアトルへ行ったことがあります。
明治から大正にかけて日本から渡米した人たちと沢山お会いしました。
当時、すでに皆さんは八十歳を超えていました。
女性の多くは、一足先に渡った日本男子の写真だけを頼りに、
呼び寄せられた「写真結婚」の人たちでした。

こうした日系一世のお一人、安武秀子さんは当時、八十三歳。
ご主人はすでに他界されていましたが、日米開戦(1941)と同時に、
ご夫妻は2人の子供と共に、アイダホ州のドミニカ強制収容所に入れらました。
日本人の強制収容所は全米で十ヶ所ありました。

安武ご夫妻の二男、敏郎さんは日系二世の志願兵として 、
ヨーロッパ戦線でアメリカのために戦いました。
日系二世の人たちはアメリカへの愛と忠誠の証として、
第二次大戦に約二万六千人が軍隊に志願したと言われています。
我が子をアメリカ兵として戦場に送り出した
安武秀子さんの心境はいかばかりだったでしようか。

取材ノートを整理していたところ、安武さんに関するメモが出てきました。
その中に日米開戦の頃の心境を秘かに綴った川柳を見つけました。
放送では使っていません。

  捕はれの身に 名月も親しめず

  生かしとく程度に同胞 虐められ

  子の志願 親の立場をぐらつかせ

  市民権 呉れない国に子を捧げ

志願兵になった敏郎さんは、無事帰還、シアトルで医師をしておられました。

取材中、ある老人が語った一言が印象に残っています。
「今でも差別はなくなったわけではなく、何かの折に噴き出します。
私たちはそれが怖くて、できるだけ波風がたたないように、
静かに暮らしているのです」

             

この一年後に、今度は日系一世の足跡を追ってブラジルへも行きました。
ブラジルでは終戦直後、日系人の間で日本が勝ったとする「勝ち組」 と、
いや日本は負けたのだとする「 負け組」 が対立、
血で血を流う抗争があり、そのしこりがまだ尾を引いていました。
「勝ち組」の中には、今なお「神州日本は敗れず」として、
毎朝、自宅で明治天皇の厨子に向かって手を合わせる人もいました。
この写真はその時、撮ったものです。

同胞同士、肉親同士をも引き裂く戦争はもうこりごりですねぇ。

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藤城清治展     麗

2016年08月25日 | Weblog
先週の句会の前に、マツザカヤで行われていた「藤城清治展」に出かけました。
92歳の影絵作家。以前、美術番組で藤城さんのことを知り興味を持っていました。
今NHKで放送中の「とと姉ちゃん」の花森安治さんと20代の頃に出会い、「暮らしの手帖」で影絵の連載もされていたそうです。

実際に見てみてその作品の多さにびっくり。おなじみの、メルヘンの世界から、藤城さんのシンボルとも言える「生きる喜び」と呼ぶ「こびと」の存在、愛する猫ラヴィイちゃんやかわいい動物たち、そして全国を旅して東北や熊本などの被災地を訪れスケッチをし、それを繊細なレースのように切り取り様々な色の光を当てる影絵の数々。

藤城さんはカミソリの刃で影絵を制作。その手は傷だらけになっていても、葉っぱの一枚一枚を細かく切っていきます。何百枚という無数の葉を切り取るとき、おのずと願いや祈りが折り重なっていくそうです。藤城さんにとって影絵は「光と影の祈りの芸術」だそうです。

折しも先週の土曜日、藤城さんのドキュメンタリーをテレビで見ました。最新作は多くの特攻隊が旅立った知覧を訪れたものでした。零戦が満開の桜の中を開聞岳にむかって飛び立っていく悲しい作品。「平和の世界へ」。
とても悲しい作品ですが、そこにも、悩んだ末に生きる喜びである「こびと」を登場させ、今を生きている私たちに平和の大切さを訴えていました。
戦争は自分が描くものではないと思っていた藤城さんが初めて戦争をテーマにした作品です。

写真は「悲しくも美しい平和の遺産」という原爆ドームの影絵。おびただしい数の折鶴とドームに腰かけ、笛を吹くこびと。こんなに明るい色彩の原爆ドームの絵を見たのは初めてでした。
原爆ドーム自体が私には壮大な影絵に見えました。8月はこの絵はがきをピアノの上に飾ることにしました。

光と影の美しさにすっかり魅せられた私は、いつの日か那須高原にある藤城清治美術館にも行きたいと思っています。それにしても92歳で創作意欲が衰えないとは芸術家のエネルギーにはおそれいりました。

           八月や祈りの心影絵にす  麗
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初熊蝉三日遅れの油蝉   静荷

2016年08月24日 | Weblog
蝉を詠んだものが一番多く5句。
やはり一番馴染みのある夏の虫ですね。

子供の頃にはクマゼミは見たことがありませんでした。
それが何時の間にか、夏になると最初に耳にするように。
句のように、まずクマゼミが鳴き、数日遅れて油蝉の声。
身体も声もクマゼミのほうが大きいようです。
ニイニイ蝉の鳴き声をきくことがほとんどありません。
今は法師蝉の声が聞こえるようになりました。秋です。

クマゼミは西の方から次第に勢力分野を広げてきたようです。
原因は都市のヒ-トアイランド化と、地球温暖化とか。

気がつけば、虫の世界ばかりでなく植物の世界も様変わり。
昔からのアサガオは少なくなり、琉球アサガオが目立ちます。
花をつける期間が長いのが人気の秘密でしょうか。
身の回りの自然の変化に眼を注いでいくのも俳句の醍醐味。
それにしても変わり方の激しさに改めてビックリしています。

          

東日本や北海道が洪水に。一方、西日本は猛暑。
長い日本列島ならでは。
そちらの雨を少しこちらへ。       遅足


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玄関に刺客の気配蚊に討たる   亜子

2016年08月23日 | Weblog
小さな蚊に刺されたことをユーモラスに詠った句です。
自己を客観視しているというか、生活を楽しむ余裕が感じられます。

高層マンションに住んでいる作者。
蚊は高いところまで飛んでこないのでは?とお聞きしたら
エレベーターに乗って、やってきます、とのこと。
頭のいい蚊もいるものです。
そして玄関に身を隠して、人が現れるのを待っているのでしょう。

子供の頃、嫌いな虫の代表は蚊と蠅でした。
それが何時の間にか蚊だけになっています。
蠅の姿を見ることが少なくなっています。

下水道の完備、水洗トイレの普及など、
生活が衛生的になった結果でしょうね。
蠅叩きなども姿を消してしまいました。

                   遅足
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滅びたる王家の印火蛾の紋    遅足

2016年08月22日 | Weblog
夏の夜に灯火に集まってくる虫を火取虫(ひとりむし)と言います。
なかでも多いのが蛾で、火蛾とも灯蛾ともいいます。
「飛んで火にいる夏の虫」といいますが、
なぜ、火のなかに飛び込むような行動をとるのでしょう?
あるいは灯に集まってくるだけなのかも知れませんが・・・

蛾の翅には身を守るために様々な模様があります。
天敵の目をくらますカモフラージュ作戦をとるもの。
恐ろしい模様で威嚇するものなど。

王家の紋章は自分たちの権威を誇示するものでしょうね。
句は、自ら火の中に飛び込んでいく蛾の行動を、
運命に従って、滅びていった王家に喩えたものです。


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敗れたり蚊と闘って草むしり    すみ

2016年08月21日 | Weblog
蚊と人間との戦いは長い歴史があるようです。
以前、テレビで、アフリカの草原を歩いて、
蚊遣火に使う草をとりにいく人が紹介されていました。
往復に丸一日かけての薬草採りです。
おそらく今、私たちがお世話になっている蚊取り線香と
同じ効果がある草なのでしょう。

子供の頃には、蚊帳を吊って寝ていました。
網戸のお蔭で快適な生活が送れるようになりました。
さまざまなグッズもあります。
私も、草むしりには、蚊除けネットのついた帽子をかぶり、
手袋に蚊除けスプレーと、万全の防御態勢で臨みます。

しかし、痒い。いつのまにか、蚊はネットのなかに侵入。
蚊には負けます。雑草にも負けてしまいました。
まさに「敗れたり」です。

蚊はメスだけが産卵のために血を吸うそうです。
母の愛は鉄よりも強し・・・
生存がかかっているから必死でしょうね。   遅足


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8月句会の最終結果です。    遅足

2016年08月20日 | Weblog
8月句会は8人の出席。あめんぼうと蝉の殻が最高点でした。


題詠「夏の虫」

①敗れたり蚊と闘って草むしり(すみ)佐保子・等・立雄
②滅びたる王家の印火蛾の紋(遅足)佐保子・結宇・静荷
③玄関に刺客の気配蚊に討たる(亜子)郁子
④初熊蝉三日遅れの油蝉(静荷)智恵・麗子
⑤目覚むれば網戸を叩く夏の虫(立雄)能登・智恵・麗子
⑥問われたる琉球処分蝉時雨(能登)遅足・静荷・亜子・狗子
⑦夏蝶や樋口一葉若死す(佐保子)能登・すみ・亜子・晴代
⑧雲つかみ風をいなしてあめんぼう(晴代)結宇・すみ・遅足・狗子・等・郁子・立雄
⑨夏虫かしばらく後のかゆみあり(結宇)晴代
⑩ポケモンに引寄せられる夏の虫(郁子)狗子
⑪わが耳の闇に届かぬ蝉時雨(等)能登・佐保子・結宇・すみ・遅足
⑫ピカチュウにおびき寄せられ夏の虫(麗子)郁子
⑬蝉叫ぶ断末魔なり大目に見(智恵)
⑭渾身の変身のあと蝉の殻(狗子)智恵・静荷・亜子・晴代・等・麗子・立雄


自由題

①電柱の陰伝いゆく残暑かな(能登)結宇・静荷・亜子・狗子・等・立雄
②友逝きてはや一年(ひととせ)や遠花火(立雄)能登・智恵・佐保子
③亡き叔母の生日近し花芙蓉(佐保子)
④ひと消えて影が墓標に原爆忌(亜子)結宇・すみ・静荷・郁子
⑤底紅の濁りてへくそかづらかな(静荷)佐保子・遅足
⑥冷蔵庫閉めて此の世へもどる音(遅足)すみ・狗子・晴代・郁子・麗子
⑦紅うすくさし外出(そとで)する残暑かな(晴代)智恵・すみ・等
⑧ニッカポッカ足場行きかい玉の汗(すみ)亜子・晴代
⑨積読のページ繰りゆく夏嵐(結宇)能登・狗子・立雄
⑩アスファルト溶けプールバッグの重たさよ(郁子)結宇
⑪雷走る平然と立つガードマン(等)智恵・佐保子・亜子・晴代・麗子・立雄
⑫秋暑し父一人立つ台所(麗子)能登・遅足・静荷・等・郁子
⑬回転に泳ぎに技に身の縮む夏(智恵)
⑭ジャンボくじ散らばっている夏座敷(狗子)遅足・麗子


次回は9月21日(水)午後1時20分  
愛知芸文センター12階・催事室Ⅾ(アートスペースⅮ)です。
題詠は「風」です。
季語ではありませんので、秋の句でお願いします。




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平塚雷鳥さんに会ったこと。 ーカメルポ「 女性解放 」ー

2016年08月19日 | Weblog
NHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」の中で女性解放運動家、
平塚雷鳥さん(1886-1971)が取り上げられていましたが、
これを見ていて、半世紀近く前に手がけたテレビ番組のことを思い出しました。

昭和42年に制作した「カメラ・ルポルタージュ この100年ー女性解放ー」です。
この番組で私は当時、80歳になる平塚雷鳥にインタビューしています。
場所は、東京世田谷成城のご自宅で、一人で住んでおられました。
女闘士を想像していたのに、お会いすると、気品のある穏やか物腰で
インタビューに応じてくださったのを、今でも覚えています。

幸い当時、私の書いた台本が残っていました。その一部を抜粋します。
(本文中、Qはナレーションを、「  」はインタビューの内容です)

Q 明治44年、日本で初めて女性の手で雑誌「青鞜( せいとう)」が創刊されました。
「 元始女性は実に太陽であった。」
平塚雷鳥さんのこの熱っぽい調子の一文は、古い殻から
脱しきれずにいる当時の女性をめざめさせました。
平塚さんは「 青鞜 」創刊当時を振り返って
「編集をすべて終えてから、深夜自宅で静座後、
夜明け頃までに一気に書きあげたものでした。
自分の心持ちが何者の抑圧も受けずに、ここに吐露されており、
私自身は、ぜんぜん予想もしなかったことですが、
同じ時代の若い女性の魂を揺り動かすことになったのです。」

番組では明治時代、牛馬のように働かされた女性たちの証言も取り上げています。
愛知県一宮市では、ある小作人が娘を機屋( はたや) に年期奉公に出した時の
珍しい証文が見つかり、紹介しています。

Qこの証文には、地主に年貢がどうしても払えないため、娘をあなた様の所で八年間、
奉公させてやってください。その労賃は娘に渡さず、すべて地主方へ直接、お送り願いたく思います。
と凡そ、このように書かれています。
彼女たちが働く紡績工場のまわりには、牢獄を思わせる高く厚い塀がめぐらされいました。

また、一宮地方で明治、大正にかけて歌われた機屋唄を女工だった三人の生存者が覚えていて、
再現してくれました。
「年期奉公 一枚紙に 封じ込められ ままならぬ 」
「主も下人(げにん)も生まれは一つ 奉公せるだけ 身のさがり」
「機屋旦那さん かぼちゃのつるじゃ よさりはいずる どこまでも」
「わたしゃこなたの旦那のめかけ 仕事してよし せんでよし」
「年期奉公に出すよな親は 親でござらぬ 子の敵」
「腹が減ったで框( かまち) が打てぬ 縞が薄ても わしゃ知らぬ」

Q愛知県春日井市に住む加藤静子さん( 64 )
加藤さんは、大正6年、当時15歳の時、自宅から凡そ3キロはなれた紡績工場へ働きに出ました。

Q大正5年、工場法が実施され、労働時間は12時間と定められましたが、
加藤さんたちの工場では、朝の5時から夜10時まで、一日17時間みっちり働かされたと言います。
加藤さんは働きに出て半年たったある冬の日、あまりの辛さに耐え切れず、
ついに、工場から脱走を試みました。
「手がぽんぽんに腫れて、あまり寒いので、火鉢でちょっとの間、手を温めていますと、
急に、後ろから、きつくどなられ、ひどい目にあいました。
そこで、何も持たずに工場の人の目をのがれて、いっきに逃げ出しました。
その日は、寒い日で、それでも素足で一目散に家へ向ったのです。
家に着いて、母に実情を話すと、母も泣きました。
本当に今、思っても当時は辛かったですね。」

ここまで来て、ふと、今、こうした内容の番組を作ることができるか、考え込んでしまいました。
個人情報保護法や秘密保護法など言論統制に近い状況の中で、制作者は自粛規制するのではないか。

カメラ・ルポルタージュは昭和37年(1962)から昭和44年(1969)までTBSをキー局に
ABC( 昭和50年までTBS系 )、CBCが持ち回りで制作。
硬派の番組ながら「カメ・ルポ」と言われて親しまれ、人気がありました。
私たちは誰に云はれるわけでもなく、放送の中立性を守りながら、きわどい内容の政治、社会問題にも挑戦しました。

                                   竹中敬一

(なお、本文中に下人という言葉が引用されていますが、当時のままにお伝えします)遅足



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あの虫この虫虫句会    麗

2016年08月18日 | Weblog
昨日は、初めての愛知芸術文化センター会議室での句会。
お題は「夏の虫」でした。
蚊、蛾、油蝉、熊蝉、夏蝶にあめんぼう、抜け殻となった蝉から、この夏大流行のポケモンのピカチュウまでいろんな虫が、ぞろぞろ飛び出し、昆虫大辞典なみの夏の虫が勢揃いしました。オリンピック並みの難易度の高い、巧みな技ありの句も多かったですね。
今日は蝉の声がしません。八日目の蝉でしょうか?

では恒例の寸評です。

①「敗れたり」がいいですね。あんなに防御したにもかかわらず、蚊にさされてしまった悔しさ。
②ギリシャかエジプトの王家の紋かと思いました。蛾の紋様の美しさから滅びた王家まで思いを寄せる発想力。D難度の句ですね。
③玄関先の蚊を刺客と呼ぶ大げさな感じがいいですね。これまた合戦に負けちゃいました。
④先ず鳴き出す熊蝉、そして三日ほど遅れて油蝉が。蝉の鳴き声まで聞き分ける観察力。
⑤夜中網戸にぶつかってくる夏の虫。嬉しくない訪問者ですが彼らもまた生きているのですね。
⑥「琉球処分」に明治政府から現代に至る基地問題までの沖縄の苦難。そもそもは琉球王国を滅亡させたことから始まりました。蝉時雨は沖縄の民の声にも聞こえます。E難度。
⑦夏蝶ははかないけれど暑さに負けない強さも。若死にした一葉と重なるとの声。取り合わせの妙。
⑧水面に浮かぶあめんぼう。水面に映った雲をつかみ、風に負けないでいなして過ごす。実は雲、風、雨(あめんぼう)を取り込んだ遊び心溢れる句でしたが、あめんぼうの姿をうまく描写して見事、虫オリンピックのメダル獲得!
⑨刺された直後ではなく数日たってからのひつこいかゆみ。そういえば私も寝ている間にやられてます。
⑩ひきこもりのゲーマーも公園に引き寄せられるポケモンGO。夏の虫のようにぞろぞろと。
⑪誰もが闇をかかえています。実は耳鳴り、難聴で蝉時雨も聞こえなくなっている人も。魂の俳句。D難度。
⑫10番と全く同じ流行句。虫なのであえて「ピカチュウ」にしました。郁子さんと同じ感性でした。
⑬断末魔の叫びなのでけたたましい蝉の鳴き声も大目にみてあげましょう。
⑭「渾身」がいいですね。まさに渾身の一句。「蝉の殻」がもう少しという声もありましたが、こちらも見事メダル獲得です。

来月は「風」秋の季語も入れて下さい。どんな風が吹くのかお楽しみ。それにしても暑い夏。悪い虫も出てきそう。皆様ご自愛ください。
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8月句会の投句が集まりました。

2016年08月17日 | Weblog
今回の題詠は夏の虫。ポケモンやピカチュウも登場・
どんな結果がでるのでしょうか?


題詠「夏の虫」

①敗れたり蚊と闘って草むしり
②滅びたる王家の印火蛾の紋
③玄関に刺客の気配蚊に討たる
④初熊蝉三日遅れの油蝉
⑤目覚むれば網戸を叩く夏の虫
⑥問われたる琉球処分蝉時雨
⑦夏蝶や樋口一葉若死す
⑧雲つかみ風をいなしてあめんぼう
⑨夏虫かしばらく後のかゆみあり
⑩ポケモンに引寄せられる夏の虫
⑪わが耳の闇に届かぬ蝉時雨
⑫ピカチュウにおびき寄せられ夏の虫
⑬蝉叫ぶ断末魔なり大目に見
⑭渾身の変身のあと蝉の殻


自由題

①電柱の陰伝いゆく残暑かな
②友逝きてはや一年(ひととせ)や遠花火
③亡き叔母の生日近し花芙蓉
④ひと消えて影が墓標に原爆忌
⑤底紅の濁りてへくそかづらかな
⑥冷蔵庫閉めて此の世へもどる音
⑦紅うすくさし外出(そとで)する残暑かな
⑧ニッカポッカ足場行きかい玉の汗
⑨積読のページ繰りゆく夏嵐
⑩アスファルト溶けプールバッグの重たさよ
⑪雷走る平然と立つガードマン
⑫秋暑し父一人立つ台所
⑬回転に泳ぎに技に身の縮む夏
⑭ジャンボくじ散らばっている夏座敷

会場は、 愛知芸文センター12階・催事室Cです。

     

今日も酷暑。熱中症危険とのこと。
いつまで続くのでしょうね。     遅足









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