575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

歳晩の 犇<ひし>めく聲に 夜の雨 <殿>

2021年12月31日 | Weblog

新種ウイルスの市中感染が報じられる年の暮れ。人々のざわめきが聞こえる渋谷に冷たい夜の雨が降ります。*575会員諸氏のみなさまへ。今年もご拝読ありがとうございました。元旦は駒ケ岳に吟行の予定。来年もよろしくお願い申し上げます。<殿>

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人気<ひとけ>なき 稲荷の闇に 狐見ゆ <殿>

2021年12月31日 | Weblog

都内の伏見稲荷。場所は東京駅に近い八重洲2丁目にあります。稲荷信仰において狐は神の使者。狐は嫉妬深く男女で参拝すると別離が訪れるという都市伝説があります。狐は不可議な印象を与えるのでしょうか。夜の伏見稲荷。連なる鳥居の闇に狐が潜んでいる感。

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2021年 575の会

2021年12月31日 | Weblog

大晦日です。

今年も一年いろいろありましたね。除夜の鐘をききながらメール句会に出された

兼題・自由題の秀句をふりかえってみるのも楽しいと思いまとめてみました。

 

初句会「大寒」

◆ 剃刀に大寒の夜の匂いあり  (遅足)

 

◇ 歳時記を棺に収め冬に入る  (亜子)

 

二月「春菊」

◆ 春菊や湯に放たれて踊りだす  (麗子)

 

◇ 鈍色(にびいろ)の 午後のどこかに 梅の花  (殿)

◇ 梅の木の枝ごと違ふ花の数  (佐保子)            

 

三月「お水取り」

◆ 火の粉あびどよめく闇やお水取り  (晴代)

◆ 暁闇を虫這い出づるお水取り  (竹葉)

 

◇ 三月のかもめ並んで黙祷す  (能登)

 

四月「春の雨」

◆ ボールひとつ置き去りしまま春の雨  (郁子)

 

◇ 桜散り明治と読める兵の墓  (結宇)

 

五月「五月」

◆ 四世代干し竿うめて五月晴れ  (須美) 

 

◇ 指揮棒に瞳集めて初夏の歌  (亜子) 

◇ 木洩れ日の白きひと筋今年竹  (竹葉)

 

六月「白靴」

◆ 白靴を浜に残して水遊び  (須美)

 

◇ 見開きの黴の香かすか蔵書印  (晴代)

 

七月「泳ぎ」

◆ 遠泳を語る遠い眼波の音  (郁子)

 

◇ 土臭き風連れ来る驟雨かな  (能登)

 

八月「稲妻」

◆ 稲妻やふいに鳴り出す大時計  (遅足)

 

◇ 置き去りの骨の慟哭終戦日  (亜子)

 

九月 「音を詠む」

◆ 白秋や墨磨る音の清らかさ  (麗子)

 

◇ ひつじ雲 群消えゆきて 宇宙見ゆ  (殿)

 

十月「秋日和」

 

◆ 観覧車視界百キロ秋日和  (竹葉)

 

◆ 離れ寄り園児の列や秋日和  (晴代)

 

◇ 眼鏡かけ小骨気にして秋刀魚飯  (須美)

 

十一月「帰り花」

 

◆ 返り花会いたい人に会えそうな  (麗子)

 

◆ 冥き世の淡彩の灯や帰り花  (能登)

 

◇ ふるさとの 蒼天を突く 百舌鳥のこゑ   (紅)

◇ こんもりと毛布に潜む猫地雷   (郁子)

◇ 寝返れば背骨の軋む夜寒かな  (亜子)

 

十二月「石蕗の花」

 

◆ つわぶきや黄色残して庭暮るる  (千香子)

 

◇ 播磨屋の逝ったその日の冬紅葉  (晴代)

◇ 揺らぐ火に過去見続ける焚火かな  (能登)

 

  

メールでの投句・選句が常態となりました。対面で句座は叶わなくとも

選句に添えられる皆さまのコメントが深みを与えてくれます。

これからもお力添えをいただきブログを充実させていきたいと思っておりますので

感想や要望、挑戦してみたい季語などお寄せいただければ嬉しいです。

来年もどうぞよろしくお願いいたします 【去年今年 貫くメール句会かな】

 

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石蕗や舞姫エリスの目に涙  遅足

2021年12月30日 | Weblog

今年も今日を入れてあと二日。厳しい寒さの年末になりそうですね。皆さん年越しの準備は進んでいますか?

私は掃除もおせちもなんとなく中途半端なままこのブログを書いています。

さて、遅足さんのこの句は、なんだか切なくてどんな思いで作られたのかな?とお聞きしたいところです。

手元にある常用国語便覧で「舞姫」のあらすじを調べてみました。

「秀才の青年官吏太田豊太郎は、家名再興・立身出世を意気込んでベルリンに留学。大学の自由な精神性に触れ、家に縛られた自分の生き方に疑問を感じ、自我に目覚めます。踊り子エリスとの交際を中傷されて免職された豊太郎はエリスとの幸せな日々を送ります。ところが友人の尽力に寄って日本での社会復帰の機会を得ます。故国への思いや名誉回復の願いとエリスとの板挟みで苦悩しますが、秩序への復帰を選び帰国する」とありました。

森鴎外の「舞姫」。実は恥ずかしながら読んだことはないのですが、冒頭の「石炭をば早や積み果てつ」と、なぜかエリスという女性が出てくることは知っていました。異国の悲し気なエリスの瞳と日本の秋の石蕗の花を取り合わせたところに魅かれていただきました。時間や国境を越えたなんともロマンティックな句だと思いました。

亜子さんのコメントです。

「高校生の時に「舞姫」を読みました。確か、小説の中で、主人公の青年と踊り子のエリスと出会った時

エリスが泣いていたのでは?貧しいエリスは身ごもりやがて精神を病むという悲しい結末と記憶している。エリスの淋しさが石蕗の花に通じる気がする。」

         ★★★

今年もお体の不調と闘いながら数々の秀句を作って下さった遅足さん。なかなか自由句までは手が回らないということでしたが、遅足さんの繊細かつ、独特の世界観は壮大で私たち575の会の支柱です。

来年もどうぞ穏やかに俳句を作り続け、迷える私たちを導いて行ってくださいね。

それでは皆さん、今年も大変お世話になりました。どうぞ、よいお年をお迎えください。麗子

 

 

 

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厨房の 冬菜茹でて 睫毛濡れ <殿>

2021年12月26日 | Weblog

京都の料亭での取材。湿気で電子機材が誤動作を繰り返します。困惑する撮影スタッフ。冬野菜を煮る湯気で睫毛が濡れます。

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教会の 人なき聖夜 紙の星 <殿>

2021年12月25日 | Weblog

生誕祭のあと無人となった教会。紙の星が床に落ちていました。聖樹から落ちたのでしょうか。ところで、イエスキリストが生まれたとされる生誕祭。実は生誕日はわかっていません。また、ケーキや七面鳥などのご馳走を食べることはありません。本来の生誕日は真逆の断食日といわれています。現在の生誕祭はミサのあとにクッキーとお茶を楽しむ程度。子どもたちには杖の飴が配られます。敬虔なクリスチャンにとって生誕祭は厳粛な祭事です。

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玻璃の星 駅の聖樹に きらめきて <殿>

2021年12月25日 | Weblog

特注といわれる玻璃の星を飾りつけた大聖樹。点灯されると拍手が沸き起こります。賑やかさを取り戻した京都駅の景。

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静かなるものに午後の黄石蕗の花 後藤比奈夫

2021年12月24日 | Weblog

今日はクリスマスイブ。

そこかしこ赤、緑、白、金などのカラフルなクリスマスカラーに溢れています。

石蕗はと言えば、黄色一択。今句会では、石蕗の「黄色」に焦点をあてた句が並びました。

 

黄を極め誰を待つかや石蕗の花  亜子

その黄色元気印や石蕗の花  竹葉

ゴッホばり南仏の黄色石蕗の花  能登

曇り空黄はゴッホの黄石蕗の花  結宇

石蕗の花と指さす君の黄のやさし  郁子

 

私(郁子)も、麗子さんとブラ散歩のときの思い出を詠ませていただき、

彼女の人柄とやさしい黄色をかぶらせ句にこめてみました。

面白いのは「ゴッホの黄」の句が偶然二句出たことです。

美術に関して門外漢の私でも、ゴッホの描く「ひまわり」の強烈な黄色なら頭に浮かびます。

そのゴッホが弟テオにあてた手紙の中で自分の作品によく登場する黄色について記しているのですが

あの黄色は、滞在した南仏アルルの太陽の光の色だというのです。それであの温かみのある色彩なのかと納得しました。

石蕗の花色と結びつける視点が面白いですね。

須美さんも「黄色の表現として、ゴッホばり南仏の黄色が素敵」とコメント。

お日さまの光を宿してほんわか黄色の石蕗の愛おしさが増しますね。

元気印の黄、明るい黄、希望の黄・・

そういえば、一番日の短くなる冬至にはいる柚子湯、あの柚子も黄色でした。

邪気をはらう色かもしれません。

オミクロン株などとまた新型コロナの脅威が増してきました。

どうぞ正しく恐れ、感染対策を万全にして楽しいクリスマスをお過ごしください。郁子

 

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寂庵に忌日生まれし石蕗の花  殿

2021年12月23日 | Weblog

高得点の殿様の秀句。ご本人のコメントです。

「石蕗<つわ>は、初冬の日陰にあっても明るく咲くため、

「自らを信じ、心の明かりを頼りに闇を歩む」という釈尊の

自灯明<じとうみょう>を表す花といわれています。

99歳で鬼籍の人となった瀬戸内寂聴。

自灯明により仏の導く道を歩んでいるのかもしれません。」

            ★★★

先月亡くなられた瀬戸内寂聴さんを悼んでの句です。自灯明の花というのが寂聴さんにぴったりですね。

作家としての活動はもとより嵯峨野に寂庵を構え多くの人に説法をし悩み相談に乗っておられました。明るい語り口調に笑いが絶えず、うちの亡き母も生前寂庵を何度か訪れていたようです。お肉もワインもたしなみ、最近は若い秘書さんとの出会いで新しい刺激を受けておられましたが訃報が届き本当に残念です。寂聴さんが亡くなった日も、寂庵には寂聴さんの雰囲気に似た明るくて強くて、どこか人を癒す石蕗の花が咲き続けていたことでしょう。

 

皆様のコメントをご紹介します。

能登さん:寂聴さんと石蕗の花の黄色、似合いです。合掌。 

竹葉さん:葉も年中ピカピカで明るい石蕗の花が彼女にぴっりで、時期を得た句だと思いました。

紅さん:瀬戸内寂聴さんの追悼でしょうか。深みがありますね。

亜子さん:先日亡くなった瀬戸内寂聴さんをしのぶ一句。嵯峨野の植物の写真とともに「寂庵便り」としてエッセイが新聞に連載されていた。石蕗の花は控えめな花。寂庵にも咲いていそうです。

千香子さん:波乱万丈の人生を最後まで情熱をもって、生き抜いた人に、花の少ない冬にもしっかと咲く石蕗の花は似合っているように思います。句集「ひとり」に俳句を作り始めたころ句会でであった、網野菊が作った

 ひとり居の冬の支度や石蕗の花

の句を覚えているとありました。石蕗の花との縁を感じます。

       ★★★

寂聴さんはご自身も俳句を作り千香子さんが言われるように「ひとり」いう句集を数年前に出版されています。亡くなった人を思い孤独を見つめる85句が収められています。

    仮の夜の修羅書きすすむ霜夜かな

こんな俳句も作っておられました。生前、朝起きたら、机の上でうっぷして死んでいるのが理想とおっしゃっていました。最後まで書き続けていた信念の作家でしたね。ご命日は石蕗忌となるかも知れません。麗子

 

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しぐれ坂 のぼり尽くして 茶房の灯 <殿>

2021年12月20日 | Weblog

高山市の図書館は坂の上にあるフランス風のオシャレな建造物。冷たい雨の降る坂を図書館を目指して登ります。登り尽くした先に暖かい茶房の灯。図書館より茶房に惹かれる夕。

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凍て玻璃に 妖精描く 葉紋かな <殿>

2021年12月19日 | Weblog

山小屋のある荘川の六厩<むまや>は本州の集落で最低気温を記録した地。マイナス10度以下でしか発生しない美しいダイヤモンドダストの朝を迎えたことがあります。今シーズン最大の寒波が襲来。冷え切った朝の窓。凍りついたガラスに葉のような文様が描かれます。

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マスクして 目<もく>す瞳は 饒舌に <殿>

2021年12月18日 | Weblog

<もく>す 目配せの意。マスクをして目配せをする彼女。いつもより饒舌に感じます。ところで、欧州では感染力の強いコロナの変異種が大流行。国内での感染拡大がないことを祈るのみ。

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バニラ香に 欠伸止めたり 石蕗の花 <殿>

2021年12月18日 | Weblog

題詠となった石蕗に馴染みがなく鉢植えを購入。石蕗の花の香りに気がついたのでしょうか。欠伸を止めた彼女。バニラのような甘い香りが部屋に拡がります。

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庭先の一隅照らす石蕗の花  麗子

2021年12月17日 | Weblog

「一隅照らす」という表現だけで、黄色を想像させるこの句は、

前頁の「つわぶきや黄色残して庭暮るる 」と姉妹句のように思えます。

どちらも庭にある石蕗の花です。

「一隅を照らしていた」花が、陽が傾いて「黄色を目に残して」暮れなずんでいく。

二句をつなげると、まるで動画を見ているような不思議な気持ちになります。

ひょっとして同じ庭なのではありませんか?(笑)

  

石蕗の花の色をいわずに照らすといったのが良いと思います:晴代さん

素朴さを感じました:泉さん

「一隅照らす」の措辞が巧み:等さん

 

措辞とは言葉の使い方や配置の仕方のこと。

短い一言で雰囲気を表し句の世界を広げてくれます。

一隅を照らしたのは石蕗の花色であったでしょうが、作者のこころをも照らし慰めたのでしょうね。

門の内ほっと安堵の石蕗の花  須美

(実家は門を入ると石蕗がありました。外から帰り石蕗の黄色い花が目に入るとほっとしたことを思い出します)と作者の言です。

石蕗は決して華やかではありませんが、見るものに寄り添い、ぬくもりを感じさせてくれる花です。郁子

 

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つわぶきや黄色残して庭暮るる  千香子

2021年12月16日 | Weblog

「石蕗の花」句会で見事トップ賞に輝いた千香子さんの秀句です。

夕暮れの庭。つわぶきの黄色がいつまでも目に残ります。つわぶきの黄色は明るいだけでなく少し深みのあるなんとも言えない黄色ですね。

皆様からのコメントです。

殿様:夕闇の迫る庭に石蕗の花が浮かびあがる情景を色彩で印象つけた感。

「庭先の 一隅照らす 石蕗の花」と選句で逡巡しました。

等さん:「庭暮るる」という短い一言で、句全体の雰囲気を表しているのだと思います。

能登さん:皆さん印象的な黄色にスポットを当てていらっしゃいますが、当句が一番素直に心を打ちます。

紅さん:中七下五のつながりが好きです。

亜子さん:「黄色」がキーワード。いつまでも残っている黄色。優しいけどくっきりと夕方暗くなってもまぶたに残る。時間の経過と共に、黄色がより印象に残る。夕暮れによくあっていると思います。

泉さん:のどかな懐かしい感じがする。

すみさん:庭が薄暗くなってきても石蕗の黄色はひときわ目立ちます。「黄色残して」が好き。

竹葉さん:こういうのが俳句だ、というお手本ばかりの「石蕗の花」で成程、あの黄色をどう例えるか、どう言う心情を読みたいのかが大切と勉強させて頂きました。

              ★★★

晴代さんの「ぬくもりを残し夕ぐれ石蕗の花」という句も同じように夕暮れ時のツワブキを詠んでいます。石蕗の花には夕暮れが似合う気がします。「ぬくもりを残す」か「黄色残すか」。好みは分かれるでしょうがどちらも情緒深い句ですね。575の会、今年一年を締めくくるのにふさわしい句だと思いました。麗子

 

 

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