朝の連続テレビドラマ「おしん」を知る人は40代以上の方々となるだろうか。
放送されたのは昭和58年(1983年)から59年にかけてのこと。東京ディズニーランドがオープン、ワープロやパソコンが普及した時代。「おしん」は平均視聴率52%という大評判になったテレビドラマだった。バブル崩壊がやってくる前の時代。
主人公の幼いおしんは、雪の降る中を川船に乗って父母と別れた。日本がみんな貧しかった時代…
「困難にめげず、健気に生きる主人公に涙が止まらない」「おしんの姿に、耐えることの大切さを教えられた…」と視聴者から声が寄せられた。おしんフィーバーが起こった。しかし、と、脚本家の橋田壽賀子さんは書いている。
「実は、『おしん』で私が書きたかったのは、「日本人はもうこれ以上、経済的に豊かにならなくてもいいのでは!?」「そろそろ身の丈に合った幸せを考えてはどうですか」ということでした。」
“身の丈に合った物差し”を持って、混迷するいまの時代と向き合うことの必要性を、橋田さんは語る。
85歳の橋田壽賀子さんは『おしんの遺言』として胸に去来する「遺言」を綴っている。
『おしんの遺言』橋田壽賀子著、小学館刊、1470円。きょう書店に並んだ。