のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

おひさま

2011年10月14日 23時32分02秒 | テレビ鑑賞
□おひさま
□脚本:岡田恵和
□NHK朝ドラ(8:00~8:15)
□出演
井上真央、高良健吾、満島ひかり、マイコ、串田和美、樋口可南子、白川由美
寺脇康文、原田知世、田中圭、永山絢斗、渡辺美佐子、柄本時生、
伊藤歩、渡辺えり、斉藤由貴、若尾文子、黒柳徹子、司葉子、犬塚弘

□感想 ☆☆☆☆☆
NHKさんのドラマは基本「好き」ですが、その中でも朝ドラは特に大好きです。毎回毎回、とりあえず最初の一週間はチェックします。ただ、大好きとは言いながらも、当たりはずれが大きいドラマ枠だなと思うこともしばしば。どの作品も見ているわけではありません。1回15分とコンパクトではあっても、毎日放送となると意外と録画は大変で、途中挫折もしばしば。・・・というより、かなり多く、最後まで見続けることができるのは1作品おきぐらい、という不熱心なファンです。
そんな中で今回の朝ドラ「おひさま」。大好きな脚本家、岡田さんとあって、始まる前から「絶対に面白いはず!」とわくわくしていましたが、予想通り、最後の最後まで陽子たちと一緒に楽しい時間を過ごすことができました。どの登場人物もみんな嫌味がなくて清清しく、見ているだけで背筋が正されるような佇まいの方ばかりでした。

時代背景は激動の昭和初期。15年戦争が始まり、ヒロインは「先生」として戦争に加担し、終戦後に自分たちの罪深さに気付きます。泣きながら教科書を墨で塗りつぶさせ、「ごめんね」と子どもたちに謝るヒロイン。そういったシリアスな場面を要所要所で織り込みながらも基本的には牧歌的な雰囲気の漂うドラマでした。大きな戦争(大きく、かつ長い長い戦争)があった大変な時代。けれど、ヒロインはいつも明るく笑顔で過ごしています。戦争だからこそ、の苦労話でもなく、ヒロインに特別何かドラマチックな出来事が起こるわけでもなく。働いて、お見合い結婚をし、子どもを産んで育てて、かつての教え子たちを見守って、舅姑に仕えて、嫁ぎ先の蕎麦屋さんを守り立てて。毎日を誠実に着実に歩むヒロインの姿が印象的でした。
ヒロインだけでなく、出てくる女性がみんな強くたくましくいさましく、清清しい女性ばかりでした。ヒロインの無二の親友、奔放で曲がったことが大嫌いで情にもろい育子と頭が良くて育ちがよく、けれど家柄や父親の財力に頼ることなく自分の力で生き抜こうとするお嬢様の満知子。さばさばと明るく、思ったことを思ったままに言っているように見せかけながらも、周囲への気配りを忘れずに繊細に家族を愛し、支え続ける姑(お義母さん)。華族の末裔として気高く誇りを持って凛とした姿勢で生き続ける祖母。ヒロインたちを母親のように見守り続ける商店街の飴屋の奥さん。自分たちの仕事に誇りを持って生きる夏子先生に裁縫の先生。主要登場人物たちから脇役まで、どの女性も魅力的で、脚本家さんが隅々にまで気を配り、愛情を注いでいる姿が透けて見えるようなドラマでした。

半年間という長い長いドラマなので心に残った場面、科白はいくつもあります。
まず、戦争ももうすぐ終わるという頃に、赤紙が来て召集された中村先生が旅立っていく場面。

子供達に私は、日本男児(にっぽんだんじ)として、小国民として、いつでも死ぬ覚悟をしろと言ってきただいね。お国のために死ねるということはなんと幸せで、誇り高きことであることかと、そう言ってきただいね。
そんだから、私が逃げるわけにも、泣くわけにもいかねぇ。笑って、胸張って行かねぇとね。子供達に申し訳がたたねぇ。これでも一応先生だったわけだから。子供達にウソをつくわけにはいかねぇ。そんだから、中村は喜んで・・・死んできます。そうすれば私は、先生として死んでいけるだいね。


ずっと国が求める教師像を積極的に担ってきた彼が最後に見せた人間らしさは、彼には彼の理想があったし、彼は彼が思う「よいこと」を教え子たちに伝えてきたのであって、子どもたちをいじめたりしごいたりしていたわけではないのだということが伝わってくる哀しい場面でした。よかれと思ってしたことすら時代にゆがめられてしまう哀しさ。その中でも、彼なりの正義を貫く姿。「いい人」ではなかったけれど、「悪い人」でもなかった。私と同じように時代に流されている普通の人間だったんだな、ということが伝わってくる印象的な場面でした。

次に印象的だったのは、終戦直後、心ならずも戦争に加担してしまった自分を責め、このまま教師を続けてもいいのか思い悩むヒロインに恩師がかけた言葉。

日本は神の国だ。決して負けることはない。国のために喜んで命を差し出す人間になれと教え続けてきた。でも戦争に負けて世の中が変わった、教えることも変わった、だからと言って自分が、今までのことがなかったことのようにコロッと変わるなんて無責任なんじゃないか・・・・。確かにそれって辛いよね。とっても。でも私は辞めないわ、教師の仕事を絶対に。責任があるもの、私には。だから逃げない。責任を感じてるなら胸を張りなさい。あなたはいつだって子供たちのほうを見て、子供たちのことを考えていた。それは私が一番良くわかってる。私達のように世界や社会のことを何も知らずに泣かされてしまう人間を作らないために頑張ればいい。それが私たちの仕事でしょ。


特に最後の一言は、「教師」だけでなく「親」としての役目、「大人」として周囲の子どもたちと関わるときに忘れてはいけない姿勢だな、と強く強くおもいました。

そして、終戦を経て戻ってきた次兄、茂樹が「死ぬべきだったのは(長兄ではなく)私だったんです。生きて戻ってきてしまってすみません。」と泣きながら謝る場面で、普段は穏やかな父親が声を荒げる場面。

死ぬべき人間なんていない。お前の命は、お前だけのものじゃない。私のものでもある。陽子のものでもある。春樹のものでもある。

見ながら、このドラマは本当にタイミングよく「今」と重なっているなぁと思うことがしばしばでした。震災直後だからこそ、影響を受けた部分は大きいと思うけれど、この時代を乗り越えてきた人たちの言葉だからこそ、胸に響くことは多かったように思います。
私が半年間の中でもっとも心に残って、何度も何度も思い返したのはヒロイン、陽子の祖母の言葉でした。

苦労の重さは比較して決めるものではありません。よその人に比べ自分のつらさや大変さはたいしたことはないんだなんて思う必要はありません。あなたは大変な思いをした、つらかった、哀しかった、それだけでいい。だれかと比べる必要なんてない。

大丈夫ですよ、東京は。あの大震災からちゃんと復興したんですから。しかも前よりも立派な街になって、生まれ変わったんですもの。東京だけでなく、日本も大丈夫ですよ。そんなヤワな国ではありません。私達の国は。


まさにこの時代を乗り越えてきたこの年代の女優さんが言うからこそ、深みや重みのある科白だな、と思いました。渡辺さんの凛とした佇まいで言われたからこその迫力に満ち溢れていました。

歴代朝ドラの中でも5本の指に入るぐらい、とにかく大好きなドラマでした。最終回、年を重ねた三人娘が元気に集う姿を見て感動してしまうぐらい、感情移入をして見入ってました。ヒロインたちが年を重ねて元気に笑いあっている姿を見ているだけで、こんなに元気をもらえるなんて思ってもいなかったな。またね、年を重ねた育子を演じられた黒柳徹子さんがとてつもなく育子生き写しで!!すごい!育子だ!!ステキすぎる!!と涙ぐみながら心から感動しました。元気な女性たちにとてつもなく励まされたな。
「女性たちよ!よき人生を!」
この言葉も大好きでした。しばらくは私の座右の銘です。