骨折はしたが不幸中の幸いと思う。交通事故を起こしたわけでもないし誰かに迷惑をかけたわけでもない。痛みと経済的損失、なによりおじい自身の自由な活動ができないということだけを我慢しなければならない。まあ、入院しても世話がやけるおばあが唯一被害者か?転倒して頭を打ったり滝壷か流れの中に落ちたらオダブツだった。高齢者が骨折した後に認知症になったとよく聞く話。認知症防止にはブログが一番!とおじいは判断した。掛け布団下の秘密基地から情報発信を続けようと思う。
ケータイは幸い胸のポケットにある。119を押す。滝壷に近い深い谷底、電波は届くか?繋がった!滝の音に悩まされながらも連絡はついた。救急車が来てくれる。オソマツ、ドジ、間抜け!と自分にバリ雑言を浴びせるが後の祭。救急隊は6人、タンカに乗せて山道を登る。「スミマセンー73キロです、オモタクテスミマセン!」小さな声で詫びた。山道で途中三回休憩。本当にお世話です。生まれてはじめてピーポーの音を聞きながら、激痛と安堵感、感謝が交錯。血圧は90ー190台を上下していた。唐津市の救急病院で応急措置、骨折脱臼、手術が必要と医師。
滝のしぶきが顔にかかった。そうだあのしぶきを撮ろう。滝壷の前の大岩に行けば迫力充分の絵が撮れる、おじいは思わず柵を跨いだ。瞬間、体が沈んだ。靴が岩を滑り右足が岩の裂け目にはまりこんだ。激痛!太陽がやけにまぶしい。そろそろと足を挙げた。普段見慣れない方角に足が向いている。NY松井秀喜選手の骨折場面を思いだした。おじいも骨折だ。かこう岩の上に小さな水滴が溜まりツルツルになっていたのだ。