575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

秋灯し廃寮ちかい窓に翅  千香子

2023年10月27日 | Weblog

老朽化で廃寮が取りざたされている京大の「吉田寮」をテレビでご覧になって詠んだと作者から伺いました。

私はよく知らなかったのですが、吉田寮は築年数110年にもなる日本最古の学生自治寮なのですね。風呂なし鍵なし上下関係なし。最高の秀才たちが集ってそれこそ口角泡を飛ばし、夜通しこの国のことや青春の熱い思いを語り合ったのだろうと推測すると、趣深い句だと思います。

 

竹葉さん: 「窓に翅」で、古びた窓に翅を広げてとまってる主のような虫が目に浮かび、「廃寮」らしさがよくでてるし、そこには詫びしさを感じさせるうす明るい白熱灯がぼうとともってることでしょう。なんか昭和が終わるようなジーンとさせる句です。

晴代さん: 翅の字が廃寮の寂れていく様子をものがたっているようです。

泉さん: 寂しさを感じる。泉

佐保子さんと私もいただきました。

 

  網戸もかなり痛んだ窓辺にいつからいるのか蛾か蝶か。薄暗い廊下の切れかけの蛍光灯の点滅が見えるようでした。

千香子さんはどこかで見て印象的だった大きな蛾がペタッと貼り付いている景をいれたかったとか。ただ「蛾」となると季節が夏。

「翅」という文字を選んだということですがお見事でした。翅は薄くふるえるイメージ。はかなさと侘しさが強調されるようです。  郁子

 

 

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歳時記を行きつ戻りつ秋灯下

2023年10月26日 | Weblog

作者の竹葉さん。「今月は外から見る秋の灯と、秋の夜長の灯下と二つの景色があるので色々作っては見た」とのことでした。この句は後者の秋の夜長の灯下を詠んだもの。中七の「行きつ戻りつ」に句作りに奮闘する様子が伺えてほほえましいです。

童子さん:考えても考えても、ひねくりまわしてもなんか違うぞと。推敲迷子になります。その心情がよくわかります。

容子さん:心落ち着く、ぜいたくな時間です。

遅足さん、千香子さんも採られています。

        さざなみやLEDの秋灯下  佐保子

こちらは琵琶湖畔でしょうか?さざなみの向こうに明るいLEDの灯りがみえたのでしょうか?それともLEDの灯りがさざなみのように揺れて見えたのでしょうか?思い出の景色かも知れませんね。秋の夜長。いろんな気持ちが揺れ動きます。心落ち着けてひとつひとつじっくり向かい合いたいと思いました。麗子

 

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えんぴつの父の文字よむ秋灯下  遅足

2023年10月20日 | Weblog

灯火親しむ秋

今月の兼題で千香子さんは読書の秋から、文字を読むイメージの句を選んだということでした。その中でも特に票を集めた宗匠の秀句です。

童子さん: お父様の日記でしょうか。ひらがなの「えんぴつ」が人柄を表しているようです。

麗子さん: 古いノートかお手紙でしょうか?お父様の文字を懐かしく読む秋灯下。当時のお父様の状況を思い出し懐かしさでいっぱいになりますね。

能登さん: 鉛筆書きの父の文字こそ秋灯のもと読むにふさわしい。しみじみとした佳句だとおもいます。

 容子さんは こんなことを想起されました

実家で本の整理をしていたら、祖父がえんぴつで単語の意味をぎっしり書き込んだチャーチルの「第二次世界大戦回顧録」が見つかりました。

「どうせ最初の2~3ページで終わりだろう」と頁をめくったら、分厚い本の最後まで書き込みが。

父ではなく、話したこともあまりなかった祖父の"文字"でしたが、そんなことがあったので共感。何にせよ、ふいに見つける生きていた"気配"は嬉しいものです。

亜子さん: えんぴつは昭和の筆記用具。「えんぴつ」が効いている。

 

この選句コメントに加え「辛口で言わせていただくと・・」と亜子さんのお茶会句会添削!!

 文字とあるなら「よむ」はあたりまえ。私ならこの二文字を使って「くせ文字」といれるかな。。と。

亜子さんのお父さまは個性的な文字をお書きになったとか。

  えんぴつの父のくせ文字秋灯火

温かみのある灯火のもとで読む懐かしいえんぴつ文字、そのお人柄も偲ばれる。

一同感服のため息をもらした瞬間でした。  郁子

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ひとり家の早めに点ける秋灯  能登

2023年10月19日 | Weblog

暑いほどの秋晴れの中、昨日、俳句の結果をネタにお茶会を開催しました。今回は6名の参加でしたが半年ぶりにお目にかかれ楽しい一時を過ごせました。残念ながら欠席となってしまった佐保子さん、体調はいかがですか?

皆さんの近況報告や俳句の鑑賞の仕方、亜子さんの鋭い指摘。選句の思い違いなどいろいろおしゃべりし、おいしいケーキとともにお口も滑らかに。参加できなかった方のコメントもご紹介して対面ならではの楽しいお茶会となりました。皆さまありがとうございました。

さて、二か月連続のトップ賞の能登さんの秀句。「秋燈」というちょっと難しい季題でしたが「秋灯し」という行為が切なくも秋の夕暮れを象徴する素敵な句でした。「早めに」がポイントだと一同納得しました。では皆さんの選句のコメントをご紹介します。

須美さん:一人暮らしをしていた父のことを思い出した。早めにつけるがいい。

童子さん:わたくしはひとり家が恐ろしく長〜いのですが、この様な生活句は作れません。というのも暗くなってから帰宅しますので。笑

黄昏時早めに灯をともす日々は、来年くらいにようやく来そうです。

晴代さん:点灯するだけでもほのかな暖かさにつつまれます。

亜子さん:◎の句。早めにつける我が家の門灯。秋の日はつるべ落とし。ぼんやりしているとあっという間に暗くなる。「早めにつける」がいい。「能登さんはお一人暮らしなのかしら?」

泉さん:一人暮らしの母が夜になると灯が恋しいと言っていたのを思い出す。

郁子さん:日も短くなってという意味と、ひとりが心細いという気持ちが表れている良句と思います。

     ★★★

私もいただきました。一人暮らしの夕暮れは取り立ててすることもなくどこか手持ち無沙汰でしょう。いち早く門灯をつけたのでしょうか。同時に今日も一日無事に終わった安堵感も感じられます。うちも95歳の父や91歳の義母が一人暮らしをしています。夕方は心淋しいかと思い安否確認と称して電話しています。

能登さん、またよかったらお茶会にもぜひご参加くださいね。       麗子

 

 

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10月「秋燈」結果発表!

2023年10月18日 | Weblog

2023年10月「秋燈」

  1. 歳時記を行きつ戻りつ秋灯下 (竹葉)童子 麗子 遅足 容子 千香子
  2. さざなみやLEDの秋灯下 (佐保子)
  3. えんぴつの父の文字よむ秋灯下(遅足)童子 麗子 能登 晴代 容子 千香子 亜子
  4. 秋の灯や音信絶えし筆の跡 (亜子)容子
  5. 秋燈や線引きふえし住所録 (晴代)須美 能登 遅足 千香子
  6. 秋の灯や老母の両手とる姉妹 (郁子)竹葉
  7. 秋灯し廃寮ちかい窓に翅 (千香子)竹葉 佐保子 晴代 泉 郁子
  8. 秋燈やあれがわたしの帰る場所 (容子)竹葉 遅足 佐保子 亜子
  9. 道しるべ僧の秋の灯高野山 (泉)
  10. 秋燈や街道沿いにぽつぽつと (麗子)泉
  11. 秋の灯や母の形見のガレ洋燈 (須美)能登 郁子
  12. ひとり家の早めに点ける秋灯(あきともし)(能登)須美 童子 麗子 佐保子 晴代 亜子 泉 郁子
  13. 秋の燈や落語家の八掛見たり (童子)須美

 

 

自由題

  1. 大空に雲のアートや今朝の秋  (亜子)竹葉 麗子 郁子 遅足 佐保子 晴代 千香子 泉
  2. 越前の天守に高く鱗雲 (麗子)能登 遅足
  3. 茶巾より恵那山の出ず栗きんとん(郁子)童子 千香子 亜子
  4. 雨うがつ穴へ木の実の落ち着きぬ (晴代)須美 童子 竹葉 能登 遅足 佐保子 容子 泉
  5. 秋の朝若きへジャブら老健より (千香子)須美 麗子
  6. コロナ明け車上の御輿過疎の村(泉)能登 郁子 容子 千香子
  7. よき声の閻魔こほろぎ帰り道 (佐保子)麗子 郁子 晴代
  8. 手土産は巨大冬瓜ベランダへ (須美)
  9. 無花果や溢るる想い沁む割れ目 (竹葉) 亜子
  10. 居ぬひとの想いを食す秋刀魚かな (能登)須美 童子 竹葉 佐保子 晴代 容子 亜子
  11. 鳥一つ二つ寝所へ暮の秋 (童子)泉
  12. 錦秋の舞台に母の笑みうつつ (容子)
  13. カラオケのマイクや星を光らせる (遅足)

 

トップ賞は

兼題  絶好調の 能登さん

自由題  亜子さん 晴代さん

  おめでとうございます 

 

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秋燈の句が揃いました。

2023年10月17日 | Weblog

秋晴れが続いています。日暮れが早くなりましたね。いろんな秋の灯が灯りました。

明日の結果をお楽しみに。

2023年10月「秋燈」投句一覧

①        歳時記を行きつ戻りつ秋灯下 

②        さざなみやLEDの秋灯下 

③        えんぴつの父の文字よむ秋灯下

④        秋の灯や音信絶えし筆の跡 

⑤        秋燈や線引きふえし住所録 

⑥        秋の灯や老母の両手とる姉妹 

⑦        秋灯し廃寮ちかい窓に翅 

⑧        秋燈やあれがわたしの帰る場所 

⑨        道しるべ僧の秋の灯高野山 

⑩        秋燈や街道沿いにぽつぽつと 

⑪        秋の灯や母の形見のガレ洋燈 

⑫        ひとり家の早めに点ける秋灯(あきともし)

⑬        秋の燈や落語家の八掛見たり 

 

自由題

①        大空に雲のアートや今朝の秋  

②        越前の天守に高く鱗雲 

③        茶巾より恵那山の出ず栗きんとん 

④        雨うがつ穴へ木の実の落ち着きぬ 

⑤        秋の朝若きへジャブら老健より 

⑥   コロナ明け車上の御輿過疎の村 

⑦        よき声の閻魔こほろぎ帰り道 

⑧        手土産は巨大冬瓜ベランダへ 

⑨        無花果や溢るる想い沁む割れ目 

⑩        居ぬひとの想いを食す秋刀魚かな 

⑪        鳥一つ二つ寝所へ暮の秋 

⑫        錦秋の舞台に母の笑みうつつ 

⑬        カラオケのマイクや星を光らせる 

 

 

 

 

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白き米噛む度浮かぶ稲田かな  竹葉

2023年10月13日 | Weblog

食欲の秋・・

のはずが、このところの寒暖差で調子を崩し食欲減退、インフルエンザ大流行などときくと、季節感も体感もかなりずれていく思いです。

でも「新米」の美味しさは不動です!(笑)

亜子さん: 日本の原風景である稲田を詠んだ句。白米を炊いてその稲田のことを思い、素朴な感覚で詠むのもいい。

泉さん: 新米がでる季節、白米をかむと田園風景がでてくる。

私もいただきました。稲の成長を見守っていたならなおさら美味しく感じられたでしょう。刈入れ時の黄金の稲田をおかずに食べる白米!豊かな食卓です。ごちそうさま。

 

そしてこの時期、ぶどうも多彩な種類か並んでいます。

 葡萄剥き爪紫に甘露落つ  須美

能登さん: 葡萄は美味しいんですが、手が汚れ美味しいジュースが零れ、ですよね。

麗子さん: 漢字の多い句。「寒露落つ」で葡萄のしたたる様子がよくわかります。

葡萄を剥く手元のアップがリアルで甘い香りまでしてきそうですね。

 

 おおつぶのぶどうほおばりあっぷっぷ  郁子

須美さんからあっぷっぷが面白いと言っていただいたこの句ですが 我が家の三人娘の小さい頃の思い出です。

あっぷっぷというのは溺れそうというのではなく、にらめっこです。。

大粒のものはなかなかに高価。口にほおばりいつまでも堪能する間ににらめっことなりました。

   

器官につまるかもなどという危機意識には てんで疎い未熟な母親でしたが、事故もなく無事に育ってくれて感謝です。

そういえば唐辛子を触った手で目をこすってしまった子もいたなあ。。  郁子

 

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嵐の夜蔓に止まりし秋の蝶  麗子

2023年10月12日 | Weblog

秋晴れの昨日、朝顔の種を収穫しました。春に種をまき、双葉から成長し、やがて上へ上へと蔓を這わせて夏の間毎朝、優しい水色の花を咲かせてくれました。今年もたくさんの種が取れました。

この朝顔は亡き母が故郷九州の庭から持って来たもので、母から種をもらい我が家にもやって来ました。

そんな母が愛した朝顔の蔓に、8月の台風の夕方、一羽の揚羽蝶が止まっていました。一夜経ってもまだそこにいたので写真を撮ろうとしたら逃げて行ってしまいました。。。「あれは母の化身だったのかも?」と思っています。

竹葉さん:嵐、夜、蔓とが秋の蝶の弱さをよく出してると思います。

須美さん:蔓にとまる蝶の必死さが伝わる。

       ★★★

ありがとうございました。麗子

 

 

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一歩出て押しもどされる暑さかな  晴代

2023年10月06日 | Weblog

7・8・9月と、全国の平均気温が統計開始以来126年ぶりの最高を記録した今年の夏。世界規模の現象で地球沸騰とまで言われました。

熱波を浴びるような暑さの表現がとてもお上手です。

竹葉さん: たじろぐ様な暑さと秋になっても暑さが戻ってくる感じもしてこの夏の猛暑を上手く詠んでると思います。

麗子さん: 今年の酷暑の様子がわかる実感の句。まさに押しもどされた日々でした。

亜子さん: ◎の句。暑さを「押しもどされる」と擬人化している巧みな表現。

泉さん:  今年の夏は暑い!少しは涼しくなるかなと思っても、9月半ばを過ぎてもまだ暑い。

 

もうひとつ。残暑の厳しさに加え、営業マンの厳しさも感じる一句です。

 秋暑しチャイムを前にセールスマン  千香子

能登さん: ほんと、今年の暑さはこんな感じでしたね。

郁子: いつまでも暑い。上着をちゃんと着て各家を訪ねるセールスマンはさぞ過酷であろうと同情しつつも しつこく食い下がられるのも辛い。

「秋暑し」の季語がぴたりはまります。

遅足さんもとられました。

  

インターホン画面に映る若者。

「あのー僕、この度この地区の担当になりました○○といいます。ご挨拶したいのでお玄関口までどうぞ!」

どうぞ? 歌番組の司会者か!(笑) 何人もの人が言うということは 訪問マニュアルの決め言葉だったようです。

インターホンを押す前にセリフのごとく暗記して、ピンポンと押すのでしょう。。

さて その残暑も嘘のよう。季節は一気に深まる秋の様相です。

ジェットコースター並みの気温の急降下に秋バテなどおこしませんように。 郁子

        

 

 

 

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亡き父の表札下ろし蝉しずか  童子

2023年10月05日 | Weblog

自由題で見事トップ賞に輝いた童子さんの秀句。作者の童子さんからは

「7月から実家のリフォーム中です。ようやく亡き主人の表札を下ろしました。蝉の声もツクツクボウシに変わっています。」というコメントがついていました。

「表札を下ろす」という表現で全てを語り、一つの人生が終わりを迎えた感じがします。ここに至るまでにいろんな思いが錯綜したことと思います。気づけば蝉の声も静かになっていたのですね。今、実家じまいとか墓じまいまど、終活のことが取り上げられる度に得も言われぬ複雑な気持ちになります。

竹葉さん:とうとうお家終いでしょうか。その重い心が決然としてる様に感じるのは「下ろし」の表現と「蝉しずか」で、心もしずかだと言ってるようで、素晴らしい句だと思います。

須美さん:寂しさが伝わる。

晴代さん:やっと心が落ち着いたのでしょう。

郁子さん:親の古いお家を壊すことになったのでしょうか。思い出の品々を処分し、最後に表札をはずす。気持ちの整理ができたということが、蝉の鳴き声がしずかというのでわかります。

泉さん:寂しい句です。主が代わり、うるさい蝉も静かにおとなしくしている。

亜子さん:お父様が亡くなりフルネームの表札をはずす。ふと気づくと昨日まで鳴いていた蝉がピタっと鳴いていない。蝉も喪に服しているのであろうか。死と表札と蝉という取り合わせがうまい。

         ★★★

空き家問題など今後日本の家の形態も変わっていく気がします。童子さんはご実家をリフォームされたとのこと。亡きお父様も喜んでおられることでしょう。また故郷、富山での暮らしについても俳句にしてくださいね。             麗子

 

 

 

 

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