たき火のおじちゃんはよほどのヒマなのかなあ、仕事しているのかなあ?
子どもたちのなかにはそんなことを感じた子もいたかもしれません。
東京に転勤して間もなくは、おじちゃんの勤務が日曜に出勤したり、
土曜日に夜勤をすることなどいろいろあって、月に2、3は回は
日曜日がお休み、ですから、子どもたちと遊ぶ時間がたっぷりあった
のです。
今回は『銭湯(せんとう=お風呂屋さん)タンケンです。
ザリガニを獲ったとき田んぼの土で汚れた足をきれいに!というわけでは
ないのですが、初めての体験はワクワクするはずです。
聞けば、誰も「銭湯に行ったコトハアリマセン、どんなところか
知りません」と言います。
「じゃあ、おじさんと❝銭湯タンケンに行くかい?❞」と聞くと、
不安そうな顔もありましたが、多数決でいうと賛成多数で土曜日の
学校から帰ってまもなく、社宅を出発と決まりました。
『富士見湯』だったかな?そのころ、富士の名前を付けたお風呂屋
さんが東京にはいっぱいでした。いつも利用する富士見台駅の階段から
富士見湯のエントツやお風呂屋さんののれんがいつも見えていましたので、
みんなお風呂屋さんがあることは知っていましたが、「お風呂さんに
行ったことがない・・・」という子ばかりでした。
さあ、約束の土曜日、みんなタオルを頭に巻いて集合、意気揚々と
銭湯へ。おじちゃんは銭湯のおじさんに「かくかくしかじか、社会科
見学デス」と事情を説明、おじちゃんが先頭にマナーを説明、みんなは
こわごわ、湯舟を取り囲みました。一番風呂です。
お湯は満々、みんな「おそろしい!」と誰も入りません。
そうですよ、みんな社宅の小さな浴槽しかしりません。さらに江戸の町
では、熱い風呂が普通、子どもたちは熱い、熱いと、水をウメマス・・・
ひとり、ふたり、ようやく、プールのような浴槽に元気に入る子が
現れました。
その時です。お相撲さんのようにいかついおじさんが入ってきました。
みんな緊張しています。そのとき、一番小さい子が、「あのおじちゃん!
背中に絵を描いてるヨ!!!」
「ヒャー!!!!!」おじちゃんは、心の中で「Herp}と叫びました。
当時は、入れ墨をした人は入浴お断り、なんて看板もありません。怖い
ヤクザのお兄さんも多かったのです。子どもたちの中には、怖い人だと
直感した子もいました。のんびり屋さんもいました。
たき火のおじさんは、全身凍り付くような思いでしたが、ここは、
子どもたちが、入れ墨をしたおじさんに失礼があってはならないし、
機嫌を損ねてもいけない。そこでたき火のおじちゃんは
声を絞り出すように言いました「〇〇君、おじさんの背中は凄い(すごい)
でしょう!」続けて、怖いおじさんに向かって叫びましたヨ・・
「オジサン、背中の絵はドラゴンの登り竜の絵ですか!?凄い彫り物
ですね!」私にできる精いっぱいの収拾策デス。精いっぱい大きな声で
入れ墨のおじさんに言いました。寅さんだったら、あの笑顔でもう少し
二コット笑わせてくれる画面だったでしょうけどね。
入れ墨のヤクザらしいおじさんは、ニッと笑って、また、すぐに
怖い顔に戻りました。そして、そそくさと洗い場を出ていきました。
銭湯探検、予期しない出来事に、ひや~としましたが、何事もなく
解散しました。私の息子は「もしも、ヤクザのおじさんが、パパに突っか
かったらオレが噛みついて戦うつもりだった」と後で話してくれました!
親を泣かせることを言ってくれました。
イレズミのおじさんは、そんな子どもらの気持が伝わってか、早々に
引き上げてくれたんだと思いました。
たき火のおじちゃん、そろそろ忙しい担務に変わり、小さな子らと遊ぶ
こともできなくなりました。
銭湯がすっかり少なくなり、いまは探検する銭湯を探すのもたいへんな
時代です。
写真は、オキザリスという花です。緑道を彩るかたばみの仲間の白い花
私を見舞いに来て、私たちの娘が寂しいブログに写真を載せてくれました。