百島百話 メルヘンと禅 百会倶楽部 百々物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

ボルネオ編 10 ~現地徴集令 クチンへ~

2010年08月12日 | 人生航海
時期は過ぎて、私達は毎日の暮らしにも慣れていった。

当時の戦況等さえも、詳しく知らぬままに暮らしていた。

いつどこで何が起きているのか関係ないが如く、他国の戦争のことのように呑気に過ごしていたものであった。

特に軍事に関しては、当然総てが極秘であったので、不利な情報等は入るはずもなかったのであろう。

だが、日本軍の旗色は、確実に変り始めていた。

海外現地で働く日本からの邦人は、特別に徴兵検査の延期が認められていた。

が、遂には昭和19(1944)年に廃止となった。

そして、現地で徴兵検査を受けるように、私にも通知が届いたのである。

昭和19年度の徴集兵と昭和20年度の徴集兵が、日本での最後の徴集及び徴兵検査である。

結果は、甲種合格となった。

年末には、現地入隊が決まり、ボルネオ島北部のクチンに入隊する事になったのである。

ボルネオ編 9 ~別れ~

2010年08月12日 | 人生航海
そうして、幾多の困難を乗り越えて、運命を共にして、そこ迄一緒だった人達と別れることになった。

寂しい別れとなったが、乗組員は、少しの間休養を貰った。

会社の指示があるまで、当分待機をしていたが、希望する仕事を自分で選んで働く事も出来た。

ある程度は、本人の希望が叶えられて、或る者は青果市場に、又は、港内船に乗る人もいた。

船長は、再就職も出来て、当分の間は、会社の事務所に上がって仕事を手伝い、ゆっくりと仕事をしていた。

機関長は、港内船に責任者として乗り込んだ。

他にも仕事は幾らでもあり、ある程度の希望は叶えて貰い、皆其々の仕事に就いたのである。