仕事仲間の後輩K君の訃報が届いた。そうか、しばし、瞑目する。あの笑顔にもう会えぬ。弔辞で紹介してもらおうと新人時代の彼の思い出をメールで送った。
『あれは昭和52年だったでしょうか。新人の彼が自らリポーターを買って出て、「ぶらり散歩」というテレビ番組を制作したときのことを思い出します。ところは長崎新地の中華街。彼は長崎名物、ちゃんぽん作りに挑戦しました。江山楼というお店、腕利きの料理人で社長の王国雄さん自ら厨房に立ちました。まず、キャベツの千切りの指導からはじまります。“もっと細く刻め!大きさにばらつきがあってはダメだ!”厳しい声、あなたはキャベツを2個くらい刻んだっけ?今度は、炎を吹き上げるコンロの前で、大きい中華鍋と格闘です。キャベツや豚肉を放り込み“もっと勢いよく!”“モタモタするな!”とどやされます。顔も頭も体中が汗になっていたことでしょう。丼にちゃんぽんが山盛りです。あなたは湯気もうもうのちゃんぽんに突進、食べました!玉の汗、湯気でくもるメガネ、その奥で、あなたの人なつこい目が笑っていました。ヤッター!と。
大好評でした。あの番組を見た人はみんな、長崎ちゃんぽんを食べたくなりました。あのころは今のような料理番組もない時代でしたが、思えば、あなたはそのさきがけを走っていたのです…』
あのとき、ちゃんぽん作りを指導していただいた、王さんは、あの日のこと、K君のことが忘れられないと、先日も便りがあった。王さんにさきほど悲しい訃報をお伝えした。
きょうは1日中、雨が降る。秋雨のはしりだ。