予想外の荒天に遭遇して、どうする事も出来ず、風は益々強まり、風波を背にして航走する以外に何も無かった。
時折、船尾から大波が、覆い被る。
大波は、甲板を洗い、船体は大きく揺れる。
デッキを歩くのも困難となり、船橋に上る事さえも危険であった。
その為か、船長は、万一を考えて、いつの間にか白旗観音の旗を取り出した。
その旗を、船橋の柱に結び付けて、強風になびかせ、何か真剣に祈っていた。
白旗観音は、播磨の国(兵庫県)にあった。
船の守り神で、四国の金比羅山さんと並び有名で、古くから多くの船乗りたちに崇拝されていた。
そこの御礼を受けると、中に白い旗が入っている。
時化に遭遇して、万一遭難の恐れがある時に、旗を出し掲げると必ず助かると云う。
有り難い御加護があるとの事だった。
その白旗観音様のお陰であったのか、何日も吹いて荒れていた大時化も、五日目の朝を迎えた時、ようやく凪いだのである。
やがて、前方に大きな山が、薄く浮かんで見えてきた。
しばらくして陸地が近くなると、海軍の巡視艇らしき艦船が接近して、手旗で行く先を確認してきた。
早速、手旗で船名を伝えて、位置を訊くと、「中国最南部にある海南島にいる」という確認が出来たのである。
そして、「行く先は、ボルネオ」と告げた。
それから、その巡視艇に誘導されて、近くの港に避難した。
疲れを癒して、久しぶりに安心して休むことが出来たのである。
台湾から海南島までの距離を、大荒れの時化の中を、然も小さな機帆船で、何とか辿り着くが出来たのである。
船長や機関長の心労は、いかに、大変な事であったかと今も思う。
そのことは、私たち船員にもよく分かり、とても有り難かった出来事であった。
時折、船尾から大波が、覆い被る。
大波は、甲板を洗い、船体は大きく揺れる。
デッキを歩くのも困難となり、船橋に上る事さえも危険であった。
その為か、船長は、万一を考えて、いつの間にか白旗観音の旗を取り出した。
その旗を、船橋の柱に結び付けて、強風になびかせ、何か真剣に祈っていた。
白旗観音は、播磨の国(兵庫県)にあった。
船の守り神で、四国の金比羅山さんと並び有名で、古くから多くの船乗りたちに崇拝されていた。
そこの御礼を受けると、中に白い旗が入っている。
時化に遭遇して、万一遭難の恐れがある時に、旗を出し掲げると必ず助かると云う。
有り難い御加護があるとの事だった。
その白旗観音様のお陰であったのか、何日も吹いて荒れていた大時化も、五日目の朝を迎えた時、ようやく凪いだのである。
やがて、前方に大きな山が、薄く浮かんで見えてきた。
しばらくして陸地が近くなると、海軍の巡視艇らしき艦船が接近して、手旗で行く先を確認してきた。
早速、手旗で船名を伝えて、位置を訊くと、「中国最南部にある海南島にいる」という確認が出来たのである。
そして、「行く先は、ボルネオ」と告げた。
それから、その巡視艇に誘導されて、近くの港に避難した。
疲れを癒して、久しぶりに安心して休むことが出来たのである。
台湾から海南島までの距離を、大荒れの時化の中を、然も小さな機帆船で、何とか辿り着くが出来たのである。
船長や機関長の心労は、いかに、大変な事であったかと今も思う。
そのことは、私たち船員にもよく分かり、とても有り難かった出来事であった。