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「白葉茶」を期待する

(久し振りに、これこそ夏の青空という天気になった)

お茶の消費が漸減していく状況に対して、茶業関係者は、今の若い人たちは横着になって急須を使うことをしなくなった。茶殻を処理したり、茶道具を洗ったりという作業が面倒くさいから、ペットボトルを買ってきて済ませてしまう。そんな風に嘆いて終る。はたして本当にそうなんだろうか。もちろんそういう一面も無いことはないが、主たる理由ではないのではないか。最近、考え方が少し変わってきた。

こんな光景が浮かぶ。お茶屋さんは店頭でお茶を入れて、とにかく道行く人にお茶を飲ませる。そうするとかなりの確率でお茶は売れるという。玄人のお茶屋さんが湯冷ましして、最適の温度で入れるお茶は確かにおいしい。だからついつい買ってしまう。

自宅へ帰って、急須にお茶を入れてポットのお湯を入れる。出るタイミングを計って、湯のみに入れて飲んでみると、口が歪むほど苦い。お茶を入れ過ぎたのだろうと、お茶を減らすがまだ苦い。苦くなくなるまでお茶を減らしたら、味も素っ気もない色付き湯になってしまった。店頭で飲ませてもらったお茶は何だったのだろう。お茶はそのまま放って置かれ、古くなって捨てられる。彼もしくは彼女は、二度とお茶を買ってくることは無いだろう。冷蔵庫にはペットボトルのお茶がのさばることになる。

お茶は60度まで湯冷ましして入れなければ、苦くなるのが当たり前だ。少しでも茶業に携わっている人はそういうだろう。しかし消費者は納得していない。コーヒーや紅茶を湯冷ましして入れることはない。寒いときには熱いお茶を飲むから身体と気持が温まるのであって、生ぬるくして飲みたいとは思わない。

消費者はポットのお湯をそのまま入れて、おいしく出るお茶を望んでいる。これが消費者のニーズである。茶業者は湯冷ましして入れる正しい入れ方を消費者に教育しなければならないと真顔で話す。消費者のニーズに答えないで、自分たちのやり方を押し付けている。どんな商品でも消費者のニーズに応えて懸命に企業努力がされている。消費者のニーズに応える努力をしなければ、売れなくなるのは当たり前である。

お茶のペットボトルは消費者ニーズの「簡便さ」という点に特化して開発されて、時流に乗った。おいしいから飲んでいるのではない。簡便だから飲まれるのである。いまや、ペットボトルのお茶がお茶の味だと思っている消費者が大半になってしまった。本来の緑茶の味が忘れられてしまうのは、余りにも残念である。

そんな状況の中で、最近、新聞に、うま味たっぷりの「白葉茶」が県内大学、研究機関の共同で開発されて、新世代の飲料として普及を計るというニュースが出ていた。

収穫前の茶園にシートを被せて日光をコントロールして、うま味成分を増やしたお茶が “かぶせ茶” として一部地域で栽培されているが、「白葉茶」は一番茶摘採の2週間前の茶園に覆いを掛けて、日光を100%遮断する。すると、茶葉が白色化して、うま味成分のアミノ酸含有量が2~3倍に増えるということが発見されたという。遮光をすると茶葉の緑が濃くなることは知られているが、100%遮断すると茶葉は逆に白くなる。日光を遮断して作るモヤシやウドと同じ作り方である。

「白葉茶」は詳しい記述がないけれども、苦味の成分は極端に少ないと思われる。おそらく、ポットのお湯をそのまま入れても、苦くないおいしいお茶が出るはずである。それこそ、消費者のニーズに合ったお茶として、少々高くても売れる商品になると思う。収量が大きく減少するというマイナス面もあり、実用化のために追加研究がなされているというが、実用化すれば茶業界の救世主になる予感がする。
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