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捕虜時代(俘虜生活) 2 ~地獄の道程~

2010年08月18日 | 人生航海
その後は、手足をもがれた蟹の如く、連合軍の指示で行動する他なかった。

仮の収容所に入り、此処で当分捕虜として扱われて、この先の収容所が決まるまで過ごした。

全ての乗り物は没収されて、大八車だけが認められた。

その大八車だけを頼りに、それまでの荷物全部と持っていた主食品等の全てを仕分けして、歩かされる事になった。

まず命の糧である食料が大事と思って、何台もの大八車に積んだ。

行く先も分からないままだったが、それも捕虜に対する罰則なのか・・昼夜の別なく歩かされた。

大八車を交代で引いたり押したりしながら、昼間に歩くには余りに暑いので、なるべく睡眠は、木陰で昼間にとったのである。

食事は飯盒炊飯で行い、主に夜の間と言っても、毎日歩き続ければ、足に豆が出来る。

痛んで歩けなくなって靴を脱いで、裸足で歩いてもみた。

少しの間は、足は軽くなった様でも、やはり長歩きをすると痛かった。

それは、地下足袋に替えても同じだった。

そんな状態で、どのくらい道を歩いたかも、よく憶えてない。

人間は、不思議である。

疲れた時には、眠くなると・・大八車に手を添えたまま、歩きながらもぐっすりと寝込める事も、この時に分かったのである。

昼間は、少し歩いては、小休止と大休止を繰り返し、日暮れを待って、また歩き続けていたのである。