▼世の中、進化している。銀行やファストフード店のドライブスルー、病院の診療代の自動支払機等。その病院の診察も医者は患者の顔より電子カルテに目を移す。ろくに顔もみないで検査結果から薬を処方する医師も多いようです。
▼ある会合で知り合った看護師さんからこんな話を聞きました。
「電子カルテになって、どうもそれになじめない。ワープロ入力の文字からは患者さんの顔が浮かんでこないんです。以前自分が担当していて亡くなった子どもさんがいるんですが、手書きされたカルテを見ると一つ一つその子のことが思い浮かんできて」。カルテが廃棄されるときはなんだかその子が永遠にいなくなってしまいそうで自分が預かってしまおうかと、あり得ないことながらカルテを抱える仕草をします。
▼ＩＴが普及してから多くのことが変化しました。全てが早く、便利に、機能的に。「アナログ」は時代遅れの象徴です。大学の授業も会社説明会も学会の発表もデジタル化。パワーポイント大席巻。教授の授業も肉声が少なくなりました。要領よくまとめられているけどテキストの後追いで彼の蓄積された知識の伝授は心に沁みてこない、そうも思えるのです。遅まきながらＰＣを始め、文字入力からメール送信をやっと覚えた私に、それらを駆使する彼女たちから貴重な心の声を聞くことができ、年々衰えていく書き文字もそれはそれで大事だったのだと、少しうれしい気持ちになりました。（ひ）
